武士道 / 第十四章 婦人の教育と地位・羅馬の三婦人の註
註C一著名なる麗島法典を制定したる十大遂中の壓制家アツビアス、クローデアス、てても鹿に存りて、美少女ダアラテス「三己三の過見、之を捕へて其奴隷となし、枕邊に侍せしむ。少女の父ヴアジナス其暴虐を憤り、公廳衆人の前に、『我女よ、斯くして汝を救はん』と叫びて、其女を刺殺したる後、羅馬を去り、遂に兵を擧げ、都市を攻めて十大憲政治を轉覆し、クローデアスを捕へて之を殺せり。(マコレー〓『細馬古歌』を見よ)註(二)バーペチユア(Perpetua)は羅馬の基督教徒婦人なりき。迫害に迷ひ〓ににして開住馬戰往年の爲に股體を得かるゝや氣息將に絶せんとして、尙ほ弊衣を取りて、其膚を被ひたりと傳ふ。註(三)コルネリア(〓〓〓〓alColnille)は羅馬ヴエスタの宮に奉仕する童貞なりき。
新字:註C一著名なる麗島法典を制定したる十大遂中の圧制家アツビアス、クローデアス、てても鹿に存りて、美少女ダアラテス「三己三の過見、之を捕へて其奴隷となし、枕辺に侍せしむ。少女の父ヴアジナス其暴虐を憤り、公庁衆人の前に、『我女よ、斯くして汝を救はん』と叫びて、其女を刺殺したる後、羅馬を去り、遂に兵を挙げ、都市を攻めて十大憲政治を転覆し、クローデアスを捕へて之を殺せり。(マコレー〓『細馬古歌』を見よ)註(二)バーペチユア(Perpetua)は羅馬の基督教徒婦人なりき。迫害に迷ひ〓ににして開住馬戦往年の為に股体を得かるゝや気息将に絶せんとして、尚ほ弊衣を取りて、其膚を被ひたりと伝ふ。註(三)コルネリア(〓〓〓〓alColnille)は羅馬ヴエスタの宮に奉仕する童貞なりき。
書き下し
註(一)著名なる羅馬法典を制定したる十大官中の圧制家アッピアス・クローディアス、〔てても鹿に存りて:OCRの乱れ〕美少女〔ダアラテス「三己三の:OCRの乱れ〕過見、之を捕へて其奴隷となし、枕辺に侍せしむ。少女の父ヴァジナス其暴虐を憤り、公庁衆人の前に、『我女よ、斯くして汝を救はん』と叫びて其女を刺殺したる後、羅馬を去り、遂に兵を挙げ、都市を攻めて十大官政治を転覆し、クローディアスを捕へて之を殺せり。(マコレー(の)『羅馬古歌』を見よ)註(二)パーペチュア(Perpetua)は羅馬の基督教徒婦人なりき。迫害に〔迷ひ(一字不明)ににして開住馬戦往年の為に股体を得かるる:OCRの乱れ〕や、気息将に絶せんとして、尚ほ弊衣を取りて其膚を被ひたりと伝ふ。註(三)コルネリア(〔(四字不明)alColnille:OCRの乱れ〕)は羅馬ヴェスタの宮に奉仕する童貞なりき。
現代語訳
注(一)名高いローマ法典(十二表法)を制定した十人委員の中の暴君アッピウス・クラウディウスは、(この間に読めない文字列がある)美しい少女(ウェルギニア。この間も読めない文字列がある)を見そめ、これを捕らえて自分の奴隷とし、寝所にはべらせようとした。少女の父ウェルギニウスはその暴虐に憤り、公の場で人々の前に「わが娘よ、こうしてお前を救おう」と叫んで娘を刺し殺したのち、ローマを去り、ついに兵を挙げ、都を攻めて十人委員の政治を覆し、クラウディウスを捕らえて殺した。(マコーリーの『古代ローマの歌』を見よ。)注(二)ペルペトゥア(Perpetua)はローマのキリスト教徒の女性であった。迫害にあい(この間に読めない文字列がある。闘技場で獣に襲われ体を傷つけられたことを言うらしい)、息が絶えようとするときにも、なおぼろ着を取ってその肌を覆ったと伝えられる。注(三)コルネリア(原綴は読めない)はローマのウェスタの神殿に仕える処女の巫女であった。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『武士道』第十四章 婦人の教育と地位・膝を縛して坐容を乱さず日本のヴァージニアならんか、其貞徳の危殆に瀕する、必ずや厳父の刃を待つこと無く、其剣は常に蔵めて懐に在りたり。自害の作法を知らざるは、女子の恥づる所なりき。解剖学にこそ暗けれ、女子は正に咽喉の何処を刺すべきものなるかを知らざるべからず。死の苦痛は劇甚なりとも、死屍の坐容を乱して謹慎を破ること無からんが為、先づ帯紐を以て其膝を縛することを忘るべからず。けだし其覚悟は、基督教徒の殉教婦人ペルペトゥアの如く、又た羅馬ヴェスタ神殿の重貞コルネリアにも比すべきに非らずや。予の率爾として此問を発する所以のものは、外人の往々我国の入浴其他瑣些たる慣習を見て、日本女子は貞潔を知らずと評するあるを以てなり。
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『武士道』第十四章 婦人の教育と地位・男子の為に肌を蔽わるるはかつて大禁を犯して生埋の刑に処せらる。其の穴を下るに当り、衣の一端地に触れて肌を露したり。守兵因つて之を蔽はんとしたれど、コルネリア辞するに、男子の為に肌を蔽はるるは女子の恥づる所なりと云ひ、徐かに其衣を正したる後、従容として死に就きたり。註、ダモンとピシアスは、共にシラクサ市の青年にして、膠漆の交をなせり。ダモンかつて罪あり、暴君ディオニュシオス、紀元前四百三十一年から三百六十七年、の彼を死に処せんとするや、ダモン一度故郷に帰り其父母に見えんことを欲し、ピシアス即ち彼に代りて質となるによつて王の許可を得たり。然るにダモンの旅行に妨ぐる処ありて、而して死刑の日既に来る。
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『武士道』第十四章 婦人の教育と地位・笄するに及びて懐剣を授く婦人は剣術等の武芸を実用すること稀なりしかど、なお彼等をして端坐の習慣にのみ陥ること無からしめ、其健康に補ふ所ありたり。されど武芸の修練たる、単に衛生を旨とするものに非らず、事あるに臨んでは此れが用を為すことありき。女児の長じて既に笄するに及びてや、父母之に授くるに懐剣を以てす。以て或は敵人の胸を刺すことあるべく、或は以て己れが胸を貫くことあるべし。女子の自から刃に伏したるすこぶる多し。されど吾人は彼等を俟つに酷評を以てせざらん。基督教徒の良心は自殺を憎悪す。されどなおペラギアおよびドミニナ二女子の自殺者を崇め、聖者となして其純潔貞操の徳を頌するを見れば、彼等の我が自刃の女子を目すること、恐らくは刻薄に失するものある勿からんか。
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『武士道』第十四章 婦人の教育と地位・変革は反抗を俟たずして来る羅馬人の母が奉家の徳を失つてより、其国道徳の頽廃、言語に絶するに至りたるに非らずや。彼の米国改革家は、吾人に示すに、果して日本女子の反抗は即ち其由るべき歴史的発達の正路なるを以てするを得べきか。此等は看過すべからざる大問題なり。抑も変革は反抗を俟たずして来るべく、又た来らずんばあるべからず。而して武士道制度の下に於ける婦人の地位の低卑なる、実に反抗を要するものなりしか。吾人は今しばらくここに之を見るあらんとす。欧洲武士の『神と淑女』に奉ずるに、面従的尊敬を以てしたるを聞くや久し。されど此二語の氷炭相容れざるは、ギボンの赧顔する所にして、又たハラムは、シヴァリーの道徳は鄙陋なり、女子に対する慇懃は不義の愛を含みたりと歎ぜり。
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『武士道』第十四章 婦人の教育と地位・女となりては父の為にし彼は勁健、柔和、剛壮、悲惻の声こもごも至り、切々として日夜其小巣の為に歌へり。女となりては父の為にし、妻となりては夫の為にし、母となりては子の為にして、自から犠牲たるに甘んじ、女子少小にして、すでに自己を棄つることを知る。其一生を挙げて自主の人たらず、却つて他に隷従奉仕せり。男子の配偶となり、其の在るによりて夫を補佐するを得ば側に侍し、其の事に妨ぐることあらば屏後に退く。青春の男子の少艾を慕ふや、女も亦た報ずるに熱切の愛を以てすと雖、もし女子の故に男子の其義務を忽にするが如きことあらんか、女子の自から其美貌を損して以て男子の愛を失はんことを欲したるの逸事尠からず。武士の女子が理想の妻たる吾妻は、仇し男の慕ふ所となり、我愛を獲んが為に良人の命を殆くせられんとするや、自から亦た不義に与するに託し、闇夜ひそかに良人に代り、而して熱情ある刺客の刃は、其堅貞なる首に下りたり。
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『武士道』訳者の註・テレサとアンチゴネ註(一)テレサ(〔原綴八字不明〕)ポドリアの一伯爵の女〔(になりた):OCRの乱れ〕なりしが、波蘭王カシミルの小姓マゼッパ(〔Manapa:原綴の乱れ〕)と契れり。然るに伯爵はマゼッパが一介の小姓なるを賤みて、其無礼を憤り、彼を狂馬に縛して追放したり。マゼッパ其後コサックの将軍となり、一国君となりて、露国とプルトワに戦ひて之に勝つ。〔世節(七七):OCRの乱れ〕(バイロンの史詩『マゼッパ』を見よ。)〔世紀:OCRの乱れ〕註(二)希臘神話時代に於けるシーブス国王エヂパスの女にアンチゴネ(Antigone)あり。其父盲目の身となり、且つ其国を奪はるるや、之に伴ひて漂泊し、父死してシーブスに帰りし時、其兄又た歿す。然るに簒奪王クレオン其遺骸を葬ることを禁じたるに、アンチゴネは禁を犯して之を葬る。クレオン怒つて、アンチゴネを生埋の刑に処す。クレオンの子にして、アンチゴネの情人たるヘマン亦た彼女の墓側に自殺す。其事蹟は希臘詩人ソホクリーズの一大悲劇を成すものなり。
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