墨子 / 非樂上
今人固與禽獸、麋鹿、蜚鳥、貞蟲異者也。今之禽獸、麋鹿、蜚鳥、貞蟲,因其羽毛以為衣裘,因其蹄蚤以為絝履因其水草以為飲食。故唯使雄不耕稼樹藝,雌亦不紡績織絍,衣食之財固已具矣。今人與此異者也,賴其力者生,不賴其力者不生。君子不强聴治,即刑政亂;賤人不强從事,即財用不足。
新字:今人固与禽獣、麋鹿、蜚鳥、貞虫異者也。今之禽獣、麋鹿、蜚鳥、貞虫,因其羽毛以為衣裘,因其蹄蚤以為絝履因其水草以為飲食。故唯使雄不耕稼樹芸,雌亦不紡績織絍,衣食之財固已具矣。今人与此異者也,頼其力者生,不頼其力者不生。君子不强聴治,即刑政乱;賤人不强従事,即財用不足。
書き下し
今、人は固より禽獸・麋鹿・蜚鳥・貞蟲と異なる者なり。今の禽獸・麋鹿・蜚鳥・貞蟲は、其の羽毛に因りて以て衣裘と為し、其の蹄蚤に因りて以て絝履と為し、其の水草に因りて以て飲食と為す。故に唯だ雄をして耕稼樹藝せざらしめ、雌も亦た紡績織絍せざらしむるも、衣食の財、固より已に具わる。今、人は此と異なる者なり。其の力に賴る者は生き、其の力に賴らざる者は生きず。君子、强いて聴治せざれば、即ち刑政亂る。賤人、强いて從事せざれば、即ち財用足らず。
現代語訳
そもそも人は鳥獣や鹿や飛ぶ鳥や虫とは違うものである。いまの鳥獣や鹿や飛ぶ鳥や虫は、その羽毛をそのまま衣とし、その蹄や爪をそのまま履物とし、その水と草をそのまま飲食とする。だから雄が耕さず、雌が織らなくても、衣食の財はもとから備わっている。いま人はこれと違う。自分の力を頼りにする者は生き、頼りにしない者は生きられない。君子が努めて政務を聞かなければ刑政は乱れる。庶民が努めて仕事に当たらなければ財用は足りない。
解説
『墨子』のなかで最も知られた人間観です。「賴其力者生、不賴其力者不生」——自分の力を頼りにする者は生き、頼りにしない者は生きられない。動物には自前の衣食があるが、人には無い。だから働かなければ生きられない。労働を義務としてではなく、人という生き物の条件として説明しています。非命篇の努力論の土台がここにあります。
この章句が説くこと
人間観労働条件力生きる
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