武士訓 / 卷二・第1段
士農工商とわかりて。それ〳〵のつかさどるところ。眼耳鼻舌のおの〳〵其用あるがごとくなれば。おのが業を專らにして。他の業をまなぶことなかれ。他の業をまなぶは。其ところをうしなふなり。たとえば。鷹に魚をとらせ。鵜に鳥をとらするにたり。我家職すら。生涯こゝろをつくしてもあたはざるに。何のいとまありて。他の業をまなぶべけんや。およそ士は奉公をつとめて。義理にさとからしめ。農は田畠をおさめて耕耨にさとからしめ。工は器物をつくりて匠術にさとからしめ。商は交易をもちひて利倍にさとからしむ。しかるに農工商。おの〳〵家業にうときものなし。たまたまうときものは。貧乏にくるしみ。飢渴に及べり。其中に士は恒産ある故に。
新字:士農工商とわかりて。それ〳〵のつかさどるところ。眼耳鼻舌のおの〳〵其用あるがごとくなれば。おのが業を専らにして。他の業をまなぶことなかれ。他の業をまなぶは。其ところをうしなふなり。たとえば。鷹に魚をとらせ。鵜に鳥をとらするにたり。我家職すら。生涯こゝろをつくしてもあたはざるに。何のいとまありて。他の業をまなぶべけんや。およそ士は奉公をつとめて。義理にさとからしめ。農は田畠をおさめて耕耨にさとからしめ。工は器物をつくりて匠術にさとからしめ。商は交易をもちひて利倍にさとからしむ。しかるに農工商。おの〳〵家業にうときものなし。たまたまうときものは。貧乏にくるしみ。飢渇に及べり。其中に士は恒産ある故に。
書き下し
士農工商とわかりて。それ〳〵のつかさどるところ。眼耳鼻舌のおの〳〵其用あるがごとくなれば。おのが業を專らにして。他の業をまなぶことなかれ。他の業をまなぶは。其ところをうしなふなり。たとえば。鷹に魚をとらせ。鵜に鳥をとらするにたり。我家職すら。生涯こゝろをつくしてもあたはざるに。何のいとまありて。他の業をまなぶべけんや。およそ士は奉公をつとめて。義理にさとからしめ。農は田畠をおさめて耕耨にさとからしめ。工は器物をつくりて匠術にさとからしめ。商は交易をもちひて利倍にさとからしむ。しかるに農工商。おの〳〵家業にうときものなし。たまたまうときものは。貧乏にくるしみ。飢渴に及べり。其中に士は恒産ある故に。
現代語訳
士農工商と分かれて、それぞれが司るところは、眼・耳・鼻・舌がそれぞれ役目をもつようなものですから、自分の業を専らにして、他の業を学んではなりません。他の業を学ぶのは、その所を失うことです。たとえば、鷹に魚をとらせ、鵜に鳥をとらせるようなものです。自分の家職でさえ、生涯心を尽くしても足りないのに、どんな暇があって、他の業を学べるでしょうか。およそ士は奉公を勤めて、義理に明るくなり、農は田畑をおさめて耕し草を取ることに明るくなり、工は器物を作って匠の術に明るくなり、商は交易を行って利益の出し方に明るくなります。それで農工商には、それぞれ家業にうとい者がありません。たまたまうとい者は、貧乏に苦しみ、飢え渇くに至ります。その中で士は恒産があるので、
解説
この章句が説くこと
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