墨子 / 節用上
其為甲盾五兵何以為?以圉冦亂盜賊,若有冦亂盜賊,有甲盾五兵者勝,無有不勝,是故聖人作為甲盾五兵。凡為甲盾五兵,皆輕以利堅而難折者,芋䱉;不加者,去之。其為舟車何以為?車以行陵陸,舟以行川谷,以通四方之利。凡為舟車之道,加輕以利者,芋䱉;不加者,去之。凡其為此物也,無加用而為者,是故用財不費,民徳不勞,其興利多有去大人之好聚珠玉鳥獸犬馬,以益衣裳宫室甲盾五兵舟車之數,於數倍乎?若則不難故孰為難倍?惟人為難倍。
新字:其為甲盾五兵何以為?以圉寇乱盗賊,若有寇乱盗賊,有甲盾五兵者勝,無有不勝,是故聖人作為甲盾五兵。凡為甲盾五兵,皆軽以利堅而難折者,芋䱉;不加者,去之。其為舟車何以為?車以行陵陸,舟以行川谷,以通四方之利。凡為舟車之道,加軽以利者,芋䱉;不加者,去之。凡其為此物也,無加用而為者,是故用財不費,民徳不労,其興利多有去大人之好聚珠玉鳥獣犬馬,以益衣裳宫室甲盾五兵舟車之数,於数倍乎?若則不難故孰為難倍?惟人為難倍。
書き下し
其の甲盾五兵を為るは何を以て為すか。以て冦亂盜賊を圉ぐ。若し冦亂盜賊有らば、甲盾五兵有る者は勝ち、有ること無ければ勝たざる。是の故に聖人、作りて甲盾五兵を為る。凡そ甲盾五兵を為るは、皆な輕くして以て利く、堅くして折れ難き者は芋䱉、加えざる者は之を去る。其の舟車を為るは何を以て為すか。車は以て陵陸を行き、舟は以て川谷を行き、以て四方の利に通ず。凡そ舟車を為るの道、輕きを加えて以て利き者は芋䱉、加えざる者は之を去る。凡そ其の此の物を為すや、用を加えずして為す者無し。是の故に財を用うるに費えず、民の徳、勞せずして、其の利を興すこと多く、大人の珠玉・鳥獸・犬馬を好み聚むるを去りて、以て衣裳・宫室・甲盾五兵・舟車の數を益すこと有り。數倍に於てせんか。若くば則ち難からず。故に孰れをか倍し難しと為す。惟だ人のみ倍し難しと為す。
現代語訳
鎧・盾・五種の武器を作るのは何のためか。侵略・内乱・盗賊を防ぐためである。もし侵略や内乱や盗賊があれば、鎧・盾・武器のある者が勝ち、無ければ勝てない。だから聖人はそれらを作った。およそ鎧・盾・武器を作るにあたっては、軽くて扱いやすく、堅くて折れにくいものは採り、そうでないものは取り除く。舟や車を作るのは何のためか。車は丘や陸を行き、舟は川や谷を行き、四方の利に通じるためである。およそ舟や車を作るにあたっては、軽さを増して扱いやすいものは採り、そうでないものは取り除く。これらの物を作るにあたって、効用を加えないことをする例はなかった。だから財を使っても浪費にならず、民の力も疲れず、生む利が多く、上に立つ者が珠玉・鳥獣・犬馬を好んで集めるのをやめて、衣服・家屋・武具・舟車の数を増やすことができる。それで倍になるだろうか。それなら難しくない。では何が倍にしにくいのか。人だけが倍にしにくい。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『墨子』節用中古者、聖王、猛禽狡獸の人を暴し民を害するを為して、是に於て民に教うるに兵を以て行かしむ。日々に劍を帯び、刺せば則ち入り、擊てば則ち斷ち、旁より擊ちても折れず。此れ劍の利なり。甲は衣と為れば則ち輕くして且つ利く、動けば則ち兵、且つ從う。此れ甲の利なり。車は服重致逺を為し、之に乗れば則ち安く、之を引けば則ち利く、安くして以て人を傷らず、利くして以て速やかに至る。此れ車の利なり。古者、聖王、大川廣谷の濟る可からざるを為して、是に於て制して舟楫を為り、以て之を將るに足れば則ち止む。上なる者、三公諸侯の至ると雖も、舟楫は易えず、津人は飾らず。此れ舟の利なり。
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『墨子』節用上聖人、一國に政を為さば、一國、倍す可きなり。之を大にして天下に政を為さば、天下、倍す可きなり。其の之を倍するは、外に地を取るに非ざるなり。其の國家に因りて、其の無用を去れば、以て之を倍するに足る。聖王の政を為すや、其の令を發し事を興し、民を便にし財を用うるや、用を加えずして為す者無し。是の故に財を用うるに費えず、民の徳、勞せずして、其の利を興すこと多し。
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『墨子』辭過古の民、未だ舟車を為るを知らざる時、重任は移らず、逺道は至らず。故に聖王、作りて舟車を為り、以て民の事に便す。其の舟車を為るや、全固輕利にして、以て重きに任じ逺きに致す可し。其の財を用うること少くして、利を為すこと多し。是を以て民樂しみて之を利す。故に法令は急ならずして行われ、民は勞せずして上は用を足す。故に民之に歸す。今の王に當たりては、其の舟車を為ること此と異なれり。全固輕利は皆な已に具われるに、必ず厚く百姓に作斂し、以て舟車を飾る。車を飾るに文采を以てし、舟を飾るに刻鏤を以てす。女子は其の紡織を廢して文采を脩む、故に民寒し。男子は其の耕稼を離れて刻鏤を脩む、故に民饑う。人君の舟車を為すこと此くの若し。故に左右之に象る。是を以て其の民、饑寒並び至る。故に姦衺を為すこと多し。多ければ則ち刑罰深く、刑罰深ければ則ち國亂る。君、實に天下の治を欲して其の亂を惡まば、當に舟車を為すは節せざる可からず。
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『墨子』節用上其の衣裘を為るは何を以て為すか。冬は以て寒を圉ぎ、夏は以て暑を圉ぐ。凡そ衣裘を為るの道、冬は温かきを加え夏は凊しきを加うる者は芋䱉、加えざる者は之を去る。其の宫室を為るは何を以て為すか。冬は以て風寒を圉ぎ、夏は以て暑雨を圉ぐ。凡そ宮室を為るに、固きを加うる者は芋䱉、加えざる者は之を去る。
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『墨子』節用上今、天下の政を為す者、其の人を寡くする所以の道、多し。其の民を使うこと勞し、其の籍斂、厚く、民の財、足らず、凍餓して死する者、勝げて數う可からざるなり。且つ大人、唯だ師を興して以て鄰國を攻伐する毋くんばあらず。久しき者は年を終え、速やかなる者は數月なり。男女、久しく相い見ず。此れ人を寡くする所以の道なり。居處の安からず、飲食の時ならず、疾を作して病死する者と、侵して槖に就き、城を攻め野に戰いて死する者と有りて、勝げて數う可からず。此れ今の政を為す者の人を寡くする所以の道、數術にして起こるに非ざるか。聖人の政を為すは特に此れ無し。聖人の政を為すや、其の人を衆くする所以の道も亦た數術にして起こるか。故に子墨子曰く、無用の務めを去り、聖王の道を行うは、天下の大利なり。
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『墨子』非樂上今、王公大人、樂器を造為して以て事を國家に為すこと無しと雖も、直だ潦水を棓り、壤垣を折きて之を為すに非ざるなり。将に必ず厚く萬民に措斂して、以て大鍾・鳴鼓・琴瑟・竽笙の聲を為らんとす。之を譬うるに聖王の舟車を為るが若くんば、即ち我れ敢えて非とせざるなり。古者、聖王も亦た嘗て厚く萬民に措歛して、以て舟車を為る。既已に成れり。曰く、「吾れ将に惡許にか之を用いんとする」と。曰く、「舟は之を水に用い、車は之を陸に用う。君子は其の足を息わせ、小人は其の肩背を休む」と。故に萬民、財を出だし、齎して之を予え、敢えて以て慼恨と為さざる者は、何ぞや。其の反りて民の利に中るを以てなり。然らば則ち樂器の反りて民の利に中ること亦た此くの若くんば、即ち我れ敢えて非とせざるなり。然らば則ち當に樂器を用うべし。