茶の本 / 第三章 道教と禅道・めいめい速く能を隠すがよい
めいめい速く能を隠すがよい。もしほんとうに重宝だと世間へ知れたならば、すぐに競売に出されて最高入札者の手に落とされよう。男も女も何ゆえにかほど自己を広告したいのか。奴隷制度の昔に起源する一種の本能に過ぎないのではないか。
書き下し
めいめい速く能を隠すがよい。もしほんとうに重宝だと世間へ知れたならば、すぐに競売に出されて最高入札者の手に落とされよう。男も女も何ゆえにかほど自己を広告したいのか。奴隷制度の昔に起源する一種の本能に過ぎないのではないか。
現代語訳
それぞれ早く自分の才能を隠すのがよい。もし本当に役に立つと世間に知れたら、すぐに競売に出されて最高入札者の手に落とされるでしょう。男も女も、なぜこれほど自分を売り込みたいのか。奴隷制度の昔に起源を持つ一種の本能にすぎないのではないでしょうか。
解説
才能を隠せ、という助言の理由が鋭い。有用だと知られれば売り物になるからだ、と。自己宣伝を、自由な人間の振る舞いではなく、値をつけられることに慣れた者の本能だと言い切ります。奴隷制度の昔に起源すると書くのは、売られる立場を内面化しているという指摘で、自己をたえず売り込む今日の働き方にもそのまま届きます。前段の、徳が小売りされるという批判の続きです。
この章句が説くこと
才能自己宣伝市場隠す本能
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