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茶の本 / 第六章 花・花は王位についた皇子のように

茶の宗匠が花を満足に生けると、彼はそれを日本間の上座にあたる床の間に置く。その効果を妨げるような物はいっさいその近くにはおかない。たとえば一幅の絵でも、その配合に何か特殊の審美的理由がなければならぬ。花はそこに王位についた皇子のようにすわっている、そして客やお弟子たちは、その室に入るやまずこれに丁寧なおじぎをしてから始めて主人に挨拶をする。生花の傑作を写した絵が素人のために出版せられている。この事に関する文献はかなり大部なものである。花が色あせると宗匠はねんごろにそれを川に流し、または丁寧に地中に埋める。その霊を弔って墓碑を建てる事さえもある。

書き下し

茶の宗匠が花を満足に生けると、彼はそれを日本間の上座にあたる床の間に置く。その効果を妨げるような物はいっさいその近くにはおかない。たとえば一幅の絵でも、その配合に何か特殊の審美的理由がなければならぬ。花はそこに王位についた皇子のようにすわっている。そして客やお弟子たちは、その室に入るやまずこれに丁寧なおじぎをしてから、始めて主人に挨拶をする。生花の傑作を写した絵が素人のために出版せられている。この事に関する文献はかなり大部なものである。花が色あせると宗匠はねんごろにそれを川に流し、または丁寧に地中に埋める。その霊を弔って墓碑を建てる事さえもある。

現代語訳

茶の宗匠が花を満足に生けると、彼はそれを日本間の上座にあたる床の間に置きます。その効果を妨げるようなものはいっさい近くに置きません。たとえば一幅の絵でも、その配合に何か特別な美的理由がなければなりません。花はそこに、王位についた皇子のように座っています。そして客や弟子たちは、その部屋に入るとまずこれに丁寧なお辞儀をしてから、初めて主人に挨拶をします。生け花の傑作を写した絵が素人のために出版されています。このことに関する文献はかなり大部なものです。花が色あせると、宗匠は丁重にそれを川に流し、あるいは丁寧に地中に埋めます。その霊を弔って墓碑を建てることさえあります。

解説

客がまず花に礼をし、それから主人に挨拶する。この順序に、この章の答えが全部入っています。花は飾りではなく、その場の主役として扱われる。そして終わりまで面倒を見る。色あせた花を川に流し、土に埋め、墓碑まで建てる。切ったあとの責任を引き受ける作法です。前半で告発した、一夜で捨てられる花との差が、ここで最もはっきりします。

この章句が説くこと

床の間主役始末責任

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