墨子 / 兼愛下
是故約食、焚舟、苴服,此天下之至難為也,然後為而上説之,未踰於世而民可移也。何故也?即求以鄉其上也。今若夫兼相利,此其有利且易為也,不可勝計也。我以為則無有上説之者而已矣,茍有上説之者,勸之以賞譽,威之以刑罰,我以為人之於就兼相愛、交相利也,譬之猶火之就上、水之就下也,不可防止於天下。
新字:是故約食、焚舟、苴服,此天下之至難為也,然後為而上説之,未踰於世而民可移也。何故也?即求以鄉其上也。今若夫兼相利,此其有利且易為也,不可勝計也。我以為則無有上説之者而已矣,茍有上説之者,勧之以賞誉,威之以刑罰,我以為人之於就兼相愛、交相利也,譬之猶火之就上、水之就下也,不可防止於天下。
書き下し
是の故に食を約し、舟を焚き、苴服するは、此れ天下の至って為し難きなり。然る後に為して上、之を説ぶ。世を踰えずして民、移す可きなり。何の故ぞや。即ち以て其の上に鄉かんことを求むればなり。今、夫の兼ねて相い利するが若きは、此れ其の利有りて且つ為し易きこと、勝げて計う可からざるなり。我れ以為えらく、則ち上、之を説ぶ者有ること無きのみ。茍くも上、之を説ぶ者有りて、之を勸むるに賞譽を以てし、之を威すに刑罰を以てせば、我れ以為えらく、人の兼ねて相い愛し、交ごも相い利するに就くに於けるや、之を譬うるに猶お火の上に就き、水の下に就くがごとく、天下に防ぎ止む可からざるなり。
現代語訳
だから食を切り詰め、舟を焼き、粗末な衣を着ることは、天下で最も実行の難しいことである。それでも実行され、上がそれを喜んだ。一世代も経たずに民は変わった。なぜか。上に向かおうとしたからである。いま兼ねて互いに利することは、利があって、しかも実行しやすいことが数え切れないほどある。私が思うに、ただ上がそれを喜ぶ者がいないだけだ。もし上にそれを喜ぶ者がいて、賞と誉れで勧め、刑罰で引き締めれば、人が兼ねて互いに愛し交わって互いに利することに向かうのは、たとえば火が上に向かい水が低きに就くようなもので、天下のどこでも防ぎ止めることはできない。
解説
兼愛下篇のこの結論は、行動変容の設計そのものです。難しいことでも上が喜べば実行された。ならば易しくて利のあることは、なおさら実行される。必要なのは三つ——上が喜ぶこと、賞と誉れ、そして刑罰。理念の共有ではなく、この三点セットが人を動かすとしています。「猶火之就上、水之就下」——条件を整えれば自然にそちらへ流れる、という見方です。
この章句が説くこと
行動変容三点賞罰上の好み自然に流れる
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