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茶の本 / 第四章 茶室・洋式建築の無分別な模倣

茶室はある個人的趣味に適するように建てらるべきだということは、芸術における最も重要な原理を実行することである。芸術が充分に味わわれるためにはその同時代の生活に合っていなければならぬ。それは後世の要求を無視せよというのではなくて、現在をなおいっそう楽しむことを努むべきだというのである。また過去の創作物を無視せよというのではなくて、それをわれらの自覚の中に同化せよというのである。伝統や型式に屈従することは、建築に個性の表われるのを妨げるものである。現在日本に見るような洋式建築の無分別な模倣を見てはただ涙を注ぐほかはない。われわれは不思議に思う、最も進歩的な西洋諸国の間に何ゆえに建築がかくも斬新を欠いているのか、かくも古くさい様式の反復に満ちているのかと。

書き下し

茶室はある個人的趣味に適するように建てらるべきだということは、芸術における最も重要な原理を実行することである。芸術が充分に味わわれるためには、その同時代の生活に合っていなければならぬ。それは後世の要求を無視せよというのではなくて、現在をなおいっそう楽しむことを努むべきだというのである。また過去の創作物を無視せよというのではなくて、それをわれらの自覚のなかに同化せよというのである。伝統や型式に屈従することは、建築に個性の表われるのを妨げるものである。現在日本に見るような洋式建築の無分別な模倣を見てはただ涙を注ぐほかはない。われわれは不思議に思う、最も進歩的な西洋諸国の間に、何ゆえに建築がかくも斬新を欠いているのか、かくも古くさい様式の反復に満ちているのかと。

現代語訳

茶室がある個人の趣味に合うように建てられるべきだということは、芸術における最も重要な原理を実行することです。芸術が十分に味わわれるためには、その同時代の生活に合っていなければなりません。それは後世の求めを無視せよというのではなく、現在をさらに楽しむよう努めるべきだということです。また過去の創作を無視せよというのではなく、それを自分たちの自覚の中に同化せよということです。伝統や型式に屈従することは、建築に個性が現れるのを妨げます。現在の日本に見られるような洋式建築の無分別な模倣を見ては、ただ涙を注ぐほかありません。私たちは不思議に思います。もっとも進歩的な西洋諸国の間で、なぜ建築がこれほど新しさを欠いているのか、これほど古くさい様式の繰り返しに満ちているのかと。

解説

伝統との正しい付き合い方が示されます。過去を無視するのでもなく屈従するのでもなく、自分の自覚の中に同化せよ、と。そして二方向へ批判が飛びます。洋式を無分別に真似る日本と、古い様式を繰り返すばかりの西洋。どちらも過去を同化できていないという同じ病です。同時代の生活に合っていなければ芸術は味わえない、という基準が、両方を裁く物差しになっています。

この章句が説くこと

伝統模倣同化個性現在

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