墨子 / 明鬼下
是故子墨子曰:今天下之王公大人士君子,中實将欲求興天下之利,除天下之害,當若鬼神之有也,将不可不尊眀也,聖王之道也。
新字:是故子墨子曰:今天下之王公大人士君子,中実将欲求興天下之利,除天下之害,当若鬼神之有也,将不可不尊明也,聖王之道也。
書き下し
是の故に子墨子曰く、今、天下の王公大人・士君子、中實に将に天下の利を興し、天下の害を除かんことを求め欲せば、當に鬼神の有るが若きは、将に尊び眀らかにせざる可からざるなり。聖王の道なり。
現代語訳
だから墨子が言った。いま天下の王公大人や士君子が、本当に天下の利を起こし天下の害を除こうと望むなら、鬼神が有るということは、尊び明らかにしないわけにいかない。これが聖王の道である。
解説
明鬼篇の結びです。他の篇と同じ定型で締めますが、この篇に限っては主張の内容よりも、どう論じたかのほうに読みどころがあります。判定基準を先に決め、多数目撃の記録を挙げ、複数の書で確かめ、相手の反論に応じて論拠を積み替え、最後に「たとえ無くても価値がある」と実利で補強する。証明の作法の見本市のような篇です。
この章句が説くこと
まとめ証明論拠作法明鬼
関連する章句
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『墨子』明鬼下今、無鬼を執る者曰く、「鬼神なる者は、固より有ること無し」と。旦暮に以て天下に教誨を為し、天下の衆を之れ疑わしめ、天下の衆をして皆な鬼神の有無の别に疑惑せしむ。是を以て天下亂る。是の故に子墨子曰く、今、天下の王公大人・士君子、實に将に天下の利を興し、天下の害を除かんことを求め欲せば、故に當に鬼神の有ると無きとの别、以て将に此を眀察せざる可からざる者と為すべきなり。既に鬼神の有無の别を以て察せざる可からずと為し已わる。然らば則ち吾れ此を眀察するを為すに、其の説、将に奈何にして可ならんとするや。子墨子曰く、是れ天下の以て有ると無きとを察知する所の道なる者と、必ず衆の耳目の實を以て有無を知るを儀と為す者なり。請に之を聞き之を見るに惑わば、則ち必ず以て無しと為さん。是くの若くんば何ぞ嘗みに一鄉一里に入りて之を問わざる。古より以て今に及ぶまで、生民より以來の者、亦た嘗て鬼神の物を見、鬼神の聲を聞くこと有らば、則ち鬼神、無しと謂う可けんや。若し聞く莫く見る莫くんば、則ち鬼神、有りと謂う可けんや。
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『墨子』明鬼下子墨子言いて曰く、昔の三代の聖王の既に没せしに逮び至りて、天下、義を失い、諸侯、力めて正す。是を以て夫の人の君臣上下と為る者の惠忠ならざる、父子弟兄の慈孝弟長貞良ならざる、正長の聴治に强めざる、賤人の從事に强めざるを存す。民の淫暴・寇盜・賊を為し、兵刃・毒藥・水火を以て、罪無き人を道路率徑に退け、人の車馬衣裘を奪いて以て自ら利する者、並び作こること此より始まる。是を以て天下亂る。此れ其の故は何を以て然るや。則ち皆な鬼神の有ると無きとの别を疑惑し、鬼神の能く賢に賞して暴を罰するに眀らかならざるを以てなり。今、若し天下の人をして借りに鬼神の能く賢に賞して暴を罰するを信ぜしめば、則ち夫れ天下、豈に亂れんや。
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『墨子』明鬼下是の故に子墨子曰く、嘗みに鬼神の能く賢に賞して暴を罰するが若きは、盖し夲より之を國家に施し、之を萬民に施すは、實に國家を治め萬民を利する所以の道なり。若し以て然らずと為さば、是を以て吏の官府を治むるの潔亷ならざる、男女の别無きを為す者を、鬼神、之を見る。民の滛暴・冦亂・盜賊を為し、兵刃・毒藥・水火を以て罪無き人を道路に退け、人の車馬衣裘を奪いて以て自ら利する者を、鬼神、之を現す有り。是を以て吏の官府を治むるに敢えて潔亷ならざらず、善を見て敢えて賞せざらず、暴を見て敢えて罪せざらず。民の滛暴・冦亂・盜賊を為し、兵刃・毒藥・水火を以て罪無き人を道路に退け、車馬衣裘を奪いて以て自ら利する者、此に由りて止む。是を以て放つこと莫し。幽間には、鬼神の眀に擬らえ、顯眀には、一人の上の誅罰を畏るる有り。是を以て天下治まる。
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『墨子』明鬼下若し鬼神をして誠に無からしめば、是れ乃ち其の酒醴粢盛を為る所の財を費やすのみ。夫れ之を費やすより、特だ之を汙壑に注ぎて之を棄つるにあらざるなり。内なる者は宗族、外なる者は鄉里、皆な具えて之を飲食するを得るが如し。鬼神をして誠に無からしむと雖も、此れ猶お以て驩を合わせ衆を聚め、親しみを鄉里に取る可し。今、無鬼を執る者、言いて曰く、「鬼神なる者は、固より誠に有ること無し。是を以て其の酒醴粢盛犧牲の財を共せず。吾れ乃ち今、其の酒醴粢盛犧牲の財を愛しむに非ざらんや。其の得る所の者は將に何ぞや」と。此れ上は聖王の書に逆らい、内は民人孝子の行いに逆らう。而して天下に上士為るは、此れ上士為る道に非ざるなり。是の故に子墨子曰く、今、吾が祭祀を為すや、直だ之を汙壑に注ぎて之を棄つるに非ざるなり。上は以て鬼の福に交わり、下は以て驩を合わせ衆を聚め、親しみを鄉里に取る。若し神有らば、則ち是れ吾が父母弟兄を得て之に食せしむるなり。則ち此れ豈に天下の利事に非ざらんや。
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『墨子』明鬼下古者、聖王、必ず鬼神を以て其の務めと為す。鬼神、厚し。又た後世の子孫の知る能わざるを恐る。故に之を竹帛に書し、後世の子孫に傳え遺す。咸な其の腐蠧絶滅して、後世の子孫、得て記さざるを恐る。故に之を盤盂に琢み、之を金石に鏤めて以て之を重んず。有た後世の子孫の敬莙する䏻わずして以て災を取るを恐る。故に先王の書、聖人は、一尺の帛、一篇の書にも、鬼神の有るを語り數うること、重ねて之を重ぬ。此れ其の故は何ぞ。則ち聖王、之を務むればなり。今、無鬼を執る者曰く、「鬼神なる者は、固より有ること無し」と。則ち此れ聖王の務めに反す。聖王の務めに反すれば、則ち君子の道を為す所以に非ざるなり。
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『墨子』明鬼下今、無鬼を執る者曰く、夫れ衆人の耳目の請、豈に以て疑を斷ずるに足らんや。奈何ぞ其れ天下に髙き君子と為らんと欲して、復た衆の耳目の請を信ずること有らんや、と。子曰く、若し衆の耳目の請を以て、以て信ずるに足らずと為し、以て疑を斷ぜずんば、識らず、昔者の三代の聖王、堯舜禹湯文武の若き者は、以て法と為すに足るか。故に此に於て中人以上より皆な曰く、「昔者の三代の聖王の若きは、以て法と為すに足れり」と。若し茍くも昔者の三代の聖王、以て法と為すに足らば、然らば則ち姑く嘗みに上、聖王の事を觀ん。昔者、武王の殷を攻め紂を誅するや、諸侯をして其の祭を分かたしめて曰く、「親しき者をして内祀を受けしめ、疏き者をして外祀を受けしめよ」と。故に武王は必ず鬼神を以て有りと為す。是の故に殷を攻め紂を誅するに、諸侯をして其の祭を分かたしむ。若し鬼神、有ること無くんば、則ち武王、何ぞ祭を分かたんや。惟だ武王の事のみ然りと為すに非ざるなり。故に聖王、其の賞するや必ず祖に於てし、其の僇するや必ず社に於てす。祖に賞するは何ぞや。分の均しきを告ぐるなり。社に僇するは何ぞや。聴の中るを告ぐるなり。