墨子 / 明鬼下
古者聖王必以鬼神為其務鬼神厚矣。又恐後世子孫不能知也,故書之竹帛,傳遺後世子孫。咸恐其腐蠧絶滅,後世子孫不得而記,故琢之盤盂、鏤之金石以重之。有恐後世子孫不䏻敬莙以取災故先王之書,聖人,一尺之帛,一篇之書,語數鬼神之有也,重有重之。此其故何?則聖王務之。今執無鬼者曰:「鬼神者,固無有。」則此反聖王之務。反聖王之務,則非所以為君子之道也。
新字:古者聖王必以鬼神為其務鬼神厚矣。又恐後世子孫不能知也,故書之竹帛,伝遺後世子孫。咸恐其腐蠹絶滅,後世子孫不得而記,故琢之盤盂、鏤之金石以重之。有恐後世子孫不䏻敬莙以取災故先王之書,聖人,一尺之帛,一篇之書,語数鬼神之有也,重有重之。此其故何?則聖王務之。今執無鬼者曰:「鬼神者,固無有。」則此反聖王之務。反聖王之務,則非所以為君子之道也。
書き下し
古者、聖王、必ず鬼神を以て其の務めと為す。鬼神、厚し。又た後世の子孫の知る能わざるを恐る。故に之を竹帛に書し、後世の子孫に傳え遺す。咸な其の腐蠧絶滅して、後世の子孫、得て記さざるを恐る。故に之を盤盂に琢み、之を金石に鏤めて以て之を重んず。有た後世の子孫の敬莙する䏻わずして以て災を取るを恐る。故に先王の書、聖人は、一尺の帛、一篇の書にも、鬼神の有るを語り數うること、重ねて之を重ぬ。此れ其の故は何ぞ。則ち聖王、之を務むればなり。今、無鬼を執る者曰く、「鬼神なる者は、固より有ること無し」と。則ち此れ聖王の務めに反す。聖王の務めに反すれば、則ち君子の道を為す所以に非ざるなり。
現代語訳
むかしの聖王は必ず鬼神を務めとした。鬼神への扱いは厚かった。そのうえ後世の子孫が知ることができなくなるのを恐れた。だからそれを竹簡と絹布に書き、後世の子孫に伝え残した。それも腐り虫に食われて消え、後世の子孫が記録できなくなるのを恐れた。だから盤や盂に彫り、金石に刻んで重ねて残した。さらに後世の子孫が敬うことができずに災いを招くのを恐れた。だから先王の書も聖人も、一尺の絹、一篇の書にも、鬼神が有ることを語り数えて、重ねて重ねた。それはなぜか。聖王がそれを務めとしたからである。いま鬼神は無いと主張する者は「鬼神というものは、そもそも存在しない」と言う。それは聖王の務めに反する。聖王の務めに反するなら、君子の道を行う手立てではない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『墨子』貴義子墨子曰く、古の聖王、其の道を後世に傳えんと欲す。是の故に之を竹帛に書し、之を金石に鏤み、後世の子孫に傳え遺す。後世の子孫の之を法とせんことを欲すればなり。今、先王の遺を聞きて為さざるは、是れ先王の傳を廢するなり。
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『墨子』明鬼下祖に賞するは何ぞや。分命の均しきを言うなり。社に僇するは何ぞや。獄を聴くの事を言うなり。故に古の聖王、必ず鬼神を以て賢に賞して暴を罰すと為す。是の故に賞は必ず祖に於てし、僇は必ず社に於てす。此れ吾が夏書の鬼を知る所以なり。故に尚書、夏書、其の次は商周の書、鬼神の有るを語り數うること、重ねて之を重ぬ。此れ其の故は何ぞや。則ち聖王、之を務むればなり。若の書の説を以て之を觀れば、則ち鬼神の有ること、豈に疑う可けんや。古に于て曰く、吉日丁卯、周、社方を代祝し、社考に嵗して、以て年夀を延ぶ、と。若し鬼神無くんば、彼れ豈に年夀を延ぶる所有らんや。
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『墨子』明鬼下是の故に子墨子曰く、今、天下の王公大人・士君子、中實に将に天下の利を興し、天下の害を除かんことを求め欲せば、當に鬼神の有るが若きは、将に尊び眀らかにせざる可からざるなり。聖王の道なり。
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『墨子』明鬼下今、無鬼を執る者曰く、夫れ衆人の耳目の請、豈に以て疑を斷ずるに足らんや。奈何ぞ其れ天下に髙き君子と為らんと欲して、復た衆の耳目の請を信ずること有らんや、と。子曰く、若し衆の耳目の請を以て、以て信ずるに足らずと為し、以て疑を斷ぜずんば、識らず、昔者の三代の聖王、堯舜禹湯文武の若き者は、以て法と為すに足るか。故に此に於て中人以上より皆な曰く、「昔者の三代の聖王の若きは、以て法と為すに足れり」と。若し茍くも昔者の三代の聖王、以て法と為すに足らば、然らば則ち姑く嘗みに上、聖王の事を觀ん。昔者、武王の殷を攻め紂を誅するや、諸侯をして其の祭を分かたしめて曰く、「親しき者をして内祀を受けしめ、疏き者をして外祀を受けしめよ」と。故に武王は必ず鬼神を以て有りと為す。是の故に殷を攻め紂を誅するに、諸侯をして其の祭を分かたしむ。若し鬼神、有ること無くんば、則ち武王、何ぞ祭を分かたんや。惟だ武王の事のみ然りと為すに非ざるなり。故に聖王、其の賞するや必ず祖に於てし、其の僇するや必ず社に於てす。祖に賞するは何ぞや。分の均しきを告ぐるなり。社に僇するは何ぞや。聴の中るを告ぐるなり。
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『墨子』明鬼下子墨子言いて曰く、昔の三代の聖王の既に没せしに逮び至りて、天下、義を失い、諸侯、力めて正す。是を以て夫の人の君臣上下と為る者の惠忠ならざる、父子弟兄の慈孝弟長貞良ならざる、正長の聴治に强めざる、賤人の從事に强めざるを存す。民の淫暴・寇盜・賊を為し、兵刃・毒藥・水火を以て、罪無き人を道路率徑に退け、人の車馬衣裘を奪いて以て自ら利する者、並び作こること此より始まる。是を以て天下亂る。此れ其の故は何を以て然るや。則ち皆な鬼神の有ると無きとの别を疑惑し、鬼神の能く賢に賞して暴を罰するに眀らかならざるを以てなり。今、若し天下の人をして借りに鬼神の能く賢に賞して暴を罰するを信ぜしめば、則ち夫れ天下、豈に亂れんや。
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『墨子』尚同中故に古者、聖王は天鬼の欲する所を明らかにして、天鬼の憎む所を避け、以て天下の利を興し、天下の害を除かんことを求む。是を以て天下の萬民を率いて、齊戒沐浴し、潔く酒醴粢盛を為りて、以て天鬼を祭祀す。其の鬼神に事うるや、酒醴粢盛は敢えて蠲潔ならざらず、犧牲は敢えて腯肥ならざらず、珪璧幣帛は敢えて度量に中らざらず、春秋の祭祀は敢えて時期を失わず、獄を聴くには敢えて中らざらず、財を分かつには敢えて均しからざらず、居處には敢えて怠慢ならず。