茶の本 / 第三章 道教と禅道・教会から付属物を取り去ってみよ
われらは恐ろしく自己意識が強いから不道徳を行なう。おのれ自身が悪いと知っているから人を決して許さない。他人に真実を語ることを恐れているから良心をはぐくみ、おのれに真実を語るを恐れてうぬぼれを避難所にする。世の中そのものがばかばかしいのにだれがよくまじめでいられよう! といい、物々交換の精神は至るところに現われている。義だ! 貞節だ! などというが、真善の小売りをして悦に入っている販売人を見よ。人はいわゆる宗教さえもあがなうことができる。それは実のところたかの知れた倫理学を花や音楽で清めたもの。教会からその付属物を取り去ってみよ、あとに何が残るか。しかしトラスト(二〇)は不思議なほど繁盛する、値段が途方もなく安いから――天国へ行く切符代の御祈祷も、立派な公民の免許状も。
書き下し
われらは恐ろしく自己意識が強いから不道徳を行なう。おのれ自身が悪いと知っているから人を決して許さない。他人に真実を語ることを恐れているから良心をはぐくみ、おのれに真実を語るを恐れてうぬぼれを避難所にする。世の中そのものがばかばかしいのに、だれがよくまじめでいられよう、といい、物々交換の精神は至るところに現われている。義だ、貞節だ、などというが、真善の小売りをして悦に入っている販売人を見よ。人はいわゆる宗教さえもあがなうことができる。それは実のところ、たかの知れた倫理学を花や音楽で清めたもの。教会からその付属物を取り去ってみよ、あとに何が残るか。しかしトラストは不思議なほど繁盛する、値段が途方もなく安いから――天国へ行く切符代の御祈祷も、立派な公民の免許状も。
現代語訳
私たちはひどく自意識が強いから、不道徳を行います。自分自身が悪いと知っているから、人を決して許さない。他人に真実を語ることを恐れているから良心を育て、自分に真実を語ることを恐れて自惚れを避難所にします。世の中そのものが馬鹿馬鹿しいのに、誰がまともに真面目でいられよう、と言い、物々交換の精神が至るところに現れています。義だ、貞節だ、などと言いますが、真と善を小売りして得意になっている販売人をご覧なさい。人はいわゆる宗教さえ買うことができます。それは実のところ、たかの知れた倫理を花や音楽で清めたものです。教会からその付属物を取り去ってみなさい、あとに何が残るか。しかしその組合は不思議なほど繁盛します。値段が途方もなく安いから。天国へ行く切符代の祈りも、立派な市民の免許状も。
解説

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
関連する章句
-
『墨子』公孟程子曰く、「甚だしいかな、先生の儒を毁るや」と。子墨子曰く、「儒に固より此の各の四政無くして、我れ之を言わば、則ち是れ毁るなり。今、儒に固より此の四政有りて、我れ之を言わば、則ち毁るに非ざるなり、聞くを告ぐるなり」と。程子、辭無くして出づ。子墨子曰く、「之に迷えるかな」と。反り、後に坐して、進みて復た曰く、「鄉者、先生の言に聞く可き者有り。若し先生の言のごとくんば、則ち是れ禹を譽めず、桀紂を毁らざるなり」と。子墨子曰く、「然らず。夫れ孰辭に應ずるに、議に稱いて之を為すは、敏なり。厚く攻むれば則ち厚く吾れし、薄く攻むれば則ち薄く吾れす。孰辭に應じて議に稱うは、是れ猶お轅を荷いて蛾を擊つがごときなり」と。
-
『甲陽軍鑑』品第十一左様に親類の出頭に自慢して能人を議り、己れが身にかけてはあしくしなす人をば、馬糞つかみと云ふ鳥にたとへたり、此馬糞つかみは鷹の自然によりきるを笑ひ、又鷹の鳥取るをみても笑ひ、よりをきるは勿体なし、あの様に取るはあしき取り様と批判仕り、己れがいでとらんといふてはるかの野へまいおり、鳥の立ちたる跡にばふんのあれば、それをやう〳〵つかむと申し伝へたれば、手抦の侍を誹る人の二十四十に成る迄も、何の手抦もなき人を、ばふんつかみ侍とは申し習はすなり、其根元は是れ只偏へにばかなる大将のさせ給ふ義なり、
-
『呻吟語』内篇・應務・事手に到らざれば人を責むること盡く易し今人前輩先達の事を作すに自ら振拔せざるを見て、輒ち歎恨を生ず。知らず、渠我に當たる時にも也た人を歎恨するを會すや否や。我渠に當たる時に能く後人の歎恨を免るや否や。事手に到らざれば、人を責むること盡く易し。君が手に到る時を待ちて、事事努力して輕く放過せざれば便ち好し。只だ嘵嘵として人を責むるに任せば、他日縱ひ歎恨す可き無きも、今日亦た浮薄子なり。
-
尚書・秦誓人を責むる斯れ難きこと無し、惟れ責めを受けて流るるが如くならしむる、是れ惟れ艱きかな。
-
孟子・盡心章句下貉稽(ハク・ケイ)曰く、「稽大いに口に理あらず。」孟子曰く、「傷むこと無かれ。士は茲の多口に憎まる。詩に云う、『憂心悄悄たり、羣小に慍らる』とは、孔子なり。『肆(ついに)に厥に慍りを殄(たつ)たず、亦た厥の問を隕とさず』とは、文王なり。」
-
『講孟余話』離婁上 第二十六章且つ娶らずんば舜は誠に後なかるべし。然れども弟象にして後あらば、瞽瞍の血統を絶つに至らず。喩へば大伯・仲雍周を去ると雖も、弟季歴あるを以て大王の血統は絶えざるが如し。故に余謂へらく、舜実に此の事なくして孟子此の論を発せば聖人を誣ゆると云ふべし。舜実に此の事ありて孟子此の論を発せば聖人に阿ると云ふべし。