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武士道 / 第十六章 武士道の命脈・日本人の欠点もまた武士道に存す

典雅流麗の文字能く日本人の心機を解明したる小泉八雲を讀まんか、さらば直ちに其心機の作動は即ち武士道の作動の一例なるを見ん。我國上下を通じて、禮節を重んずることも、亦たこれ武士道の遺產にして、世界の熟知する所、更に絮說を要せず。所謂『矮小漢ジヤツブ』の不撓の體力を具し、又た堅忍勇敢なるは、日露戰役の能く證明したる所なり。人多く問ふ、『斯民にも勝りて忠君愛國の念を有するの國家ありや』と。而して吾人は傲然として、『他又た是れ有ること無し』と答ふるを得るは、深く武士道の教訓に負ふものあるを感謝せずんばあらず。之に反し、日本人の性格に於ける彼の缺點短所は、其の責又た大いに武士道に存すとするは、頗る其當を得たり。

新字:典雅流麗の文字能く日本人の心機を解明したる小泉八雲を読まんか、さらば直ちに其心機の作動は即ち武士道の作動の一例なるを見ん。我国上下を通じて、礼節を重んずることも、亦たこれ武士道の遺産にして、世界の熟知する所、更に絮説を要せず。所謂『矮小漢ジヤツブ』の不撓の体力を具し、又た堅忍勇敢なるは、日露戦役の能く證明したる所なり。人多く問ふ、『斯民にも勝りて忠君愛国の念を有するの国家ありや』と。而して吾人は傲然として、『他又た是れ有ること無し』と答ふるを得るは、深く武士道の教訓に負ふものあるを感謝せずんばあらず。之に反し、日本人の性格に於ける彼の欠点短所は、其の責又た大いに武士道に存すとするは、頗る其当を得たり。

書き下し

典雅流麗の文字、能く日本人の心機を解明したる小泉八雲を読まんか、さらば直ちに、其心機の作動は即ち武士道の作動の一例なるを見ん。我国上下を通じて礼節を重んずることも、亦たこれ武士道の遺産にして、世界の熟知する所、更に絮説を要せず。所謂『矮小漢』の不撓の体力を具し、又た堅忍勇敢なるは、日露戦役の能く証明したる所なり。人多く問ふ、『斯民にも勝りて忠君愛国の念を有するの国家ありや』と。而して吾人は傲然として、『他また是れ有ること無し』と答ふるを得るは、深く武士道の教訓に負ふものあるを感謝せずんばあらず。之に反し、日本人の性格に於ける彼の欠点短所は、其の責又た大いに武士道に存すとするは、すこぶる其当を得たり。

現代語訳

典雅で流麗な文章で日本人の心の働きをよく解き明かした小泉八雲を読めば、ただちにその心の働きが武士道の働きの一例であることが分かるでしょう。わが国の上下を通じて礼節を重んじることも武士道の遺産であり、世界がよく知るところで、これ以上くどく述べる必要はありません。いわゆる小さな男たちがたわまない体力を備え、また堅く忍んで勇敢であることは、日露戦争がよく証明したところです。多くの人が問います。この国民にまさって君に忠であり国を愛する念を持つ国があるか、と。そして私たちが傲然として、他にそれはない、と答えられるのは、武士道の教えに深く負うところがあることを感謝せずにはいられません。これに反して、日本人の性格における欠点や短所も、その責任がやはり大いに武士道にあるとするのは、まったく当を得ています。

解説

武士道の功が三つ挙げられます。礼節、堅忍、忠君愛国。そして直後に、欠点の責任もまた武士道にあると認めます。良いところだけを自分の伝統に帰し、悪いところは他に帰すという都合のよさを、自ら封じています。同じ原因が長所と短所を同時に生むという見方は、この本の全体を貫くもので、次の段で具体的な欠点が列挙されます。

この章句が説くこと

武士道功罪礼節忠君両面

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