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茶の本 / 第四章 茶室・清貧を思わせる材料

茶室は見たところなんの印象も与えない。それは日本のいちばん狭い家よりも狭い。それにその建築に用いられている材料は、清貧を思わせるようにできている。しかしこれはすべて深遠な芸術的思慮の結果であって、細部に至るまで、立派な宮殿寺院を建てるに費やす以上の周到な注意をもって細工が施されているということを忘れてはならない。よい茶室は普通の邸宅以上に費用がかかる、というのはその細工はもちろんその材料の選択に多大の注意と綿密を要するから。実際茶人に用いられる大工は、職人の中でも特殊な、非常に立派な部類を成している。彼らの仕事は漆器家具匠の仕事にも劣らぬ精巧なものであるから。

書き下し

茶室は見たところなんの印象も与えない。それは日本のいちばん狭い家よりも狭い。それにその建築に用いられている材料は、清貧を思わせるようにできている。しかしこれはすべて深遠な芸術的思慮の結果であって、細部に至るまで、立派な宮殿寺院を建てるに費やす以上の周到な注意をもって細工が施されているということを忘れてはならない。よい茶室は普通の邸宅以上に費用がかかる、というのはその細工はもちろん、その材料の選択に多大の注意と綿密を要するから。実際茶人に用いられる大工は、職人のなかでも特殊な、非常に立派な部類を成している。彼らの仕事は漆器家具匠の仕事にも劣らぬ精巧なものであるから。

現代語訳

茶室は見たところ何の印象も与えません。日本でいちばん狭い家よりも狭い。しかもその建築に使われている材料は、清らかな貧しさを思わせるようにできています。しかしこれはすべて深く行き届いた芸術的な配慮の結果であって、細部にいたるまで、立派な宮殿や寺院を建てるのに費やす以上の周到な注意をもって細工が施されていることを忘れてはなりません。よい茶室は普通の邸宅以上に費用がかかります。細工はもちろん、材料の選択に多大の注意と綿密さを要するからです。実際、茶人が用いる大工は職人の中でも特殊な、非常に立派な部類を成しています。彼らの仕事は漆器や家具の職人の仕事にも劣らない精巧なものだからです。

解説

簡素と安価は別物だ、という指摘です。清貧を思わせるように作ってある、という言い方が正確で、見た目の粗末さが意図された効果であることを示しています。そして宮殿より手間がかかり、邸宅より費用がかかる。何もないように見せるほうが難しいという、あらゆる表現に通じる話です。専門の大工が育ったという事実も添えられ、簡素を実現する技術が産業として成立していたことが分かります。

この章句が説くこと

簡素費用技術意図職人

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