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武士道 / 第十四章 婦人の教育と地位・善悪の分水点を義務に置く

然るに武士道の倫理に於ては、善惡の分水點を他に求め之を義務の邊に置いて、人を自己の神聖なる靈魂に結び、且又予の先きに述べたる五倫の道に於て、彼を他人の靈魂に約するものなり。此の五倫の中、吾人は獨り臣下たる一人と、君主たる他人との間に――存する倫道即ち忠義を擧げて之を說き、他は又た武士道の特質たるものに非らざりしを以て、予は唯だ機に觸れて、多少の言を加へたるのみ。此等は自然の愛情に基くものなるが故に、凡百の人類皆之を有し、唯だ其教訓とする所のものゝ誘起したる境遇により、彼此の特點の或は著明なるを致すことあり。而して語爰に及んで、予は又た男子間の友諠の、互に刎頸を約し、斷金を契りて、堅實切偲なるものありしを想起せずんばあらず。

新字:然るに武士道の倫理に於ては、善悪の分水点を他に求め之を義務の辺に置いて、人を自己の神聖なる霊魂に結び、且又予の先きに述べたる五倫の道に於て、彼を他人の霊魂に約するものなり。此の五倫の中、吾人は独り臣下たる一人と、君主たる他人との間に――存する倫道即ち忠義を挙げて之を説き、他は又た武士道の特質たるものに非らざりしを以て、予は唯だ機に触れて、多少の言を加へたるのみ。此等は自然の愛情に基くものなるが故に、凡百の人類皆之を有し、唯だ其教訓とする所のものゝ誘起したる境遇により、彼此の特点の或は著明なるを致すことあり。而して語爰に及んで、予は又た男子間の友諠の、互に刎頸を約し、断金を契りて、堅実切偲なるものありしを想起せずんばあらず。

書き下し

然るに武士道の倫理に於ては、善悪の分水点を他に求め、之を義務の辺に置いて、人を自己の神聖なる霊魂に結び、且又た予の先きに述べたる五倫の道に於て、彼を他人の霊魂に約するものなり。此の五倫の中、吾人はひとり臣下たる一人と、君主たる他人との間に存する倫道、即ち忠義を挙げて之を説き、他は又た武士道の特質たるものに非らざりしを以て、予はただ機に触れて多少の言を加へたるのみ。此等は自然の愛情に基くものなるが故に、凡百の人類皆之を有し、ただ其教訓とする所のものの誘起したる境遇により、彼此の特点の或は著明なるを致すことあり。而して語ここに及んで、予は又た男子間の友誼の、互に刎頸を約し、断金を契りて、堅実切偲なるものありしを想起せずんばあらず。

現代語訳

ところが武士道の倫理においては、善悪の分かれ目を他に求め、それを義務の側に置いて、人を自分の神聖な魂に結びつけ、さらに私が先に述べた五倫の道において、その人を他人の魂に結びつけるものです。この五倫のうち、私たちはただ臣下である一人と君主である他人との間にある倫理、すなわち忠義を挙げて説き、他は武士道の特質ではなかったので、私はただ折に触れて多少の言葉を加えただけです。これらは自然の愛情に基づくものですから、すべての人類がこれを持ち、ただその教えが引き起こした境遇によって、あちらこちらの特徴が際立つことがあります。そして話がここに及んで、私はまた男子の間の友情で、互いに首を刎ねられても悔いないと約束し、金をも断つ堅さを契った、堅実で切磋琢磨するものがあったことを思い起こさずにいられません。

解説

武士道の倫理の起点が確認されます。善悪の分かれ目を敬意ではなく義務に置く。そして五倫のうち忠義だけが武士道に固有で、他は人類共通だと整理します。教えが違えば、同じ自然の愛情でもどこが際立つかが変わる、という見方です。そして話題が男子間の友情に移ります。刎頸の交わり、断金の契り。次の段でその例が示されます。

この章句が説くこと

義務五倫忠義共通友情

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