墨子 / 辭過
古之民未知為舟車時,重任不移,逺道不至。故聖王作為舟車,以便民之事。其為舟車也,全固輕利,可以任重致逺。其為用財少,而為利多,是以民樂而利之。故法令不急而行,民不勞而上足用,故民歸之。當今之王其為舟車與此異矣。全固輕利皆已具,必厚作斂於百姓,以飾舟車,飾車以文采,飾舟以刻鏤。女子廢其紡織而脩文采,故民寒;男子離其耕稼而脩刻鏤,故民饑。人君為舟車若此,故左右象之。是以其民饑寒並至,故為姦衺。多則刑罰深,刑罰深則國亂。君實欲天下之治而惡其亂,當為舟車不可不節。
新字:古之民未知為舟車時,重任不移,遠道不至。故聖王作為舟車,以便民之事。其為舟車也,全固軽利,可以任重致遠。其為用財少,而為利多,是以民楽而利之。故法令不急而行,民不労而上足用,故民帰之。当今之王其為舟車与此異矣。全固軽利皆已具,必厚作斂於百姓,以飾舟車,飾車以文采,飾舟以刻鏤。女子廃其紡織而脩文采,故民寒;男子離其耕稼而脩刻鏤,故民饑。人君為舟車若此,故左右象之。是以其民饑寒並至,故為姦衺。多則刑罰深,刑罰深則国乱。君実欲天下之治而悪其乱,当為舟車不可不節。
書き下し
古の民、未だ舟車を為るを知らざる時、重任は移らず、逺道は至らず。故に聖王、作りて舟車を為り、以て民の事に便す。其の舟車を為るや、全固輕利にして、以て重きに任じ逺きに致す可し。其の財を用うること少くして、利を為すこと多し。是を以て民樂しみて之を利す。故に法令は急ならずして行われ、民は勞せずして上は用を足す。故に民之に歸す。今の王に當たりては、其の舟車を為ること此と異なれり。全固輕利は皆な已に具われるに、必ず厚く百姓に作斂し、以て舟車を飾る。車を飾るに文采を以てし、舟を飾るに刻鏤を以てす。女子は其の紡織を廢して文采を脩む、故に民寒し。男子は其の耕稼を離れて刻鏤を脩む、故に民饑う。人君の舟車を為すこと此くの若し。故に左右之に象る。是を以て其の民、饑寒並び至る。故に姦衺を為すこと多し。多ければ則ち刑罰深く、刑罰深ければ則ち國亂る。君、實に天下の治を欲して其の亂を惡まば、當に舟車を為すは節せざる可からず。
現代語訳
むかしの民がまだ舟や車を作ることを知らなかったころ、重い荷は運べず、遠い道には行き着けなかった。そこで聖王が舟と車を作り、民の仕事に役立てた。その舟車の作り方は、頑丈で軽くて使いやすく、重い荷を負って遠くへ行けるというものだった。財の使い方は少なく、生む利は多い。だから民は喜んでそれを利用した。だから法令は厳しくせずとも行われ、民は疲れず上は用を足りた。だから民が集まった。ところが今の王が舟車を作るのはこれと違う。頑丈で軽くて使いやすいものはもう揃っているのに、必ず民から重く取り立てて舟車を飾る。車は文様で飾り、舟は彫刻で飾る。女は機織りをやめて文様の仕事に回る、だから民は寒い。男は耕作を離れて彫刻の仕事に回る、だから民は飢える。君主の舟車がこうだから、側近もこれに倣う。だからその民は飢えと寒さが同時に来る。だから悪事を働く者が多くなる。多くなれば刑罰が重くなり、刑罰が重くなれば国は乱れる。君主が本当に天下が治まることを望み乱れることを憎むなら、舟車を作るのに節度が無くてはならない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『塩鉄論』散不足篇古者、椎車に柔無く、棧輿に植無し。其の後に及び、木軨は衣せず、長轂數幅、蒲薦苙蓋、蓋に漆絲の飾無し。大夫士は則ち單椱木具、盤韋柔革なり。常民は漆輿大軨蜀輪なり。今庶人の富者は銀黃華左搔、結綏韜杠す。中なる者は錯鑣塗采、珥靳飛軨なり。
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『宋名臣言行録』前集巻七・杜衍公嘗て門生に謂いて曰く、凡そ士君子、事を作し己を行うに、當に中道を履むべし。宜しく矯飾すべからず。矯飾、實に過ぐれば則ち偽に近しと。
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『塩鉄論』散不足篇古者、庶人の賤騎は繩もて控き、革鞮皮薦のみ。其の後に及び、革鞍牦もて成し、鐵鑣は飾らず。今富者は耳銀鑷䪉、黃金瑯勒、罽繡もて汗を弇い、華明鮮なり。中なる者は漆韋紹系、采畫暴幹なり。
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『淮南子』俶真訓百圍の木、斬りて犧尊と為し、之を鏤むに剞𠜾を以てし、之を雜うるに青黃を以てし、華藻鎛鮮、龍蛇虎豹、曲がりて文章を成す。然れども其の斷は溝中に在り。壹に犧尊と溝中の斷とを比ぶれば、則ち醜美間有り。然れども木の性を失うは、鈞しきなり。是の故に神越ゆる者は其の言華やかに、德蕩う者は其の行い偽なり。至精中に亡くして、言行外に觀わる。此れ身を以て物に役せらるるを免れず。夫れ趨舍行偽なる者は、精を外に求むるが為なり。精に湫盡有りて、行に窮極無ければ、則ち心を滑し神を濁して、其の本を惑亂す。其の守る所の者定まらずして、外は世俗の風に淫し、斷ずる所差跌する者にして、内は以て其の清明を濁す。是の故に躊躇して以て終わり、須臾も恬澹なるを得ず。
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『墨子』辭過子墨子曰く、古の民、未だ宫を為るを知らざる時、陵阜に就きて以て居り、穴して處る。下、潤濕にして民を傷る。故に聖王、作りて宫室を為る。宫室を為るの法に曰く、髙さは以て潤濕を辟くるに足り、邊は以て風寒を圉ぐに足り、上は以て雪霜雨露を待つに足り、宫牆の髙さは、以て男女の禮を别つに足る。謹んで此に止まり、財を費やし力を勞して利を加えざる者は、為さざるなり。是の故に聖王の宫室を作り為るは、生に使するにして、以て觀樂を為さざるなり。衣服・帯履を作り為るは、身に便なるにして、以て辟怪を為さざるなり。故に身に節し、民に誨う。是を以て天下の民、得て治む可く、財用、得て足る可し。今の主に當たりては、其の宫室を為るや則ち此と異なれり。必ず厚く百姓に作斂し、暴かに民の衣食の財を奪いて、以て宫室・臺榭・曲直の望、青黄刻鏤の飾りを為る。宫室を為ること此くの若し。故に左右皆な之に法象す。是を以て其の財、以て凶饑を待ち孤寡を賑わすに足らず。故に國貧しくして民治め難きなり。君、實に天下の治を欲して其の亂を惡まば、當に宫室を為るは節せざる可からず。
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『墨子』辭過古の民、未だ衣服を為るを知らざる時、皮を衣、茭を帶び、冬は則ち輕からずして温かならず、夏は則ち輕からずして凊しからず。聖王、以て人の情に中らずと為す。故に婦人に誨えて絲麻を治め役し、布絹を捆ちて、以て民の衣を為らしむ。衣服を為るの法は、冬夏には則ち練帛の飾り、以て温かにして且つ清きを為すに足り、謹んで此に止まる。故に聖人の衣服を為るは、身體に適い肌膚に和して足れりとし、耳目を榮えしめて愚民に觀せしむるに非ざるなり。是の時に當たりて、堅車良馬も貴ぶを知らざるなり、刻鏤文采も喜ぶを知らざるなり。何となれば則ち、其の道く所、然らしむればなり。故に民の衣食の財、家、以て旱水凶饑を待つに足る者は、何ぞや。其の自ら養う所以の情を得て、外に感ぜざればなり。是を以て其の民は儉にして治め易く、其の君は財を用うること節にして贍らし易きなり。府庫は實ち滿ち、以て不然を待つに足る。兵革は頓れず、士民は勞れず、以て不服を征するに足る。故に霸王の業、天下に行う可し。