長短経 / 察相
言性靈者存乎容止。斯其大體。夫相人先視其靣靣有五岳四瀆、〔五岳者、額為衡山、頰頥為恒山、鼻為嵩山、左顴為泰山、右顴為華山。四瀆者、鼻孔為濟、口為河、目為淮、耳為江。五岳欲聳峻圓滿、四瀆欲深大、崖岸成就。五岳成者、富人也、不豐則貧、四瀆成者、貴人也、不成則賤矣。〕
新字:言性霊者存乎容止。斯其大体。夫相人先視其面面有五岳四瀆、〔五岳者、額為衡山、頰頥為恒山、鼻為嵩山、左顴為泰山、右顴為華山。四瀆者、鼻孔為済、口為河、目為淮、耳為江。五岳欲聳峻円満、四瀆欲深大、崖岸成就。五岳成者、富人也、不豊則貧、四瀆成者、貴人也、不成則賤矣。〕
書き下し
性霊を言う者は容止に存す。斯れ其の大体なり。夫れ人を相るには先ず其の面を視る。面に五岳四瀆有り。〔五岳とは、額を衡山と為し、頬頤を恒山と為し、鼻を嵩山と為し、左顴を泰山と為し、右顴を華山と為す。四瀆とは、鼻孔を済と為し、口を河と為し、目を淮と為し、耳を江と為す。五岳は聳峻円満ならんことを欲し、四瀆は深大にして崖岸成就せんことを欲す。五岳成る者は富人なり、豊かならざれば則ち貧なり。四瀆成る者は貴人なり、成らざれば則ち賤なり。〕
現代語訳
生まれつきの心ばえを言うなら、それは立ち居ふるまいに現れる。これがその大筋である。人を見るには、まずその顔を見る。顔には五つの山と四つの川がある。〔五岳とは、額を衡山、頬とあごを恒山、鼻を嵩山、左の頬骨を泰山、右の頬骨を華山とするものである。四瀆とは、鼻孔を済水、口を黄河、目を淮水、耳を長江とするものである。五岳はそびえ立って円く満ちていることを求め、四瀆は深く大きく岸がはっきり通っていることを求める。五岳が整っている者は富む人であり、豊かでなければ貧しい。四瀆が整っている者は貴い人であり、整っていなければ賤しい。〕
解説
顔を大地に見立てる体系です。額・あご・鼻・両頬骨を中国の五名山に配し、鼻孔・口・目・耳を四大河に配する。人の顔を一つの国土として読むという発想で、これ以降の記述はすべてこの地図の上で行われます。現代の読み手が受け取るべきは、顔の造作から富貴を読むという結論ではなく、人は他人の顔から何かを読み取らずにはいられない、という事実のほうでしょう。その読み取りがどんな体系に沿っているかを知っておくのは無駄ではありません。
この章句が説くこと
察相五岳四瀆顔体系人相容止
関連する章句
-
『長短経』察相宋の孔熙光、姚生に就きて曰く「夫れ人を相るや、天は其の円きを欲し、地は其の方なるを欲し、眼は光曜たるを欲し、鼻は柱梁を須つ。四瀆は明らかならんことを欲し、五岳は強からんことを欲す。此の数者、君に一だに無し。又た君の眸子は、眽眽として望むが如く、羊行は委曲して歩を失い、声は嘶散して揚がらず。豈に唯だ其の福禄を失うのみならんや、将に乃ち其の禍殃に罹らんとす」と。後に皆な謀反して、之を殺さる。〕
-
『長短経』察相五官六府、〔五官とは、口一、鼻二、耳三、目四、人中五なり。六府とは、両行の上を二府と為し、両輔角を四府と為し、両顴衡の上を六府と為す。一官好ければ十年貴く、一府好ければ十年富む。五官六府皆な好ければ、富貴已む無し。左を文と為し、右を武と為すなり。〕九州八極、〔九州とは、額の左より右に達し、縦理無く、敗絶せず、状の覆肝の如き者を善しと為す。八極とは、鼻に登りて望み、八方形を成し、相い傾かざる者を良と為すなり。〕
-
『長短経』察相鼻孔小さく縮み、準頭低く曲がる者は、慳吝の人なり。〔肺は出でて鼻孔と為り、又た皮膚を主り、又た気息と為り、魄に蔵る。鼻好き者は、声誉有り。鼻柱薄くして梁陥る者は、病厄多き人なり。鼻に媚無きは、憨惷の人なり。蜣蜋鼻は、意智少なき人なり。〕耳孔小さく、歯瓣細き者は、邪諂姦佞の人なり。〔腎は出でて骨と為り、又た髄を主る。髄は窮まりて耳孔と為り、骨は窮まりて歯と為り、志に蔵る。経に曰く、耳亢く深広なる者は、心虚にして玄を識る。耳孔醜小なる者は、智無くして神理を信ぜず。耳辺に媚無きは鄙拙の人なり。耳孔小さくして節骨曲戻する者は、意智無き人なり。老鼠耳なる者は、人を殺して死せず。又た云う、鼠耳の人は、多く偸盗を作す者なり。〕
-
『長短経』察相七門二儀、〔七門とは、両姦門、両闕門、両命門、一庭中なり。二儀とは、頭は円くして天に法り、足は方にして地に象る。天は高きを得んことを欲し、地は厚きを得んことを欲す。若し頭小さく足薄ければ、貧賤の人なり。七門皆な好ければ、富貴の人なり。総べて之を言えば、額を天と為し、頤を地と為し、鼻を人と為し、左目を日と為し、右目を月と為す。天は張らんことを欲し、地は方ならんことを欲し、人は深広ならんことを欲し、日月は光らんことを欲す。天好き者は貴く、地好き者は富み、人好き者は寿く、日月好き者は茂んなり。上停を天と為し、父母の貴賤を主る。中停を人と為し、昆弟妻子・仁義年寿を主る。下停を地と為し、田宅奴婢・畜牧飲食を主る。〕
-
『長短経』察相耳輪厚大、鼻準円実、乳頭端浄、頦頤深広厚大なる者は、忠信謹厚の人なり。〔脾は出でて肉と為り、肉は窮まりて孔と為り、又た耳輪、準・鼻梁・頦頤等を主り、意に蔵る。経に曰く、夫れ頭高大なる者は、性は自在にして人を凌ぐを好む。頭卑弊なる者は、性は人に随いて細砕なり。故に曰く、鹿頭側長なれば、志気雄強。兔頭蔑頡なれば、意志下劣。獺頭横闊なれば心意豁達。夫れ頸細くして曲がる者は、自ら樹立せざるの人なり。若し色斑駁或いは潔浄ならざる者は、性は宜しきに随いて堅固ならず。夫れ手の繊長なる者は、施捨を好む。短厚なる者は、取るを好む。捨つるは則ち庶幾く、取るは則ち貪惜す。故に曰く、手、鶏足の如くんば、意智褊促。手、猪蹄の如くんば、志意昏迷。手、猴掌の如くんば、勤劬伎倆。夫れ背の厚闊なる者は剛決の人なり、薄き者は怯弱の人なり。夫れ腹の端妍なる者は、才華の人なり。故に曰く、牛腹婪貪なれば、財物自ずから淹る。蝦蟇腹なる者は懶人なり。夫れ腰の端美なる者は、則ち楽しみて能く人に任ず。蜥蜴腰なる者は緩人なり。夫れ臀髀厚広なる者は、任ず可く安穏の人なり。夫れ蛇行する者は含毒の人なり、之と事を共にす可からず。鳥行蹌蹌たるは、性行不良なり、鳥鵲の行くに似るなり。鷹行は雄烈。豺狼行なる者は、性麤にして利を覓むる人なり。牛行は性直なり。馬行は猛烈の人なり。〕
-
『長短経』察相〔肝は出でて眼と為り、又た筋を主り、窮まりて爪と為り、眉に栄え、魂に蔵る。経に曰く、凡そ人、眉直くして頭昂れば、意気雄強なり。缺損及び薄きは、信無き人なり。弓の如き者は、善き人なり。眼に光彩有りて媚好なる者は、性は物理を識りて明哲なる人なり。眼光、瞼外に溢れ出でて、散ぜず動かず、瞼も又た急ならず緩ならずして、精の露われざる者は、智恵の人なり。瞼蹇縮し、精に光無き者は、愚鈍の人なり。眼光、瞼を出でざる者は、情を蔵する人なり。加うるに瞼渋りて盗み視れば、必ず賊を作すなり。