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茶の本 / 第五章 芸術鑑賞・利休は千人に一人の宗匠

これに連関して小堀遠州に関する話を思い出す。遠州はかつてその門人たちから、彼が収集する物の好みに現われている立派な趣味を、お世辞を言ってほめられた。「どのお品も、実に立派なもので、人皆嘆賞おくあたわざるところであります。これによって先生は、利休にもまさる趣味をお持ちになっていることがわかります。というのは、利休の集めた物は、ただ千人に一人しか真にわかるものがいなかったのでありますから。」と。遠州は歎じて、「これはただいかにも自分が凡俗であることを証するのみである。偉い利休は、自分だけにおもしろいと思われる物をのみ愛好する勇気があったのだ。しかるに私は、知らず知らず一般の人の趣味にこびている。実際、利休は千人に一人の宗匠であった。」と答えた。

新字:これに連関して小堀遠州に関する話を思い出す。遠州はかつてその門人たちから、彼が収集する物の好みに現われている立派な趣味を、お世辞を言ってほめられた。「どのお品も、実に立派なもので、人皆嘆賞おくあたわざるところであります。これによって先生は、利休にもまさる趣味をお持ちになっていることがわかります。というのは、利休の集めた物は、ただ千人に一人しか真にわかるものがいなかったのでありますから。」と。遠州は嘆じて、「これはただいかにも自分が凡俗であることを証するのみである。偉い利休は、自分だけにおもしろいと思われる物をのみ愛好する勇気があったのだ。しかるに私は、知らず知らず一般の人の趣味にこびている。実際、利休は千人に一人の宗匠であった。」と答えた。

書き下し

これに連関して小堀遠州に関する話を思い出す。遠州はかつてその門人たちから、彼が収集する物の好みに現われている立派な趣味を、お世辞を言ってほめられた。「どのお品も、実に立派なもので、人皆嘆賞おくあたわざるところであります。これによって先生は、利休にもまさる趣味をお持ちになっていることがわかります。というのは、利休の集めた物は、ただ千人に一人しか真にわかるものがいなかったのでありますから」と。遠州は歎じて、「これはただ、いかにも自分が凡俗であることを証するのみである。偉い利休は、自分だけにおもしろいと思われる物をのみ愛好する勇気があったのだ。しかるに私は、知らず知らず一般の人の趣味にこびている。実際、利休は千人に一人の宗匠であった」と答えた。

現代語訳

これに関連して小堀遠州の話を思い出します。遠州はかつて門人たちから、彼が収集する物の好みに現れた立派な趣味を、世辞を言って褒められました。どの品も実に立派なもので、誰もが感嘆せずにはいられません。これによって先生は利休にもまさる趣味をお持ちだと分かります。利休が集めた物は、ただ千人に一人しか本当に分かる者がいなかったのですから、と。遠州は嘆いて答えました。これはただ、自分が凡俗であることを証明するだけだ。偉い利休は、自分だけが面白いと思う物だけを愛好する勇気があった。しかし私は知らず知らず一般の人の趣味に媚びている。実際、利休は千人に一人の宗匠だった、と。

解説

褒め言葉を、自分の凡俗の証拠として受け取る。この転換がこの段の全部です。誰にでも分かる趣味は、自分の趣味ではなく世間の趣味だ。利休は千人に一人にしか分からないものを愛する勇気があった。そして最後の一句が二重の意味を持ちます。千人に一人の宗匠、つまり千人に一人にだけ分かる宗匠であり、千人に一人の逸材でもある。誉め言葉を疑う力が、遠州の誠実さです。

この章句が説くこと

趣味独自迎合勇気利休

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