武士道 / 第十四章 婦人の教育と地位・莫逆の交遊
靑年の日に於ける男女の間の隔障は、爲に友人が莫逆の交遊に加ふるに、小說的愛慕の交情を以てすること尠からざりき。盖し靑年男女間の此の隔障は、歐洲武士道又はアングロ、サクソンの國土に於けると異り、愛戀の念の自然の流に奔下するを抑止したりしな(非)り。彼のダモンのビシアスに於ける、又たアキリーズのバ(非トロクロスに於けるが如き交遊の美譚は、我國亦た其類を(株)枚學するに遑あらず武工道はダビテのジヨナサンに於るが如き友情の物語を傳ふ。されど、先には特り武士道の有したる教訓道德の、遂に武人の階級にのみ止まらざるに至りたるは、敢て異むに足らず。予は此れより直ちに筆を轉じて、國民全般に及ぼしたる武士道の感化の跡を討ねん。
新字:青年の日に於ける男女の間の隔障は、為に友人が莫逆の交遊に加ふるに、小説的愛慕の交情を以てすること尠からざりき。盖し青年男女間の此の隔障は、欧洲武士道又はアングロ、サクソンの国土に於けると異り、愛恋の念の自然の流に奔下するを抑止したりしな(非)り。彼のダモンのビシアスに於ける、又たアキリーズのバ(非トロクロスに於けるが如き交遊の美譚は、我国亦た其類を(株)枚学するに遑あらず武工道はダビテのジヨナサンに於るが如き友情の物語を伝ふ。されど、先には特り武士道の有したる教訓道徳の、遂に武人の階級にのみ止まらざるに至りたるは、敢て異むに足らず。予は此れより直ちに筆を転じて、国民全般に及ぼしたる武士道の感化の跡を討ねん。
書き下し
青年の日に於ける男女の間の隔障は、為に友人が莫逆の交遊に加ふるに、小説的愛慕の交情を以てすること尠からざりき。けだし青年男女間の此の隔障は、欧洲武士道、又はアングロサクソンの国土に於けると異り、愛恋の念の自然の流に奔下するを抑止したりしなり。彼のダモンのピシアスに於ける、又たアキレスのパトロクロスに於けるが如き交遊の美譚は、我国亦た其類を枚挙するに遑あらず。武士道はダビデのヨナタンに於けるが如き友情の物語を伝ふ。されど、先にはひとり武士道の有したる教訓道徳の、ついに武人の階級にのみ止まらざるに至りたるは、敢て怪しむに足らず。予は此れより直ちに筆を転じて、国民全般に及ぼしたる武士道の感化の跡を尋ねん。
現代語訳
青年時代の男女の間の隔たりのために、友人同士の親しい交わりに、小説めいた慕情が加わることが少なくありませんでした。思うに青年男女の間のこの隔たりは、ヨーロッパの騎士道やアングロサクソンの国々と異なり、恋の思いが自然の流れに従って奔り下るのを抑え止めたのです。あのダモンとピシアス、またアキレウスとパトロクロスのような交わりの美談は、わが国にも数え切れないほどあります。武士道はダビデとヨナタンのような友情の物語を伝えます。しかし、これまでひとり武士道が持っていた教訓と道徳が、ついに武人の階級だけにとどまらなくなったことは、あえて怪しむに足りません。私はこれからただちに筆を転じて、国民全般に及ぼした武士道の感化の跡を尋ねましょう。
解説
この章句が説くこと
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