墨子 / 貴義
子墨子北之齊,遇日者。日者曰:「帝以今日殺黒龍於北方,而先生之色黑,不可以北。」子墨子不聴,遂北而反焉。日者曰:「我謂先生不可以北。」子墨子曰:「南之人不得北,北之人不得南,其色有黑者,有白者,何故皆不遂也?且帝以甲乙殺青龍於東方,以丙丁殺赤龍於南方,以庚辛殺白龍於西方,以壬癸殺黑龍於北方,若用子之言,則是禁下行者也。是圍心而虚天下也,子之言不可用也。」
新字:子墨子北之斉,遇日者。日者曰:「帝以今日殺黒竜於北方,而先生之色黒,不可以北。」子墨子不聴,遂北而反焉。日者曰:「我謂先生不可以北。」子墨子曰:「南之人不得北,北之人不得南,其色有黒者,有白者,何故皆不遂也?且帝以甲乙殺青竜於東方,以丙丁殺赤竜於南方,以庚辛殺白竜於西方,以壬癸殺黒竜於北方,若用子之言,則是禁下行者也。是囲心而虚天下也,子之言不可用也。」
書き下し
子墨子、北のかた齊に之き、日者に遇う。日者曰く、「帝、今日を以て黒龍を北方に殺す。而して先生の色は黑し。以て北すべからず」と。子墨子、聴かず、遂に北して反る。日者曰く、「我れ、先生に以て北すべからずと謂えり」と。子墨子曰く、「南の人は北するを得ず、北の人は南するを得ざるか。其の色に黑き者有り、白き者有り。何の故に皆な遂げざるや。且つ帝、甲乙を以て青龍を東方に殺し、丙丁を以て赤龍を南方に殺し、庚辛を以て白龍を西方に殺し、壬癸を以て黑龍を北方に殺す。若し子の言を用いば、則ち是れ下の行く者を禁ずるなり。是れ心を圍みて天下を虚しくするなり。子の言は用う可からざるなり」と。
現代語訳
墨子が北の斉へ行こうとして、占い師に出会った。占い師が言った。「天帝は今日、北方で黒い龍を殺します。先生の顔色は黒い。北へ行ってはいけません」。墨子は聞かずに北へ行き、引き返してきた。占い師が言った。「私は先生に北へ行ってはいけないと申し上げた」。墨子が言った。「南の人は北へ行けず、北の人は南へ行けないのか。人の顔色には黒い者も白い者もいる。どうしてみな行き着けないのか。そのうえ天帝は甲乙の日に東方で青い龍を殺し、丙丁の日に南方で赤い龍を殺し、庚辛の日に西方で白い龍を殺し、壬癸の日に北方で黒い龍を殺すという。あなたの言葉に従えば、それは下々の者が行き来するのを禁じることになる。これは心を囲い込んで天下を空にすることだ。あなたの言葉は用いられない」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『墨子』貴義子墨子、人を衛に仕えしむ。仕うる所の者、至りて反る。子墨子曰く、「何の故に反るや」と。對えて曰く、「我れと言いて審らかならず。『女を待つに千盆を以てせん』と曰いて、我に五百盆を授く。故に之を去るなり」と。子墨子曰く、「子に授くること千盆を過ぎば、則ち子、之を去らんか」と。對えて曰く、「去らじ」と。子墨子曰く、「然らば則ち其の審らかならざるが為に非ず、其の寡なきが為なり」と。
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『墨子』貴義子墨子、南のかた楚に游び、惠王に獻ず。惠王、老を以て辭し、穆賀をして子墨子に見えしむ。子墨子、穆賀に説く。穆賀、大いに説び、子墨子に謂いて曰く、「子の言は則ち誠に善し。而れども君王は天下の大王なり。乃ち『賤人の為す所』と曰いて用いざること毋からんや」と。子墨子曰く、「唯だ其の行う可きのみ。譬えば藥の然るが若し。草の本なるも、天子、之を食らいて以て其の疾を順す。豈に『一草の本なり』と曰いて食らわざらんや。今、農夫、其の税を大人に入る。大人、酒醴粢盛を為りて、以て上帝鬼神を祭る。豈に『賤人の為す所』と曰いて享せざらんや。故に賤人と雖も、上は之を農に比し、下は之を藥に比す。曽ち一草の本に若かざらんや」と。
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『墨子』天志中今、天下の人曰く、「當に天子の諸侯より貴く、諸侯の大夫より貴きが若きは、髙明にして之を知る。然れども吾れ未だ天の天子より貴く且つ知なるを知らず」と。子墨子曰く、「吾が天の天子より貴く且つ知なるを知る所以の者、有り。曰く、天子、善を為さば、天、能く之を賞し、天子、暴を為さば、天、能く之を罰す。天子に疾病禍祟有らば、必ず齋戒沐浴し、潔く酒醴粢盛を為りて、以て天鬼を祭祀すれば、則ち天、能く之を除去す。然れども吾れ未だ天の福を天子に祈るを知らざるなり。此れ吾が天の天子より貴く且つ知なるを知る所以の者なり。此に止まるのみならず、又た先王の書、天を訓えて明らかに解けざるの道を以て之を知るなり。曰く、「明哲なるは維れ天、君に臨みて下し出だす」と。則ち此れ天の天子より貴く且つ知なるを語る。知らず、亦た夫の天より貴く知なる者有らんや。曰く、天を貴しと為し、天を知と為すのみ。然らば則ち義は果たして天自り出づ」と。
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『墨子』天志中是の故に子墨子曰く、「今、天下の君子、中實に將に道に遵い民を利せんと欲し、本より仁義の本を察せば、天の意、慎まざる可からざるなり」と。既に天の意を以て慎まざる可からずと為し已わる。然らば則ち天は將に何を欲し何を憎まんとするや。子墨子曰く、「天の意は、大國の小國を攻むるを欲せざるなり、大家の小家を亂すを欲せざるなり、强の寡を暴い、詐の愚を謀り、貴の賤に傲るを欲せざるなり。此れ天の欲せざる所なり。
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『墨子』貴義子墨子、南のかた遊びて衛に使いす。關中に書を載すること甚だ多し。唐子、見て之を怪しみて曰く、「吾が夫子、公尚過に教えて曰く、『曲直を揣るのみ』と。今、夫子、書を載すること甚だ多し、何ぞ有らんや」と。子墨子曰く、「昔者、周公旦、朝に書百篇を讀み、夕に七十士を見る。故に周公旦、天子を佐相し、其の脩、今に至る。翟、上は君上の事無く、下は耕農の難無し。吾れ安んぞ敢えて此を廢せんや。翟、之を聞く、歸を同じくするの物、信に誤る者有り。然り而して民の聴、鈞しからず。是を以て書多きなり。今、過の心の若き者は、數しば精微に逆う。歸を同じくするの物、既に已に其の要を知れり。是を以て教うるに書を以てせざるなり。而るに子、何ぞ怪しまんや」と。
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『墨子』貴義子墨子、魯より齊に自く。即ち故人を過る。子墨子に謂いて曰く、「今、天下、義を為すこと莫し。子、獨り自ら苦しみて義を為す。子は已むに若かず」と。子墨子曰く、「今、人、此に有り。子十人有り、一人耕して九人處らば、則ち耕す者は以て益ます急ならざる可からず。何の故ぞ。則ち食う者衆くして耕す者寡なければなり。今、天下、義を為すこと莫くんば、則ち子は我を勸むべき者なり。何の故に我を止むるや」と。