墨子 / 明鬼下
且《商書》獨鬼,而《夏書》不鬼,則未足以為法也。然則姑嘗止觀乎《夏書》,《禹誓》曰:「大戰于甘,王乃命左右六人,下聴誓于中軍,曰:有扈氏威侮五行,怠棄三正,天用勦絶其命。有曰:日中,今予與有扈氏争一日之命,且爾卿大夫庶人,予非爾田野葆士之欲也,予共行天之罰也。左不共于左,右不共于右,若不共命。御非爾馬之政,若不共命。是以賞于祖,而僇扵社。」
新字:且《商書》独鬼,而《夏書》不鬼,則未足以為法也。然則姑嘗止観乎《夏書》,《禹誓》曰:「大戦于甘,王乃命左右六人,下聴誓于中軍,曰:有扈氏威侮五行,怠棄三正,天用勦絶其命。有曰:日中,今予与有扈氏争一日之命,且爾卿大夫庶人,予非爾田野葆士之欲也,予共行天之罰也。左不共于左,右不共于右,若不共命。御非爾馬之政,若不共命。是以賞于祖,而僇扵社。」
書き下し
且つ商書のみ獨り鬼にして、夏書は鬼ならずんば、則ち未だ以て法と為すに足らざるなり。然らば則ち姑く嘗みに止まりて夏書を觀ん。禹誓に曰く、「大いに甘に戰う。王、乃ち左右の六人に命じ、下りて中軍に誓を聴かしめて曰く、有扈氏、五行を威侮し、三正を怠り棄つ。天、用て其の命を勦絶す、と。有た曰く、日中なり。今、予れ有扈氏と一日の命を争う。且つ爾の卿大夫庶人よ、予れ爾の田野葆士を欲するに非ざるなり。予れ共に天の罰を行うなり。左、左に共せず、右、右に共せざれば、若ち命に共せざるなり。御、爾の馬の政に非ざれば、若ち命に共せざるなり、と。是を以て祖に賞して、社に僇す」と。
現代語訳
『商書』だけに鬼神があって『夏書』に無いなら、手本とするには足りない。ではしばらく『夏書』を見てみよう。『禹誓』にいう。「甘の地で大いに戦った。王は左右の六人に命じ、下って中軍で誓いを聞かせてこう言った。有扈氏は五行を軽んじ侮り、三正を怠って捨てた。天はそれによってその命を絶つ、と。またこう言った。真昼である。いま私は有扈氏と一日の命運を争う。卿大夫や庶人よ、私はお前たちの田野や領地を欲しがっているのではない。私はともに天の罰を行うのだ。左の者が左の務めを果たさなければ、命に従わないことになる。右の者が右の務めを果たさなければ、命に従わないことになる。御者が馬の扱いを果たさなければ、命に従わないことになる、と。そこで祖廟で賞し、社で罰した」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『墨子』明鬼下且つ周書のみ獨り鬼にして、商書は鬼ならずんば、則ち未だ以て法と為すに足らざるなり。然らば則ち姑く嘗みに止まりて商書を觀ん。曰く、「嗚呼、古者、有夏、方に未だ禍有らざるの時、百獸貞蟲、允に飛鳥に及ぶまで、比方せざる莫し。矧んや人面に住まる、胡ぞ敢えて心を異にせんや。山川鬼神も、亦た敢えて寜んぜざる莫し。若し共に允なれば、天下の合、下土の葆に住まらん」と。山川鬼神の敢えて寜んぜざる莫き所以の者を察するに、以て禹を佐け謀ればなり。此れ吾が周商の鬼を知る所以なり。
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『墨子』明鬼下祖に賞するは何ぞや。分命の均しきを言うなり。社に僇するは何ぞや。獄を聴くの事を言うなり。故に古の聖王、必ず鬼神を以て賢に賞して暴を罰すと為す。是の故に賞は必ず祖に於てし、僇は必ず社に於てす。此れ吾が夏書の鬼を知る所以なり。故に尚書、夏書、其の次は商周の書、鬼神の有るを語り數うること、重ねて之を重ぬ。此れ其の故は何ぞや。則ち聖王、之を務むればなり。若の書の説を以て之を觀れば、則ち鬼神の有ること、豈に疑う可けんや。古に于て曰く、吉日丁卯、周、社方を代祝し、社考に嵗して、以て年夀を延ぶ、と。若し鬼神無くんば、彼れ豈に年夀を延ぶる所有らんや。
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『墨子』明鬼下今、無鬼を執る者曰く、夫れ衆人の耳目の請、豈に以て疑を斷ずるに足らんや。奈何ぞ其れ天下に髙き君子と為らんと欲して、復た衆の耳目の請を信ずること有らんや、と。子曰く、若し衆の耳目の請を以て、以て信ずるに足らずと為し、以て疑を斷ぜずんば、識らず、昔者の三代の聖王、堯舜禹湯文武の若き者は、以て法と為すに足るか。故に此に於て中人以上より皆な曰く、「昔者の三代の聖王の若きは、以て法と為すに足れり」と。若し茍くも昔者の三代の聖王、以て法と為すに足らば、然らば則ち姑く嘗みに上、聖王の事を觀ん。昔者、武王の殷を攻め紂を誅するや、諸侯をして其の祭を分かたしめて曰く、「親しき者をして内祀を受けしめ、疏き者をして外祀を受けしめよ」と。故に武王は必ず鬼神を以て有りと為す。是の故に殷を攻め紂を誅するに、諸侯をして其の祭を分かたしむ。若し鬼神、有ること無くんば、則ち武王、何ぞ祭を分かたんや。惟だ武王の事のみ然りと為すに非ざるなり。故に聖王、其の賞するや必ず祖に於てし、其の僇するや必ず社に於てす。祖に賞するは何ぞや。分の均しきを告ぐるなり。社に僇するは何ぞや。聴の中るを告ぐるなり。
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『墨子』明鬼下故に鬼神の眀は、幽間・廣澤・山林・深谷と為す可からず。鬼神の眀、必ず之を知る。鬼神の罰は、富貴衆強・勇力强武・堅甲利兵と為す可からず。鬼神の罰、必ず之に勝つ。若し以て然らずと為さば、昔者、夏王桀、貴きこと天子と為り、富は天下を有ちながら、上は天を詬り鬼を侮り、下は天下の萬民を殃い傲る。上帝を祥かにして元山帝行を伐つ。故に此に於て天、乃ち湯をして眀罰に至らしむ。湯、車九兩、鳥陣雁行を以てす。湯、大贊に乗り、遂に下衆人の遂を犯し、王、手ずから推哆・大戲を禽らう。故に昔、夏王桀、貴きこと天子と為り、富は天下を有ち、勇有るの推哆・大戲、主として兕虎を别ち、指し畫きて人を殺す有り。人民の衆きこと兆億、侯として厥の澤陵に盈つ。然れども此を以て鬼神の誅を圉ぐ能わず。此れ吾が謂う所の鬼神の罰は、富貴衆强・勇力强武・堅甲利兵と為す可からずとは、此れなり。
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『墨子』兼愛下且つ惟だ泰誓のみ然りと為すにあらず、禹誓と雖も即ち亦た猶お是のごときなり。禹曰く、「濟濟たる有衆、咸な朕が言を聴け。惟だ小子のみ敢えて亂を稱するを行うに非ず。蠢たる茲の有苗、天の罰を用う。若し予れ既に爾の羣を率い、羣諸に對して以て有苗を征せん」と。禹の有苗を征するや、富貴を重ね、福禄を干め、耳目を樂しましむるを求むるに非ざるなり。以て天下の利を興し、天下の害を除かんことを求むるなり。即ち此れ禹の兼なり。子墨子の謂う所の兼なる者と雖も、禹に於て求めたり。
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『墨子』非命中先王の書『仲虺之誥』に曰く、「我れ聞く、有夏の人、天命を矯め、命を下に布く。帝、式て是れを惡み、厥の師を用う」と。此れ夏王桀の有命を執るを語るなり。湯と仲虺、共に之を非とす。先王の書『太誓』の言、然り。曰く、「紂、夷して之れ居り、而して上帝に事うるを肯んぜず、厥の先神を棄てて祀らざるなり。曰く『我が民に命有り、其の務めを僇すこと毋かれ』と。天も亦た棄て縦ちて葆せず」と。此れ紂の有命を執るを言うなり。武王、『太誓』を以て之を非とす。『三代』『不國』に之れ有り。曰く、「女、天の命有るを崇ぶこと毋かれ」と。『三』『不國』も亦た命の無きを言うなり。召公の『執令』に於いても然り。且つ、「敬しめや。天命無し。惟れ予二人にして、造言する無かれ。天より之を降すに自らず、哉に之を得たり」と。夏商の詩書に在りて曰く、「命なる者は、暴王、之を作す」と。且つ今、天下の士君子、将に是非利害の故を辯ぜんと欲せば、天命有りと當う者は、疾く非とせざる可からざるなり。有命を執る者、此れ天下の厚害なり。是の故に子墨子、之を非とするなり。