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武訓 / 序・第2段

先生世を謝し給へる後、若干の遺編皆篋笥の裏に藏れて、いまだ世に行はれず。定直比年江府に在りて是を歎くこと久し。しば〱鄕邑の同志にせうそこし、先生の遺書を廣めんことをすゝむ。幸に近比同志のもとより此編を凈寫し、文訓とおなじく寄せ來りぬ。仍て京師に送り梓に登せて、是を四方と共にするものなり。かくする中に初學訓亦來れり、繼て出すべし。享保丙申季冬竹田直定書

新字:先生世を謝し給へる後、若干の遺編皆篋笥の裏に蔵れて、いまだ世に行はれず。定直比年江府に在りて是を嘆くこと久し。しば〱郷邑の同志にせうそこし、先生の遺書を広めんことをすゝむ。幸に近比同志のもとより此編を浄写し、文訓とおなじく寄せ来りぬ。仍て京師に送り梓に登せて、是を四方と共にするものなり。かくする中に初学訓亦来れり、継て出すべし。享保丙申季冬竹田直定書

書き下し

先生世を謝し給へる後、若干の遺編皆篋笥の裏に藏れて、いまだ世に行はれず。定直比年江府に在りて是を歎くこと久し。しば〱鄕邑の同志にせうそこし、先生の遺書を廣めんことをすゝむ。幸に近比同志のもとより此編を凈寫し、文訓とおなじく寄せ來りぬ。仍て京師に送り梓に登せて、是を四方と共にするものなり。かくする中に初學訓亦來れり、繼て出すべし。享保丙申季冬竹田直定書

現代語訳

先生が世を去られたのち、いくらかの遺稿はみな箱の底に蔵されたまま、まだ世に行われていません。定直は近年江戸にあって、これを嘆くことが久しく、たびたび郷里の同志に便りを送り、先生の遺書を広めることを勧めました。幸い近ごろ、同志のもとからこの編を清書したものが、文訓と同じく送られてきました。そこで京都に送って版木に彫らせ、これを広く世の人々と共にするものです。そうしているうちに初学訓も届きました。続いて出すつもりです。享保丙申の冬の末、竹田直定が記す。

解説

ここは序の後半にあたり、書き手は竹田直定です。益軒の没後、遺稿が箱の底に眠ったままだったこと、同志が清書した写しを京都で版にして世に出すことが、経緯として淡々と記されています。本文の教えというより、この書が世に出るまでの事情を伝える段です。「文訓とおなじく」とあるので、『武訓』は文の訓とそろえて出されたことが分かります。良い知見が書き手の手元で止まっていては、誰の役にも立たないという点は、いまの職場にも通じます。経験豊富な管理職の持つ判断の型も、言葉にして残し、渡してはじめて組織の力になります。

この章句が説くこと

遺稿出版同志知見の継承文訓武訓

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