墨子 / 節用中
古者人之始生未有宫室之時,因陵丘掘穴而處焉。聖王慮之,以為掘穴曰,冬可以辟風寒。逮夏,下潤濕,上熏烝,恐傷民之氣,於是作為宫室而利。然則為宫室之法將奈何哉?子墨子言曰:其旁可以圉風寒,上可以圉雪霜雨露,其中蠲潔,可以祭祀,宫牆足以為男女之别,則止諸。加費不加民利者,聖王弗為。
新字:古者人之始生未有宫室之時,因陵丘掘穴而処焉。聖王慮之,以為掘穴曰,冬可以辟風寒。逮夏,下潤湿,上熏烝,恐傷民之気,於是作為宫室而利。然則為宫室之法将奈何哉?子墨子言曰:其旁可以圉風寒,上可以圉雪霜雨露,其中蠲潔,可以祭祀,宫牆足以為男女之別,則止諸。加費不加民利者,聖王弗為。
書き下し
古者、人の始めて生まれて未だ宫室有らざる時、陵丘に因り穴を掘りて焉に處る。聖王、之を慮り、以為えらく、穴を掘るは、冬は以て風寒を辟く可し。夏に逮びては、下は潤濕し、上は熏烝して、民の氣を傷らんことを恐る、と。是に於て作りて宫室を為りて利す。然らば則ち宫室を為るの法は將に奈何せんとするや。子墨子言いて曰く、其の旁は以て風寒を圉ぐ可く、上は以て雪霜雨露を圉ぐ可く、其の中は蠲潔にして以て祭祀す可く、宫牆は以て男女の别を為すに足れば、則ち諸を止む。費を加えて民の利を加えざる者は、聖王、為さず。
現代語訳
むかし人が生まれたばかりで、まだ家屋の無かったころ、丘に寄って穴を掘って住んだ。聖王はこれを考えてこう思った。穴を掘れば冬は風と寒さを避けられる。しかし夏になると、下は湿り上は蒸れて、民の気を損なうのではないか。そこで家屋を作って利便を与えた。では家屋を作る基準はどうするのか。墨子が言った。周囲は風と寒さを防げ、上は雪・霜・雨・露を防げ、内部は清潔で祭祀ができ、塀は男女の別を保つに足りる。そこで止める。費用を加えて民の利を加えないことは、聖王は行わなかった。
解説
住居の基準が四つに整理されます。周囲、上、内部、そして塀。防風・防雨・清潔・区画という四機能で仕様を言い切り、そこで止める。辭過篇にも同じ内容がありますが、こちらは判定条件がより明快です。仕様を機能に分解して各項目に必要十分を設定する、という作り方は、いまの製品仕様書とほとんど同じ形をしています。
この章句が説くこと
仕様機能分解必要十分住居止める
関連する章句
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『墨子』辭過子墨子曰く、古の民、未だ宫を為るを知らざる時、陵阜に就きて以て居り、穴して處る。下、潤濕にして民を傷る。故に聖王、作りて宫室を為る。宫室を為るの法に曰く、髙さは以て潤濕を辟くるに足り、邊は以て風寒を圉ぐに足り、上は以て雪霜雨露を待つに足り、宫牆の髙さは、以て男女の禮を别つに足る。謹んで此に止まり、財を費やし力を勞して利を加えざる者は、為さざるなり。是の故に聖王の宫室を作り為るは、生に使するにして、以て觀樂を為さざるなり。衣服・帯履を作り為るは、身に便なるにして、以て辟怪を為さざるなり。故に身に節し、民に誨う。是を以て天下の民、得て治む可く、財用、得て足る可し。今の主に當たりては、其の宫室を為るや則ち此と異なれり。必ず厚く百姓に作斂し、暴かに民の衣食の財を奪いて、以て宫室・臺榭・曲直の望、青黄刻鏤の飾りを為る。宫室を為ること此くの若し。故に左右皆な之に法象す。是を以て其の財、以て凶饑を待ち孤寡を賑わすに足らず。故に國貧しくして民治め難きなり。君、實に天下の治を欲して其の亂を惡まば、當に宫室を為るは節せざる可からず。
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『墨子』節用上其の衣裘を為るは何を以て為すか。冬は以て寒を圉ぎ、夏は以て暑を圉ぐ。凡そ衣裘を為るの道、冬は温かきを加え夏は凊しきを加うる者は芋䱉、加えざる者は之を去る。其の宫室を為るは何を以て為すか。冬は以て風寒を圉ぎ、夏は以て暑雨を圉ぐ。凡そ宮室を為るに、固きを加うる者は芋䱉、加えざる者は之を去る。
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『墨子』節用中古者、聖王、制して衣服の法を為りて曰く、「冬は紺緅の衣を服て輕くして且つ暖かく、夏は絺綌の衣を服て輕くして且つ凊しければ、則ち諸を止む」と。費を加えて民の利に加えざる者は、聖王、為さず。
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『墨子』節用中是の故に古者、聖王、制して節用の法を為りて曰く、「凡そ天下の羣百工、輪・車・鞼・匏・陶・冶・梓・匠は、各おの其の能くする所に從事せしむ」と。曰く、「凡そ以て民用に奉給するに足る諸れは、費を加えて民の利を加えざれば則ち止む」と。
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『墨子』節用中古者、聖王、猛禽狡獸の人を暴し民を害するを為して、是に於て民に教うるに兵を以て行かしむ。日々に劍を帯び、刺せば則ち入り、擊てば則ち斷ち、旁より擊ちても折れず。此れ劍の利なり。甲は衣と為れば則ち輕くして且つ利く、動けば則ち兵、且つ從う。此れ甲の利なり。車は服重致逺を為し、之に乗れば則ち安く、之を引けば則ち利く、安くして以て人を傷らず、利くして以て速やかに至る。此れ車の利なり。古者、聖王、大川廣谷の濟る可からざるを為して、是に於て制して舟楫を為り、以て之を將るに足れば則ち止む。上なる者、三公諸侯の至ると雖も、舟楫は易えず、津人は飾らず。此れ舟の利なり。
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『墨子』辭過古の民、未だ衣服を為るを知らざる時、皮を衣、茭を帶び、冬は則ち輕からずして温かならず、夏は則ち輕からずして凊しからず。聖王、以て人の情に中らずと為す。故に婦人に誨えて絲麻を治め役し、布絹を捆ちて、以て民の衣を為らしむ。衣服を為るの法は、冬夏には則ち練帛の飾り、以て温かにして且つ清きを為すに足り、謹んで此に止まる。故に聖人の衣服を為るは、身體に適い肌膚に和して足れりとし、耳目を榮えしめて愚民に觀せしむるに非ざるなり。是の時に當たりて、堅車良馬も貴ぶを知らざるなり、刻鏤文采も喜ぶを知らざるなり。何となれば則ち、其の道く所、然らしむればなり。故に民の衣食の財、家、以て旱水凶饑を待つに足る者は、何ぞや。其の自ら養う所以の情を得て、外に感ぜざればなり。是を以て其の民は儉にして治め易く、其の君は財を用うること節にして贍らし易きなり。府庫は實ち滿ち、以て不然を待つに足る。兵革は頓れず、士民は勞れず、以て不服を征するに足る。故に霸王の業、天下に行う可し。