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武士道 / 訳者の註・テレサとアンチゴネ

註(一)テレサ(〓〓〓〓〓〓〓〓)ポポトリアの一伯爵の女(になりた)なりしが、波蘭王カシミルの小姓マゼツバ(Manapa)と契れり。然るに伯爵はマゼツパが一介の小姓なるを賤みて、其無禮を憤り、彼を狂馬に縛して追放したり。マゼツバ其後、コサツクの將軍となり、一國君となりて、露國とプルトワに戰ひて之に勝つ。(世節(七七)(バイロンの史詩「マセツバ」を見よ。)世紀註(二)希臘神話時代に於けるシープス國王エヂバスの女にアンチゴネ(Antigone)あり。其父盲目の身となり、且つ其國を奪はるゝや、之に伴ひて漂泊し、父死してシーブスに歸りし時、其兄又た歿す。然るに簒奪王クレオン、其遺骸を葬ることを禁じたるに、アンチゴネは禁を犯して之を葬る。クレオン怒つて、アンチゴネを生埋の刑に處す。クレオンの子にして、アンチゴネの情人たるヘマン亦た彼女の墓側に自殺す。其事蹟は希臘詩人ソホクリーズの一大悲劇を成すものなり。

新字:註(一)テレサ(〓〓〓〓〓〓〓〓)ポポトリアの一伯爵の女(になりた)なりしが、波蘭王カシミルの小姓マゼツバ(Manapa)と契れり。然るに伯爵はマゼツパが一介の小姓なるを賤みて、其無礼を憤り、彼を狂馬に縛して追放したり。マゼツバ其後、コサツクの将軍となり、一国君となりて、露国とプルトワに戦ひて之に勝つ。(世節(七七)(バイロンの史詩「マセツバ」を見よ。)世紀註(二)希臘神話時代に於けるシープス国王エヂバスの女にアンチゴネ(Antigone)あり。其父盲目の身となり、且つ其国を奪はるゝや、之に伴ひて漂泊し、父死してシーブスに帰りし時、其兄又た歿す。然るに簒奪王クレオン、其遺骸を葬ることを禁じたるに、アンチゴネは禁を犯して之を葬る。クレオン怒つて、アンチゴネを生埋の刑に処す。クレオンの子にして、アンチゴネの情人たるヘマン亦た彼女の墓側に自殺す。其事跡は希臘詩人ソホクリーズの一大悲劇を成すものなり。

書き下し

註(一)テレサ(〔原綴八字不明〕)ポドリアの一伯爵の女〔(になりた):OCRの乱れ〕なりしが、波蘭王カシミルの小姓マゼッパ(〔Manapa:原綴の乱れ〕)と契れり。然るに伯爵はマゼッパが一介の小姓なるを賤みて、其無礼を憤り、彼を狂馬に縛して追放したり。マゼッパ其後コサックの将軍となり、一国君となりて、露国とプルトワに戦ひて之に勝つ。〔世節(七七):OCRの乱れ〕(バイロンの史詩『マゼッパ』を見よ。)〔世紀:OCRの乱れ〕註(二)希臘神話時代に於けるシーブス国王エヂパスの女にアンチゴネ(Antigone)あり。其父盲目の身となり、且つ其国を奪はるるや、之に伴ひて漂泊し、父死してシーブスに帰りし時、其兄又た歿す。然るに簒奪王クレオン其遺骸を葬ることを禁じたるに、アンチゴネは禁を犯して之を葬る。クレオン怒つて、アンチゴネを生埋の刑に処す。クレオンの子にして、アンチゴネの情人たるヘマン亦た彼女の墓側に自殺す。其事蹟は希臘詩人ソホクリーズの一大悲劇を成すものなり。

現代語訳

注(一)テレサ(原綴は読めない)はポドリアのある伯爵の娘(読めない文字列がある)であったが、ポーランド王カシミールの小姓マゼッパ(原綴は乱れている)と契りを結んだ。ところが伯爵はマゼッパが一介の小姓であることをさげすんで、その無礼に憤り、彼を荒馬に縛りつけて追放した。マゼッパはその後コサックの将軍となり、一国の君主となって、ロシアとポルタヴァで戦ってこれに勝った。(読めない文字列がある。)(バイロンの叙事詩『マゼッパ』を見よ。)注(二)ギリシア神話の時代、テーバイ(シーブス)の王オイディプス(エヂパス)の娘にアンチゴネ(アンティゴネー、Antigone)がいた。父が盲目の身となり、しかも国を奪われると、父に付き添ってさすらい、父が死んでテーバイに帰ったとき、兄もまた死んだ。ところが王位を奪ったクレオンがその遺骸を葬ることを禁じたのに、アンチゴネは禁を犯してこれを葬った。クレオンは怒って、アンチゴネを生き埋めの刑に処した。クレオンの子であり、アンチゴネの恋人であったハイモン(ヘマン)もまた、彼女の墓のそばで自殺した。その事跡はギリシアの詩人ソポクレス(ソホクリーズ)の一大悲劇となっている。

解説

本文の最終章に出てくる「テレサとアンチゴネ」について、訳者の桜井鴎村が付けた注です。アンチゴネは、ソポクレスの悲劇で知られる女性で、王の禁令に背いて兄を葬り、生き埋めにされました。人の定めた法より天の掟に従った人物として、今も読み継がれています。一方、テレサについて訳者はバイロンの詩『マゼッパ』に出てくる伯爵の娘と説明していますが、本文の一文は英国の作家ジョージ・エリオットの『ミドルマーチ』の結びに見える言葉と重なり、そこではスペインの聖女アビラのテレサと読むのが自然です。訳者の注と食い違う可能性があることを、頭に置いて読むとよいでしょう。命がけの信念を貫いた二人を、あなたは今の時代にどう評価しますか。

この章句が説くこと

訳註烈婦信念アンチゴネテレサ

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