智囊 / 遠猶・孫伯純
孫伯純史館知海州日,發運司議置洛要、板浦、惠澤三鹽場,孫以為非便。發運使親行郡,決欲為之,孫抗論排沮甚堅。百姓遮縣,自言置鹽場為便。孫曉之曰:「汝愚民,不知遠計。官賣鹽雖有近利,官鹽患在不售,不患在不足。鹽多而不售,遺患在三十年後。」至孫罷郡,卒置三場。其後連海間刑獄盜賊差役,比舊浸繁,緣三鹽場所置。積鹽山積,運賣不行,虧失欠負,動輒破人產業,民始患之。又朝廷調軍器,有弩樁箭幹之類,海州素無此物,民甚苦之,請以鰾胶充折。孫謂之曰:「弩樁箭幹,共知非海州所產,蓋一時所須耳。若以土產物代之,恐汝歲歲被科無已時也。」
新字:孫伯純史館知海州日,発運司議置洛要、板浦、恵沢三塩場,孫以為非便。発運使親行郡,決欲為之,孫抗論排沮甚堅。百姓遮県,自言置塩場為便。孫暁之曰:「汝愚民,不知遠計。官売塩雖有近利,官塩患在不售,不患在不足。塩多而不售,遺患在三十年後。」至孫罷郡,卒置三場。其後連海間刑獄盗賊差役,比旧浸繁,縁三塩場所置。積塩山積,運売不行,虧失欠負,動輒破人産業,民始患之。又朝廷調軍器,有弩樁箭幹之類,海州素無此物,民甚苦之,請以鰾胶充折。孫謂之曰:「弩樁箭幹,共知非海州所産,蓋一時所須耳。若以土産物代之,恐汝歳歳被科無已時也。」
書き下し
孫伯純、史館にして海州に知たりし日、発運司、洛要・板浦・恵沢の三塩場を置かんことを議す。孫、以て便に非ずと為す。発運使親しく郡に行き、決して之を為さんと欲す。孫、抗論して排沮すること甚だ堅し。百姓、県を遮りて、自ら塩場を置くを便とすと言う。孫之に暁して曰く、「汝は愚民にして、遠計を知らず。官の塩を売るは近利有りと雖も、官塩は售れざるを患え、足らざるを患えず。塩多くして售れざれば、遺患は三十年の後に在らん」と。孫の郡を罷むるに至り、卒に三場を置く。其の後、海を連ぬる間の刑獄・盗賊・差役、旧に比して浸く繁く、三塩場の置く所に縁る。積塩は山のごとく積み、運売行われず、虧失・欠負は、動もすれば人の産業を破り、民始めて之を患う。又、朝廷、軍器を調え、弩樁・箭幹の類有り。海州は素より此の物無く、民甚だ之に苦しみ、鰾膠を以て充て折せんことを請う。孫之に謂いて曰く、「弩樁・箭幹は、共に海州の産する所に非ざるを知る。蓋し一時の須うる所なるのみ。若し土産の物を以て之に代えば、恐らくは汝は歳歳科せらるること已む時無からん」と。
現代語訳
孫伯純が史館の官のまま海州の知事だったとき、発運司は洛要、板浦、恵沢の三つの塩場を設置することを提案した。孫伯純はこれを不都合だと考えた。発運使が自ら州に来て、ぜひ実行しようとしたが、孫伯純は強く反論して阻止した。民衆が役所に押しかけ、塩場を置くことは便利だと自ら訴えた。孫伯純は彼らに言い聞かせた。「お前たちは愚かな民で、遠い先のことを知らない。官が塩を売るのは目先の利益があるが、官塩は売れなくなることが問題で、足りなくなることは問題ではない。塩が多くて売れなければ、その禍は三十年後に残る」。孫伯純が知事を辞めた後、結局三つの塩場が置かれた。その後、沿海の地域で刑事事件、盗賊、夫役が以前よりだんだん増えたのは、三塩場の設置に起因する。積まれた塩は山のようになり、運搬も販売も行われず、損失や未納が出て、しばしば人の財産を破産させ、民はようやくこれを苦にした。また、朝廷は武器を調達し、弩の台座や矢の軸の類を求めた。海州にはもともとこれらの産物がなく、民はたいへん苦しみ、魚の浮き袋の膠で代用することを願い出た。孫伯純は彼らに言った。「弩の台座や矢の軸は、海州の産物でないことは皆が知っている。一時の需要にすぎない。もし土地の産物で代えたら、お前たちは毎年割り当てられ続けるだろう」。
解説
この章句が説くこと
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『智囊』得情・孫寶・李惠・游顯沿孫宝、京兆尹と為る。饊を売る者有り、今の餅なり。都市に於いて一村民と相逢い、擊ちて落とし皆砕く。村民は五十枚を賠するを認め、売る者は三百枚と堅く称して、以て証する無し。公、別に一枚を買いて之を称らしめ、乃ち砕けたる者を都べて秤り、細かに分両を拆かしむれば、売る者乃ち服す。魏の李恵、雍州刺史と為る。薪を負う者、塩を負う者有り、同じく擔を弛めて樹陰に憩う。将に行かんとして、一つの羊皮を争い、各おの背に藉く物と言う。恵曰く、「此れ甚だ弁じ易し」と。乃ち羊皮を席上に置かしめ、杖を以て之を擊てば、塩屑出ず。薪を負う者乃ち罪に服す。江浙省の游平章顕沿は、政を為すこと清明なり。城中の銀店に一つの蒲団を失う者有り、後に隣家に於いて認め得たるも、隣は服せず、争い詈りて置かず。遊、馬を行らせて至り、其の故を問い、歎じて曰く、「一蒲団の直は幾何ぞ、二家の好みを失う。蒲団を杖つこと七十、棄てて可なり」と。杖つに及びて銀星を得たり。遂に其の隣を罪す。
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『智囊』遠猶・王鐸王鐸、京兆丞たりし時、李蠙、度支を判し、毎年江淮より米を京に運ぶ。水陸の脚銭、斗を計るに七百。京国の米価は斗四十。議して江淮をして米を運ばしめず、但だ毎斗銭七百を納めしめんと欲す。鐸曰く、「計に非ざるなり。若し京国に於いて糴米せば、且つ京国の食を耗らす。若し米を淮より京国に運ばば、兼ねて無限の貧民を済うなり」と。糴米の制は、業に已に行われ、竟に敢えて其の議を阻む者無し。都下の米は果たして大いに貴く、未だ旬を経ずして度支は罷めんことを請う、民の至る者無きを以てなり。識者は皆な鐸の事を察するに服し、此を以て大いに用いらる。〔馮述評〕国初の中塩の法、粟を輸して辺に実たしめ、塩を内地に支う。商人の粟を運ぶこと艱苦にして、是に於いて民を募りて辺に就きて荒を墾かしめ、以て輸納に便にし、而して辺地は俱に成熟す。此れ塩・屯の相い須つ最も善き法なり。葉侍郎淇、郷人の請いに徇い、銀を部に輸するに改めてより、辺地は日に漸く拋荒し、粟は遂に騰貴し、塩法も亦大いに敝壊せり。「小利を見れば則ち大事成らず」、聖言は真に畏るべきかな。
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『塩鉄論』復古篇大夫曰く、故の扇水都尉彭祖寧に歸り、言えらく、『鹽・鐵の令品、令品甚だ明らかなり。卒徒は縣官に衣食し、鐵器を作鑄して、給用甚だ眾く、民に妨げ無し。而るに吏或いは良ならず、禁令行われず、故に民之を煩苦す』と。令の意は鹽・鐵を總一するは、獨り利入の為のみに非ず、將に以て本を建て末を抑え、朋黨を離し、淫侈を禁じ、幷兼の路を絕たんとするなり。古者、名山大澤は以て封ぜず、下の利を專らにするが為なり。山海の利、廣澤の畜えは、天地の藏なり、皆宜しく少府に屬すべきも、陛下は私せず、以て大司農に屬せしめ、以て百姓を佐助す。浮食奇民は、山海の貨を擅にせんと好欲し、以て富業を致し、細民を役利す、故に事を沮み議する者眾し。鐵器兵刃は、天下の大用なり、眾庶の宜しく事とすべき所に非ざるなり。往者、豪強大家は、山海の利を管するを得、鐵石を采り鼓鑄し、海を煮て鹽と為す。一家に眾を聚むること、或いは千餘人に至る、大抵は盡く放流の人民を收むるなり。遠く鄉里を去り、墳墓を棄て、大家に依倚し、深山窮澤の中に聚まり、奸偽の業を成し、朋黨の權を遂ぐ、其の輕がるしく非を為すこと亦た大なり。今者、賢を進むるの途を廣め、守尉を練り擇ぶ、鹽・鐵を去るを待たずして民を安んずるなり。
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『智囊』遠猶・張詠張忠定、崇陽県に知たり。民は茶を以て業と為す。公曰く、「茶の利は厚し、官将に之を榷せんとす。早く自ら異にするに若かず」と。命じて茶を抜きて桑を植えしむ。民以て苦しと為す。其の後、茶を榷するに、他県は皆な業を失い、而して崇陽の桑は皆已に成り、絹を為すこと歳に百万匹。民公の恵みを思い、廟を立てて之に報ず。〔馮述評〕文温州林、永嘉に官たりし時、其の地に美梨を産す。持ちて中官に献ずる者有り、中官は民をして納めて以て貢に充てしむ。公曰く、「梨の民を利すること幾何ぞ。歳ごとに例と為さば、其の害大なり」と。悉く其の樹を伐らしむ。中官怒りて之を譖す。会たま卓異に薦められて免るるを得たり。近年、虎丘の茶も亦僧の害する所と為り、僧も亦樹を伐りて以て之を絶つ。嗚呼、中官は道うに足らず。人の牧と為りて民をして樹を伐りて以て害を避けしむるに至る、此の情、念わざるべけんや。〔馮注:林は、衡山先生の父なり。〕《泉南雑誌》に云う、泉の地は甘蔗を出し、糖を為して利厚し。往往にして稲田を改めて蔗を種うる者有り。故に稲米益々乏しく、皆な浙直の海販に仰給す。茲の土に蒞む者は、当に法を設けて之を禁ずべし。驟かには情ならざるに似たるも、恵後は甚だ溥し、と。
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『塩鉄論』刺權篇大夫曰く、今夫れ越の具區、楚の雲夢、宋の鉅野、齊の孟諸は、有國の富にして霸王の資なり。人君統べて之を守れば則ち強く、禁ぜざれば則ち亡ぶ。齊は其の腸胃を以て人に予え、家強くして制せられず、枝大にして榦を折る、以て巨海の富を專らにして魚鹽の利を擅にすればなり。勢は以て眾を使うに足り、恩は以て下を恤むに足る、是を以て齊國は內に倍きて外に附く。權は臣に移り、政は家に墜ち、公室卑くして田宗強し、轂を轉じ海に遊ぶ者蓋し三千乘、之を本に失いて末救うべからず。今山川海澤の原は、獨り雲夢・孟諸のみに非ざるなり。鼓鑄煮鹽は、其の勢い必ず深く幽谷に居りて、人民の罕に至る所なり。奸猾は山海の際に交通す、恐らくは大奸を生ぜん。利に乘じて驕溢し、樸を散じ偽を滋さば、則ち人の本を貴ぶ者寡なからん。大農鹽鐵丞の咸陽・孔僅等上請すらく、『願わくは民を募りて自ら費を給せしめ、縣官の器に因りて、鹽を煮て用を予え、以て浮偽の路を杜がん』と。此に由りて之を觀るに、令意の禁ずる所は微にして、有司の慮も亦た遠し。
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『智囊』遠猶・孫叔敖孫叔敖、疾み将に死せんとして、其の子を戒めて曰く、「王は亟しば我を封ぜんとせしも、吾は受けざりき。我が死するが為に、王は則ち汝を封ぜん。汝は必ず利ある地を受くる無かれ。楚、越の間に寝丘有り、地は利ならずして名は甚だ悪く、楚人は鬼とし越人は機とす。長く有つべき者は唯だ此のみ」と。孫叔敖死し、王果たして美地を以て其の子を封ず。子辞して受けず、寝丘を請う。之を与え、今に至るまで失わず。
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