長短経 / 察相
夫木主春、生長之行也〔春主肝、肝主目、目主仁。生長敷榮者、施恕惠與之意也、〕火主夏、豐盛之時也〔夏主心、心主舌、舌主禮。豐盛殷阜者、富博宏通之義也、〕金主秋、收藏之節也〔秋主肺、肺主鼻、鼻主義。收藏聚歛者、恡嗇慳鄙之情也、〕水主冬、萬物伏匿之日也〔冬主腎、腎主耳、耳主智。伏匿隠蔽者、邪諂奸佞之懷也、〕土主季夏、萬物結實之月也〔季夏主脾、脾主唇、唇主信。結實堅確者、貞信謹厚之理也。〕故曰、凡人美睂目、好指爪者、庶幾好施人也。
新字:夫木主春、生長之行也〔春主肝、肝主目、目主仁。生長敷栄者、施恕恵与之意也、〕火主夏、豊盛之時也〔夏主心、心主舌、舌主礼。豊盛殷阜者、富博宏通之義也、〕金主秋、収蔵之節也〔秋主肺、肺主鼻、鼻主義。収蔵聚歛者、恡嗇慳鄙之情也、〕水主冬、万物伏匿之日也〔冬主腎、腎主耳、耳主智。伏匿隠蔽者、邪諂奸佞之懐也、〕土主季夏、万物結実之月也〔季夏主脾、脾主唇、唇主信。結実堅確者、貞信謹厚之理也。〕故曰、凡人美眉目、好指爪者、庶幾好施人也。
書き下し
夫れ木は春を主る、生長の行なり。〔春は肝を主り、肝は目を主り、目は仁を主る。生長敷栄する者は、恕恵を施し与うるの意なり。〕火は夏を主る、豊盛の時なり。〔夏は心を主り、心は舌を主り、舌は礼を主る。豊盛殷阜なる者は、富博宏通の義なり。〕金は秋を主る、収蔵の節なり。〔秋は肺を主り、肺は鼻を主り、鼻は義を主る。収蔵聚斂する者は、吝嗇慳鄙の情なり。〕水は冬を主る、万物伏匿の日なり。〔冬は腎を主り、腎は耳を主り、耳は智を主る。伏匿隠蔽する者は、邪諂奸佞の懐なり。〕土は季夏を主る、万物結実の月なり。〔季夏は脾を主り、脾は唇を主り、唇は信を主る。結実堅確なる者は、貞信謹厚の理なり。〕故に曰く、凡そ人の眉目を美とし、指爪を好くする者は、庶幾くは施しを好む人なり。
現代語訳
木は春をつかさどり、生長のはたらきである。〔春は肝をつかさどり、肝は目をつかさどり、目は仁をつかさどる。生長して咲き栄えるのは、思いやりと恵みを施し与える意である。〕火は夏をつかさどり、豊かに盛んな時である。〔夏は心をつかさどり、心は舌をつかさどり、舌は礼をつかさどる。豊かに盛んなのは、富み広く行き渡る義である。〕金は秋をつかさどり、収め蔵する節である。〔秋は肺をつかさどり、肺は鼻をつかさどり、鼻は義をつかさどる。収め蔵し集めるのは、けちで卑しい情である。〕水は冬をつかさどり、万物が伏し隠れる日である。〔冬は腎をつかさどり、腎は耳をつかさどり、耳は智をつかさどる。伏し隠れるのは、よこしまでへつらう心である。〕土は季夏をつかさどり、万物が実を結ぶ月である。〔季夏は脾をつかさどり、脾は唇をつかさどり、唇は信をつかさどる。実を結んで堅く固まるのは、貞節と信と謹厚の理である。〕だからこう言う。人で眉と目が美しく、指と爪が良い者は、おそらく施しを好む人である。
解説
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『長短経』察相〔肝は出でて眼と為り、又た筋を主り、窮まりて爪と為り、眉に栄え、魂に蔵る。経に曰く、凡そ人、眉直くして頭昂れば、意気雄強なり。缺損及び薄きは、信無き人なり。弓の如き者は、善き人なり。眼に光彩有りて媚好なる者は、性は物理を識りて明哲なる人なり。眼光、瞼外に溢れ出でて、散ぜず動かず、瞼も又た急ならず緩ならずして、精の露われざる者は、智恵の人なり。瞼蹇縮し、精に光無き者は、愚鈍の人なり。眼光、瞼を出でざる者は、情を蔵する人なり。加うるに瞼渋りて盗み視れば、必ず賊を作すなり。
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『長短経』知人人物志に曰く〔凡そ血気有る者は、陰陽を稟けて以て性を立て、五行を体して形を著さざるは莫し。其の体に在るや、木は骨、金は筋、火は気、土は肌、水は血、五物の象なり。五物の実は、各々済す所有り。〕「骨は植にして柔なる者、之を弘毅と謂う。弘毅なる者は仁の質なり。〔木は則ち陰を垂れ、仁の質と為る。質、弘毅ならざれば、仁を成す能わず。〕気は清くして朗なる者、之を文理と謂う。文理なる者は礼の本なり。〔火は則ち照察し、礼の本と為る。本に文理無ければ、礼を成す能わず。〕体は端にして実なる者、之を貞固と謂う。貞固なる者は信の基なり。〔土は必ず生を吐き、信の基と為る。基、貞固ならざれば、信を成す能わざるなり。〕筋は勁くして精なる者、之を勇敢と謂う。勇敢なる者は義の決なり。〔金は能く断割し、義の決と為る。決、勇敢ならざれば、義を成す能わざるなり。〕色は平らかにして暢なる者、之を通微と謂う。通微なる者は智の原なり。〔水は流れて疏達し、智の原と為る。原、通微ならざれば、智を成す能わず。〕
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『長短経』察相鼻孔小さく縮み、準頭低く曲がる者は、慳吝の人なり。〔肺は出でて鼻孔と為り、又た皮膚を主り、又た気息と為り、魄に蔵る。鼻好き者は、声誉有り。鼻柱薄くして梁陥る者は、病厄多き人なり。鼻に媚無きは、憨惷の人なり。蜣蜋鼻は、意智少なき人なり。〕耳孔小さく、歯瓣細き者は、邪諂姦佞の人なり。〔腎は出でて骨と為り、又た髄を主る。髄は窮まりて耳孔と為り、骨は窮まりて歯と為り、志に蔵る。経に曰く、耳亢く深広なる者は、心虚にして玄を識る。耳孔醜小なる者は、智無くして神理を信ぜず。耳辺に媚無きは鄙拙の人なり。耳孔小さくして節骨曲戻する者は、意智無き人なり。老鼠耳なる者は、人を殺して死せず。又た云う、鼠耳の人は、多く偸盗を作す者なり。〕
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『長短経』察相此に由りて之を観れば、相を以て士を察すること、其の来たること尚し。故に曰く、富貴は骨法に在り、憂喜は容色に在り。〔経に曰く「青は憂を主り、白は哭泣を主り、黒は病を主り、赤は驚恐を主り、黄は慶喜を主る。凡そ此の五色は、並びに四時を以て之を判ず。春三月は青色王たり、赤色相たり、白色囚たり、黄・黒の二色は皆な死たり。夏三月は赤色王たり、白色・黄色は皆な相たり、青色死し、黒色囚たり。秋三月は白色王たり、黒色相たり、赤色死し、青・黄の二色は皆な囚たり。冬三月は黒色王たり、青色相たり、白色死し、黄と赤の二色は囚たり。若し其の時を得て色の王・相なる者は吉、其の時を得ずして色の王・相なるも若しくは囚・死なる者は凶なり」と。魏の管輅、族兄の家に往き、二客を見る。客去りて、輅、兄に謂いて曰く「此の二人の若きは、天庭及び口耳の間、同じく凶気有り。異変倶に起こり、双魂定まる無く、魂を海に流し、骨を家に帰さん」と。後に果たして溺死す。此れ略ぼ色の変ずるの効を挙ぐ。〕
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『長短経』察相夫れ命と相とは、猶お声と響きとのごときなり。声は幾に動き、響きは応に窮まる。必然の理なり。言を以て行を信ずるは宰予に之を失い、貌を以て性を度るは子羽に之を失うと云うと雖も、然れども伝に称す「憂い無くして戚めば、憂い必ず之に及ぶ。慶び無くして歓べば、楽しみ必ず之を還す」と。此れ心に先ず動く有りて神に先ず知る有れば、則ち色に先ず見わるる有り。故に扁鵲は桓公を見て、其の将に亡びんとするを知る。申叔は巫臣を見て、其の妻を竊むを知る。或いは馬を躍らせ珍を膳し、或いは飛びて肉を食らい、或いは早くは隷にして晩くは侯たり、或いは初めは刑せられ末には王たり。銅巌も以て生を飽かしむる無く、玉饌も餓死に終わる。則ち彼の表を度り骨を捫し、色を指し理を摘むこと、誣う可からざるなり。故に列すること云爾。
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『長短経』察相耳輪厚大、鼻準円実、乳頭端浄、頦頤深広厚大なる者は、忠信謹厚の人なり。〔脾は出でて肉と為り、肉は窮まりて孔と為り、又た耳輪、準・鼻梁・頦頤等を主り、意に蔵る。経に曰く、夫れ頭高大なる者は、性は自在にして人を凌ぐを好む。頭卑弊なる者は、性は人に随いて細砕なり。故に曰く、鹿頭側長なれば、志気雄強。兔頭蔑頡なれば、意志下劣。獺頭横闊なれば心意豁達。夫れ頸細くして曲がる者は、自ら樹立せざるの人なり。若し色斑駁或いは潔浄ならざる者は、性は宜しきに随いて堅固ならず。夫れ手の繊長なる者は、施捨を好む。短厚なる者は、取るを好む。捨つるは則ち庶幾く、取るは則ち貪惜す。故に曰く、手、鶏足の如くんば、意智褊促。手、猪蹄の如くんば、志意昏迷。手、猴掌の如くんば、勤劬伎倆。夫れ背の厚闊なる者は剛決の人なり、薄き者は怯弱の人なり。夫れ腹の端妍なる者は、才華の人なり。故に曰く、牛腹婪貪なれば、財物自ずから淹る。蝦蟇腹なる者は懶人なり。夫れ腰の端美なる者は、則ち楽しみて能く人に任ず。蜥蜴腰なる者は緩人なり。夫れ臀髀厚広なる者は、任ず可く安穏の人なり。夫れ蛇行する者は含毒の人なり、之と事を共にす可からず。鳥行蹌蹌たるは、性行不良なり、鳥鵲の行くに似るなり。鷹行は雄烈。豺狼行なる者は、性麤にして利を覓むる人なり。牛行は性直なり。馬行は猛烈の人なり。〕