墨子 / 公孟
曰:「樂以為樂也。」」子墨子曰:「子未我應也。今我問曰:「何故為室?」曰:「冬避寒焉,夏避暑焉,室以為男女之别焉則子告我為室之故矣。今我問曰:「何故為樂?」曰:「樂以為樂也。」是猶曰「何故為室」?曰「室以為室也」。」
新字:曰:「楽以為楽也。」」子墨子曰:「子未我応也。今我問曰:「何故為室?」曰:「冬避寒焉,夏避暑焉,室以為男女之別焉則子告我為室之故矣。今我問曰:「何故為楽?」曰:「楽以為楽也。」是猶曰「何故為室」?曰「室以為室也」。」
書き下し
曰く、「樂は以て樂しむと為すなり」と。子墨子曰く、「子は未だ我に應えざるなり。今、我れ問いて曰く、『何の故に室を為るや』と。曰く、『冬は寒を焉に避け、夏は暑を焉に避け、室は以て男女の别を為す』と。則ち子、我に室を為る故を告げたり。今、我れ問いて曰く、『何の故に樂を為すや』と。曰く、『樂は以て樂しむと為すなり』と。是れ猶お『何の故に室を為る』と曰いて、『室は以て室と為すなり』と曰うがごとし」と。
現代語訳
答えて言う。「音楽は楽しむためのものだ」。墨子が言った。「あなたは私に答えていない。いま私が問う。『なぜ家を作るのか』。答えて言う。『冬は寒さを避け、夏は暑さを避け、家は男女の別を作るためだ』。それなら私に家を作る理由を告げたことになる。いま私が問う。『なぜ音楽をするのか』。答えて言う。『音楽は楽しむためのものだ』。それは『なぜ家を作るのか』と問われて『家は家であるためだ』と答えるようなものだ」。
解説
理由を問われて、同じ言葉を言い換えただけで答えたつもりになる。その空回りを、家の例と並べて示します。家には、寒暑を避ける、男女の別を作るという外側の理由がある。音楽にそれが言えるか、というのが問いです。目的を問われて「それが目的だから」と答えていないか、点検に使える一段です。理由は、その物の外側にあるはずだということになります。
この章句が説くこと
理由目的問い説明反復
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『墨子』非樂上是の故に子墨子の樂を非とする所以の者は、大鍾・鳴鼓・琴瑟・竽笙の聲を以て樂しからずと為すに非ざるなり。刻鏤華文章の色を以て美ならずと為すに非ざるなり。犓豢・煎炙の味を以て甘からずと為すに非ざるなり。髙臺・厚榭・䆳野の居を以て安からずと為すに非ざるなり。身、其の安きを知り、口、其の甘きを知り、目、其の美を知り、耳、其の樂しきを知ると雖も、然れども上、之を度るに聖人の事に中らず、下、之を度るに萬民の利に中らず。是の故に子墨子曰く、樂を為すは非なり、と。
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『墨子』非樂上今、惟だ王公大人に在りて樂を説びて之を聴かば、即ち必ず蚤に朝し晏く退き、獄を聴き政を治むる能わず。是の故に國家亂れて社稷危うし。今、惟だ士君子に在りて樂を説びて之を聴かば、即ち必ず股肱の力を竭くし、其の思慮の智を亶くし、内は官府を治め、外は關市・山林・澤梁の利を收歛して、以て倉廪府庫を實たす能わず。是の故に倉廪府庫、實たず。今、惟だ農夫に在りて樂を説びて之を聴かば、即ち必ず蚤に出で暮に入り、耕稼樹藝して、多く升粟を聚むる能わず、足らず。今、惟だ婦人に在りて樂を説びて之を聴かば、即ち必ず夙に興き夜に寐ね、紡績織絍して、多く麻絲葛緒を治め、布縿を細くせず。是の故に布縿、興らず。曰く、孰か大人の聴治を為して國家の従事を廢するか。曰く、樂なり。是の故に子墨子曰く、樂を為すは非なり、と。
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『墨子』節用上其の衣裘を為るは何を以て為すか。冬は以て寒を圉ぎ、夏は以て暑を圉ぐ。凡そ衣裘を為るの道、冬は温かきを加え夏は凊しきを加うる者は芋䱉、加えざる者は之を去る。其の宫室を為るは何を以て為すか。冬は以て風寒を圉ぎ、夏は以て暑雨を圉ぐ。凡そ宮室を為るに、固きを加うる者は芋䱉、加えざる者は之を去る。
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『墨子』非樂上今、大鍾・鳴鼓・琴瑟・竽笙の聲、既已に具われり。大人、鏽然として奏して獨り之を聴かば、将に何の樂しみをか焉に得んや。其の説は將に必ず賤人と與にせんとす。君子と與にせず。之を聴くこと君子と之を聴かば、君子の聴治を廢す。賤人と之を聴かば、賤人の従事を廢す。今、王公大人、惟だ樂を為すこと毋くんばあらず。民の衣食の財を虧き奪いて以て樂を拊つこと、此くの如く多きなり。是の故に子墨子曰く、樂を為すは非なり、と。
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『墨子』節用中古者、人の始めて生まれて未だ宫室有らざる時、陵丘に因り穴を掘りて焉に處る。聖王、之を慮り、以為えらく、穴を掘るは、冬は以て風寒を辟く可し。夏に逮びては、下は潤濕し、上は熏烝して、民の氣を傷らんことを恐る、と。是に於て作りて宫室を為りて利す。然らば則ち宫室を為るの法は將に奈何せんとするや。子墨子言いて曰く、其の旁は以て風寒を圉ぐ可く、上は以て雪霜雨露を圉ぐ可く、其の中は蠲潔にして以て祭祀す可く、宫牆は以て男女の别を為すに足れば、則ち諸を止む。費を加えて民の利を加えざる者は、聖王、為さず。
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荀子・楽論篇凡そ姦聲(かんせい)人を感ずれば逆氣(ぎゃっき)之に應じ、逆氣象(しょう)を成して亂生ず。正聲人を感ずれば順氣(じゅんき)之に應じ、順氣象を成して治生ず。唱和に應有り、善惡相い象る。故に君子は其の去就(きょしゅう)する所を慎むなり。君子は鐘鼓(しょうこ)を以て志を道(みちび)き、琴瑟(きんしつ)を以て心を樂しましむ。動くに干戚を以てし、飾るに羽旄(うぼう)を以てし、從うるに磬管(けいかん)を以てす。故に其の清明なるは天に象(かたど)り、其の廣大なるは地に象り、其の俯仰周旋(しゅうせん)は四時に似たる有り。故に樂行われて志清く、禮脩まりて行い成り、耳目聰明(そうめい)にして、血氣和平、風を移し俗を易え、天下皆な寧(やす)く、美善相い樂しむ。故に曰く、樂なる者は、樂なり、と。君子は其の道を得るを樂しみ、小人は其の欲を得るを樂しむ。道を以て欲を制すれば、則ち樂しみて亂れず。欲を以て道を忘るれば、則ち惑いて樂しまず。故に樂なる者は、樂を道(みちび)く所以なり。金石絲竹(きんせきしちく)は、德を道く所以なり。樂行われて民方(ほう)に鄉(む)かう。故に樂なる者は、人を治むるの盛んなる者なり。而るに墨子之を非る。