墨子 / 尚同上
是故里長者,里之仁人也。里長發政里之百姓,言曰:「聞善而不善,必以告其鄉長。鄉長之所是必皆是之,鄉長之所非必皆非之。去若不善言,學鄉長之善言;去若不善行,學鄉長之善行。」則鄉何説以亂哉?察鄉之所治者,何也?鄉長唯能壹同鄉之義,是以鄉治也。
新字:是故里長者,里之仁人也。里長発政里之百姓,言曰:「聞善而不善,必以告其鄉長。鄉長之所是必皆是之,鄉長之所非必皆非之。去若不善言,学鄉長之善言;去若不善行,学鄉長之善行。」則鄉何説以乱哉?察鄉之所治者,何也?鄉長唯能壱同鄉之義,是以鄉治也。
書き下し
是の故に里長なる者は、里の仁人なり。里長、政を里の百姓に發して、言いて曰く、「善と不善とを聞かば、必ず以て其の鄉長に告げよ。鄉長の是とする所は必ず皆な之を是とし、鄉長の非とする所は必ず皆な之を非とせよ。若の不善の言を去りて、鄉長の善言を學び、若の不善の行を去りて、鄉長の善行を學べ」と。則ち鄉、何の説あってか以て亂れんや。鄉の治まる所を察するに、何ぞや。鄉長、唯だ能く鄉の義を壹同す、是を以て鄉治まるなり。
現代語訳
だから里長とは、その里の仁ある人である。里長は里の民に政令を発してこう言った。「善いことも善くないことも聞いたら、必ず郷長に告げよ。郷長が是とすることは必ずみな是とし、郷長が非とすることは必ずみな非とせよ。お前たちの善くない言葉を捨てて郷長の善い言葉を学び、お前たちの善くない行いを捨てて郷長の善い行いを学べ」。それなら郷がどうして乱れよう。郷が治まっている理由は何か。郷長が郷の義を一つに揃えることができるからである。だから郷は治まる。
解説
「里長者、里之仁人也」——この前提が抜けると尚同は単なる服従論になります。従うべき相手は、その単位で最も仁ある人として選ばれた者だ、という条件が先にある。前半の尚賢篇と尚同篇が一つながりであることが、ここで分かります。賢者を選ぶ仕組み(尚賢)が働いていなければ、義を揃える仕組み(尚同)は害になる。二つの篇は順番に読むよう作られています。
この章句が説くこと
尚同尚賢前提揃える選任
関連する章句
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『墨子』尚同中是の故に里長は天子の政に順いて、其の里の義を一同す。里長、既に其の里の義を同じくし、其の里の萬民を率いて以て鄉長に尚同して曰く、「凡そ里の萬民は、皆な鄉長に尚同して、敢えて下に比せざれ。鄉長の是とする所は必ず亦た之を是とし、鄉長の非とする所は必ず亦た之を非とせよ。而の不善の言を去りて、鄉長の善言を學び、而の不善の行を去りて、鄉長の善行を學べ」と。鄉長は固より鄉の賢者なり。郷人を舉げて以て鄉長に法らしむ。夫れ鄉、何の説あってか治まらざらんや。鄉長の鄉を治むる所以の者を察するに、何の故を以てするか。曰く、唯だ其の能く其の鄉の義を一同するを以てなり。是を以て鄉治まる。其の鄉、而して鄉既に以て治まれり。
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『墨子』尚同上鄉長なる者は、鄉の仁人なり。鄉長、政を鄉の百姓に發して、言いて曰く、「善と不善とを聞く者は、必ず以て國君に告げよ。國君の是とする所は必ず皆な之を是とし、國君の非とする所は必ず皆な之を非とせよ。若の不善の言を去りて、國君の善言を學び、若の不善の行を去りて、國君の善行を學べ」と。則ち國、何の説あってか以て亂れんや。國の治まる所以を察するに、何ぞや。國君、唯だ能く國の義を壹同す、是を以て國治まるなり。國君なる者は、國の仁人なり。國君、政を國の百姓に發して、言いて曰く、「善と不善とを聞かば、必ず以て天子に告げよ。天子の是とする所は皆な之を是とし、天子の非とする所は皆な之を非とせよ。若の不善の言を去りて、天子の善言を學び、若の不善の行を去りて、天子の善行を學べ」と。則ち天下、何の説あってか以て亂れんや。天下の治まる所以を察するに、何ぞや。天子、唯だ能く天下の義を壹同す、是を以て天下、以て治まるなり。
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『墨子』尚同中又た其の鄉の萬民を率いて以て國君に尚同して曰く、「凡そ鄉の萬民は、皆な國君に上同して、敢えて下に比せざれ。國君の是とする所は必ず亦た之を是とし、國君の非とする所は必ず亦た之を非とせよ。而の不善の言を去りて、國君の善言を學び、而の不善の行を去りて、國君の善行を學べ」と。國君は固より國の賢者なり。國人を舉げて以て國君に法らしむ。夫れ國、何の説あってか治まらざらんや。國君の國を治めて國治まる所以の者を察するに、何の故を以てするか。曰く、唯だ其の能く其の國の義を一同するを以てなり。是を以て國治まる。
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『墨子』尚同中國君、其の國を治めて、既已に治まれり。又た其の國の萬民を率いて以て天子に尚同して曰く、「凡そ國の萬民は、天子に上同して、敢えて下に比せざれ。天子の是とする所は必ず亦た之を是とし、天子の非とする所は必ず亦た之を非とせよ。而の不善の言を去りて、天子の善言を學び、而の不善の行を去りて、天子の善行を學べ」と。天子なる者は、固より天下の仁人なり。天下の萬民を舉げて以て天子に法らしむ。夫れ天下、何の説あってか治まらざらんや。天子の天下を治むる所以の者を察するに、何の故を以てするか。曰く、唯だ其の能く天下の義を一同するを以てなり。是を以て天下治まる。
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『墨子』尚同中今、王公大人の刑政を為すは則ち此を舉ぐ。政、以て便辟を屬し、父兄故舊に宗りて、以て左右と為し、置きて以て正長と為す。民、上の正長を置くの、正しく以て民を治むるに非ざるを知る。是を以て皆な比周隠匿して、肯えて其の上に尚同すること莫し。是の故に上下、義を同じくせず。若し茍くも上下、義を同じくせざれば、賞譽も以て善を勸むるに足らずして、刑罰も以て暴を沮むるに足らず。
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『墨子』尚同上正長既已に具わり、天子、政を天下の百姓に發して、言いて曰く、「善と不善とを聞かば、皆な以て其の上に告げよ。上の是とする所は必ず皆な之を是とし、非とする所は必ず皆な之を非とせよ。上に過ち有らば則ち之を規諫し、下に善有らば則ち之を傍薦せよ。上に同じくして下に比せざる者は、此れ上の賞する所にして下の譽むる所なり。意し若し善と不善とを聞くも、以て其の上に告げず、上の是とする所を是とする能わず、上の非とする所を非とする能わず、上に過ち有るも規諫せず、下に善有るも傍薦せず、下に比して上に同じくする能わざる者は、此れ上の罰する所にして百姓の毁る所なり」と。上、此を以て賞罰を為し、其れ明察にして以て審信なり。