長短経 / 正論
傳曰、“田獵不宿、飲食不享、出入不節、奪人農時、及有奸謀、則本不曲直。”又曰、“棄法律、逐功臣、殺太子、以妾為妻、則火不炎上。”又曰、“好治宫室、飾臺榭、内淫亂、犯親戚、侮父兄、則稼穡不成。”又曰、“好攻戰、輕百姓、飭城郭、侵邉城、則金不從革。”又曰、“簡宗廟、不禱祠、廢祭祀、逆天時、則水不潤下。”
新字:伝曰、“田猟不宿、飲食不享、出入不節、奪人農時、及有奸謀、則本不曲直。”又曰、“棄法律、逐功臣、殺太子、以妾為妻、則火不炎上。”又曰、“好治宮室、飾台榭、内淫乱、犯親戚、侮父兄、則稼穡不成。”又曰、“好攻戦、軽百姓、飭城郭、侵邉城、則金不従革。”又曰、“簡宗廟、不祷祠、廃祭祀、逆天時、則水不潤下。”
書き下し
伝に曰く「田猟に宿せず、飲食に享せず、出入に節あらず、人の農時を奪い、及び奸謀有らば、則ち本は曲直ならず」と。又た曰く「法律を棄て、功臣を逐い、太子を殺し、妾を以て妻と為さば、則ち火は炎上せず」と。又た曰く「宮室を治め、台榭を飾るを好み、内に淫乱し、親戚を犯し、父兄を侮らば、則ち稼穡成らず」と。又た曰く「攻戦を好み、百姓を軽んじ、城郭を飭え、辺城を侵さば、則ち金は従革せず」と。又た曰く「宗廟を簡にし、禱祠せず、祭祀を廃し、天時に逆らわば、則ち水は潤下せず」と。
現代語訳
伝にこうある。「狩りに前もって備えず、飲食に供えを怠り、出入りに節度がなく、民の農事の時期を奪い、その上に悪だくみがあれば、木は曲がりも直りもしない」。またこうある。「法律を棄て、功臣を追い、太子を殺し、妾を妻にすれば、火は燃え上がらない」。またこうある。「宮室を造り高殿を飾るのを好み、内では淫乱し、親族を犯し、父兄を侮れば、作物が実らない」。またこうある。「戦を好み、民を軽んじ、城壁を整え、辺境の城を侵せば、金属は思うように加工できない」。またこうある。「宗廟をなおざりにし、祈らず、祭祀を廃し、天の時に逆らえば、水は潤し下らない」。
解説

人生を、一行の式にしてみた。
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五行大義・第十九論治政木を伐らざるは、天陽生長の気に違うべからざればなり。若し夫れ人君馳騁(ちてい)度無く、沈湎(ちんめん)縦恣し、徭役を重くし、民の時を奪い、税斂を厚くすれば、則ち民疾疢瘮(しつちんしん)し、足の疾を患う。春気を傷る、故に皆木の病なり。木傷敗すれば、則ち龍深く蔵る。木の禽懼れて見えざるなり。鯨鯢(げいげい)出でて禍を為す。鱗甲の虫は金気有り、木を傷る所以なり。火事を用うれば、則ち封疆を正し、田疇(でんちゅう)を脩む。立夏に至りては、賢良を挙げ、有徳を封じ、有功を賞し、四方に出使す。此れ火の化に順い、万物を長養するなり。火を縦(ほしいまま)にすること無ければ、則ち火は人の用に順い、甘露降り、鳳凰来たり、黄鵠(こうこく)見(あら)わる。鳳凰は即ち朱雀の類なり、喜ぶ故に出でて見わる。甘露・黄鵠は、並びに子のその母を慶ぶなり。若し人君讒佞(ざんねい)を用い、骨肉を離し、忠臣を踈(うと)んじ、法令を棄て、婦人政を為せば、則ち民は血腫を病み、国因りて明らかならず、火災を為し、冬に雁来たらず、鳥怪を為す。火善からず、故に鳥に変怪有り。憂懼す、故に来たらざるなり。土事を用うれば、長老を養い、寡独を矜れみ、孝悌に賜い、恩沢を施す。土の寛和含養の徳に順うなり。土功を興すこと無く、宮室の制度差有り、親戚の恩序有れば、則ち五穀成り、嘉禾出で、賢聖来たる。土気順う、故に嘉禾和熟す。その徳景大なり、故に聖賢これを悦びて来たる。若し人君淫楽度無く、親老を侮り、百姓を困しむれば、則ち民は腹心の疾を病む。心腹は土を主り、気和せざる故に病む。賢人隠蔵し、百穀登らず、裸虫(らちゅう)災いを為す。土性傷る、故に稼穡(かしょく)成らず。賢人これを悪む、所以に見えず。裸虫は土気なり。
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『長短経』正論漢書に曰く「天人の際は、精祲以て相い盪かす有り、善悪以て相い推す有り。事は下に作り、象は上に動く。陰陽の理は、各々其の感に応ず。陰変ずれば則ち静なる者動き、陽蔽わるれば則ち明なる者晻し。水旱の災いは、類に随いて至る。故に曰く、日蝕・地震は皆な陽微かにして陰盛んなるなり、と。臣は君の陰なり。子は父の陰なり。妻は夫の陰なり。夷狄は中国の陰なり。春秋に日蝕三十六、地震五十二。或いは夷狄中国を侵し、或いは政権臣下に在り、或いは婦夫に乗じ、或いは臣子君父に背く。事は同じからずと雖も、其の類は一なり。是を以て明王位に即けば、五事を正す。五事は貌・言・視・聴・思なり。大中を建てて以て天心を承くれば、則ち庶徴は下に序し、日月は上に理まる。如し人君、後宮に淫溺し、般楽遊田し、五事を躬に失い、大中の道立たざれば、則ち咎徴降りて六極至る。凡そ災異の発するは、各々過失に象り、類を以て人に告ぐ」と。
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五行大義・第十九論治政その人は尖頭長腰にして、疾敏、孝を尚ぶ。長腰は兌に取る。敏疾は火の性なり。離を日と為す。日に烏有り。烏は孝なり。善なれば則ち賢人任用せられ、政頌平らかに、駮馬(はくば)・文狐至る。馬は火の畜なり。善なり、故に来たる。狐も亦来たる。失えば則ち夏に霜ふる。日は是れ火の精なり、失う故に変じて蝕す。土を雨(ふら)すは、猝(にわか)に光明を蔽うの象なり。土を承けて王たれば、その首を表す。首大なるは、土を表すなり。その人は広肩大足にして、大笑し戯儛(ぎぶ)するを好む。広大は土に象る。和なるが故に逸楽するなり。善なれば則ち甘露降り、醴泉(れいせん)並びにその善に応ず。失えば則ち虫蝗(ちゅうこう)生じ、天雨ふりて常に風ふき、霧乱る。皆土気傷つく、故に異を表すなり。金を承けて王たれば、人と為り白色、差肩(さけん)耳、面方にして、毛なり。その民は白頸(はくけい)長大にして、義を尚ぶ。皆金気なり。善なれば則ち大貝明珠出で、外国遠く珠貝を貢す。金の用は、気剛にして、能く遠人を制す、故に来たりて貢献す。失えば則ち火飛び、天鳴り、地坼(さ)け、河溢れ、山崩れ、邪人進み、虫獣災いを為す。火は能く金を剋す。金に失有り、故に火之を伐ちて、乃ち飛ぶ。水を承けて王たれば、人と為り黒色、大耳。坎を耳と為し、腎水の気を主る、故に大なり。その民は聡耳(そうじ)なり。坎水は孔穴通ず、故に聡し。善なれば則ち景雲至り、亀竜文を被る。皆水気の祥を為すなり。失えば則ち蟾蜍(せんじょ)月を去り、民多く溺死し、常雨害を為す。皆水の憂いなり。此れ並びに治政の道の五行を越えざるを明かす。故に以て備(つぶさ)に釈す。
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五行大義・第二弁体性地上の木を観と為す」と。春の時、地を出づるの木、曲直ならざる無く、花葉観るべく、人の威儀容貌の如きを言うなり。許慎云う、「地上の観るべき者、木に過ぐるは莫し。故に相の字は、目の傍らに木あるなり」と。古の王者は、輿(こし)に登れば鸞和(らんか)の節有り、車を降れば佩玉の度有り、田狩には三駆の制有り、飲餞には献酢(けんさく)の礼有り。事無ければ巡幸せず、民の時を奪う無し。春を以てするは、農の始めなればなり。貪欲姦謀無きは、木気に順う所以なり。木気順えば則ち其の性の如く、茂盛して実を敷き、以て民の用と為る。直き者は縄に中(あた)り、曲がれる者は鉤に中る。若し人君威儀を失い、酒に酖(ふけ)り淫縦(いんしょう)にして、徭を重くし税を厚くし、田猟度無ければ、則ち木其の性を失い、春に滋長せず、民の用と為らず、橋梁其の縄墨に従わず。故に木は曲直せずと曰うなり。火を炎上と曰う。炎上とは、南方なり。光輝を揚げて盛夏に在り、気極まりて上る、故に炎上と曰う。王者明に向かいて治むるは、蓋し其の象を取る。古者、明王は南面して政を聴き、海内の雄俊を攬(と)りて、之を朝に積み、以て明を助くるなり。邪佞の人臣を退け、之を野に投じ、以て壅塞(ようそく)を通ず。任其の人を得れば、則ち天下大いに治まり、垂拱して無為なり。易は離を以て火と為し、明と為す。重離は重明なり、則ち君臣倶に明らかなり。明なれば則ち火気に順う。火気順えば則ち其の性の如し。其の性の如くなれば則ち能く成熟し、人士の用に順う。之を用うれば則ち起こり、之を捨つれば則ち止む。若し人君明らかならず、賢良を遠ざけ、讒佞を進め、法律を棄て、骨肉を疎んじ、忠諫を殺し、罪人を赦し、適(嫡)を廃して庶を立て、妾を以て妻と為せば、則ち火其の性を失い、用いざるに則ち起こり、風に随いて斜めに行き、宗廟宮室を焚き、民居を燎(や)く。故に火は炎上せずと曰う。土は爰(ここ)に稼穡す。稼穡とは、種うるを稼と曰い、斂(おさ)むるを穡と曰う。土は地道たり、万物貫穿して生ず。
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五行大義・第十九論治政傷る、故に変を為す。金事を用うれば、城郭を脩め、牆垣(しょうえん)を繕い、辟禁を審らかにし、甲兵を飭(ととの)え、百官を警め、不法を誅す。此れ並びに金に順いて威厳粛殺の気を以てするなり。金石を焚くこと無ければ、則ち白虎見わる。虎は是れ金の獣なり、喜ぶ故に出づるなり。若し人君賂(まいない)を貪り、兵を用うることを好めば、則ち民人は咳嗽(がいそう)を病み、筋牽(ひ)き鼻塞がる。鼻は肺を主る。肺病む、故に咳嗽して鼻塞がる。此れ並びに金の疾を為すなり。毛虫・金石怪を為す。金気傷る、故に変怪を為すなり。水事を用うれば、閭門(りょもん)を閉じ、当罪を執え、関梁を飭う。此れ並びに水の閉蔵の義に順う。池堰を決すること無かれ、水気の泄溢を恐るるなり。此くの如くすれば則ち醴泉(れいせん)出づ。恩禽虫に及べば、則ち霊亀見わる。『書』に云う、「沢昆虫に及ぶ」者なり。甲虫は水に属す、喜ぶ故に見わるなり。若し人君祭祀を廃し、宗廟を簡(おろそ)かにし、法を執ること順わず、天気に逆らえば、則ち民は流腫・水脹・痿痺(いひ)を病み、孔竅(こうきょう)通ぜず。此れ並びに水気壅結の義なり。賢人は水の太陰の位に居るを以て、陰闇虚空なる、これを宗廟に比す。人死すれば精気散越す、宗廟を立てて以てこれを収む。堂宇虚寂にして、陰暗く人無し、これを水に喩うるなり。祭祀を廃すれば、則ち孝道を失う、故に太陰の気感じて人を病ましめ、此の疾を為すなり。水災害を為し、霊亀深く蔵れ、鬼哭し、介虫怪を為す。介虫は水に属す、気傷る、故に覆蔵して見えざるを為すなり。宗廟祀らざれば、魂気傷み怨む、故に鬼哭するなり。
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五行大義・第十四論雑配・第六論五事下敬せざれば、則ち上に威無し。夫れその君を敬せず、その政に従わざれば、則ち陰気勝つ。陰気勝てば、則ち水の象至る。故に曰く、厥(そ)の罰は常雨、と。雨ふれば、則ち飢寒至る。飢寒至れば、則ち上下相信ぜず、大臣は姧軌(かんき)し、民は寇盗と為る。民多く刑せらるれば、則ちその服妖あり。服妖とは、軽剛漂泆(ひょういつ)、暴慢の服なり。以て風気の化に象るなり。言は、易の道に於いて兌と曰う。兌は口と曰う、言の象なり。人君言出でて令行わるれば、則ち従う。故に易に曰く、悦びて以て民を使えば、民その労を忘る。悦びて以て難を犯せば、民その死を忘る、と。是を以て明君は斂(おさめ)を薄くして禄を厚くし、賞は宜しく重きに従い、罰は宜しく軽きに従うべし。則ち民心に順う。故にその教えは粛(きび)しからずして成り、その政は厳ならずして治まる。此れ民心を得るなり。民心を得れば、則ち衆これに帰す。衆これに帰すれば、則ち民死没すと雖も且つこれを忘れず。況んやその令に従うをや。若し君衆心を失い、政令従われず、亢陽(こうよう)自ら消し、群陰附かずして、下君の重刑を畏るれば、則ち陽気勝つ。陽気勝てば則ち旱(ひでり)す。故に曰く、厥の罰は常暘(じょうよう)、と。常暘なれば、則ち飢貧す。飢貧すれば、足らず。足らざれば、敢えて正言せず、則ち先ず歌謡の口に発するなり。気逆すれば則ち悪言至り、蟲蝗生ず。皆口の事なり。視は、南方目の象なり。視は明と曰う。明は人を知るを以て本と為す。易に於いては離たり、離は火たり、目たり。夫れ視明らかならざれば、微弱にして信ずる所を知らず、必ず長く党を伺い、仇を同類に親しむ。此の如くなれば、賢者進まず。賢者進まざれば、則ち不肖者退かず。不肖者退かざれば、則ち上を犯す者誅せられず、罪無き者横(よこしま)に罰せられ、百職廃壊し、庶事滞塞し、教政舒緩す。故に曰く、厥の罰は常燠(じょういく)、と。燠なれば則ち冬気泄る。冬気泄るれば、則ち塞がらず、春夏の気錯(みだ)れ、疾疫起こる。