茶の本 / 第一章 人情の碗・単なる審美主義ではない
茶の原理は普通の意味でいう単なる審美主義ではない。というのは、倫理、宗教と合して、天人に関するわれわれのいっさいの見解を表わしているものであるから。それは衛生学である、清潔をきびしく説くから。それは経済学である、というのは、複雑なぜいたくというよりもむしろ単純のうちに慰安を教えるから。それは精神幾何学である、なんとなれば、宇宙に対するわれわれの比例感を定義するから。それはあらゆるこの道の信者を趣味上の貴族にして、東洋民主主義の真精神を表わしている。
書き下し
茶の原理は、普通の意味でいう単なる審美主義ではない。というのは、倫理、宗教と合して、天人に関するわれわれのいっさいの見解を表わしているものであるから。それは衛生学である、清潔をきびしく説くから。それは経済学である、というのは、複雑なぜいたくというよりも、むしろ単純のうちに慰安を教えるから。それは精神幾何学である、なんとなれば、宇宙に対するわれわれの比例感を定義するから。それはあらゆるこの道の信者を趣味上の貴族にして、東洋民主主義の真精神を表わしている。
現代語訳
茶の原理は、普通に言う意味での単なる美の追求ではありません。倫理や宗教と結びついて、天と人についての私たちのあらゆる考え方を表しているからです。それは衛生学です、清潔を厳しく説くから。それは経済学です、複雑な贅沢よりも、むしろ単純さの中に安らぎを教えるから。それは精神の幾何学です、宇宙に対する私たちの釣り合いの感覚を定めるから。それはこの道を信じるすべての人を、趣味の上での貴族にし、東洋の民主主義の真の精神を表しています。
解説
茶道が美の趣味に閉じないことを、四つの学問に言い換えて示します。衛生学、経済学、精神の幾何学、そして民主主義。最後の一つが効いていて、身分や財ではなく趣味によって人を貴族にする、だからこれは民主的なのだと言う。誰でも入れる貴族制という逆説です。簡素さの中に安らぎを教えるという点は、費用をかけずに豊かさを得る技術でもあり、この本が生活論として読まれる理由になっています。
この章句が説くこと
茶道簡素秩序平等趣味
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