墨子 / 魯問
公輸子善其巧,以語子墨子曰:「我舟戰以鉤强,不知子之義亦有鉤强乎?」子墨子曰:「我義之鉤强,賢於子舟戰之鈎强。我鈎强,我鈎之以愛,揣之以恭。弗鈎以愛則不親,弗揣以恭則速狎,狎而不親,則速離。故交相愛,交相恭,猶若相利也。今子鈎而止人,人亦鈎而止子,子强而距人,人亦强而距子。交相鈎,交相强,猶若相害也。故我義之鈎强,賢子舟戰之鈎强。」
新字:公輸子善其巧,以語子墨子曰:「我舟戦以鉤强,不知子之義亦有鉤强乎?」子墨子曰:「我義之鉤强,賢於子舟戦之鈎强。我鈎强,我鈎之以愛,揣之以恭。弗鈎以愛則不親,弗揣以恭則速狎,狎而不親,則速離。故交相愛,交相恭,猶若相利也。今子鈎而止人,人亦鈎而止子,子强而距人,人亦强而距子。交相鈎,交相强,猶若相害也。故我義之鈎强,賢子舟戦之鈎强。」
書き下し
公輸子、其の巧を善しとし、以て子墨子に語げて曰く、「我が舟戰は鉤强を以てす。知らず、子の義にも亦た鉤强有るか」と。子墨子曰く、「我が義の鉤强は、子の舟戰の鈎强より賢れり。我が鈎强は、我れ之を鈎するに愛を以てし、之を揣るに恭を以てす。鈎するに愛を以てせずんば則ち親しまず、揣るに恭を以てせずんば則ち速やかに狎る。狎れて親しまずんば、則ち速やかに離る。故に交ごも相い愛し、交ごも相い恭しきは、猶お相い利するがごときなり。今、子は鈎して人を止め、人も亦た鈎して子を止む。子は强にして人を距ぎ、人も亦た强にして子を距ぐ。交ごも相い鈎し、交ごも相い强うるは、猶お相い害するがごときなり。故に我が義の鈎强は、子の舟戰の鈎强より賢れり」と。
現代語訳
公輸子は自分の巧みさを誇り、墨子に言った。「私の水戦には鉤と強がある。あなたの義にも鉤と強はあるのか」。墨子が言った。「私の義の鉤と強は、あなたの水戦の鉤と強より優れている。私の鉤は、愛でひっかける。私の強は、恭しさで押しとどめる。愛でひっかけなければ親しまない。恭しさで押しとどめなければすぐに馴れ合う。馴れ合って親しまなければ、すぐに離れる。だから互いに愛し合い、互いに恭しくすることは、互いに利し合うことになる。いまあなたは鉤で人を止め、人もまた鉤であなたを止める。あなたは強で人を防ぎ、人もまた強であなたを防ぐ。互いに鉤で引っかけ、互いに強で押し合うのは、互いに害し合うことだ。だから私の義の鉤と強は、あなたの水戦の鉤と強より優れている」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『墨子』尚同下是の故に子墨子曰く、「凡そ民をして尚同せしむる者、民を愛すること疾からざれば、民、使う可き無し。曰く、必ず疾く愛して之を使い、信を致して之を持し、富貴以て其の前を道き、明罰以て其の後を率う。政を為すこと此くの若くんば、唯だ我と同じくする毋からんと欲するも、將に得可からざるなり」と。
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『墨子』大取一に曰く乃ち是にして然り、二に曰く乃ち是にして然らず、三に曰く遷、四に曰く强。子。其の深きを深くし、其の淺きを淺くし、其の益を益し、其の尊きを尊ぶ。次を察し、山のごとく比し因り、優指に至る。復た次いで聲端の名を察し、請に因りて復す。夫の辭の惡しき者を正すは、人、右に其の請を以て焉を得。諸そ遭い執る所にして欲惡生ずる者は、人、必ずしも其の請を以て焉を得ず。聖人の拊なり。仁にして利愛無し、利愛は慮に生ず。昔者の慮は、今日の慮に非ず。昔者の人を愛するは、今の人を愛するに非ず。獲を愛するの人を愛するは、獲を利するを慮るに生じ、臧を利するを慮るに非ざるなり。而して臧を愛するの人を愛するは、乃ち獲を愛するの人を愛するなり。
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『墨子』節用中子墨子言いて曰く、古者、明王聖人の天下に王たり諸侯を正しくせし所以の者は、彼れ其れ民を愛すること謹みて忠、民を利すること謹みて厚く、忠信、相い連なり、又た之に示すに利を以てす。是を以て身を終うるまで饜かず、殁して二十にして卷まず。古者、明王聖人の其の天下に王たり諸侯を正しくせし所以の者は、此れなり。
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論語・憲問篇子曰く、之を愛して、能く労すること勿からんや。焉に忠にして、能く誨うること勿からんや。
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論語・里仁篇子曰わく、ただ仁者のみよく人を好み、よく人を悪む。
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『墨子』法儀昔の聖王、禹・湯・文・武は、兼ねて天下の百姓を愛し、率いて以て天を尊び鬼に事う。其の人を利すること多し、故に天、之を福し、立てて天子と為さしめ、天下の諸侯、皆な賓として之に事う。暴王、桀・紂・幽・厲は、兼ねて天下の百姓を惡み、率いて以て天を詬り鬼を侮る。其の人を賊うこと多し、故に天、之を禍し、遂に其の國家を失わしめ、身死して天下に僇と為り、後世の子孫、之を毁り、今に至るまで息まず。故に不善を為して以て禍を得る者は、桀・紂・幽・厲是れなり。人を愛し人を利して以て福を得る者は、禹・湯・文・武是れなり。人を愛し人を利して以て福を得る者は有り、人を惡み人を賊うて以て禍を得る者も亦た有り。