牧民忠告 / 受代
嘗見世之交代者,多有所爭,要皆舊官不廣之所致。或居其居而不徒,或專其田而不分,或匿其公物不盡以相授,使新者懷不平而無所訴,甚非士君子善後之道也。夫利之與義,勢不並處,義親則利疏,利近則義遠。況為民師帥,而專務於利,其聚怨納侮,視市井小人不若也。故君子之從政也,寧公而貧,不私而富;寧讓而損己,不競而損人。
新字:嘗見世之交代者,多有所争,要皆旧官不広之所致。或居其居而不徒,或専其田而不分,或匿其公物不尽以相授,使新者懐不平而無所訴,甚非士君子善後之道也。夫利之与義,勢不並処,義親則利疏,利近則義遠。況為民師帥,而専務於利,其聚怨納侮,視市井小人不若也。故君子之従政也,寧公而貧,不私而富;寧譲而損己,不競而損人。
書き下し
嘗(かつ)て世の交代する者を見るに、多く争う所有り、要(つと)めて皆旧官の広からざるの致す所なり。或いは其の居に居りて徒(うつ)らず、或いは其の田を専らにして分かたず、或いは其の公物を匿(かく)して尽くは以て相授けず、新しき者をして不平を懐(いだ)きて訴うる所無からしむるは、甚だ士君子善後の道に非ざるなり。夫れ利の義と与(とも)に、勢い並び処(お)らず、義親しめば則ち利疎(うと)く、利近ければ則ち義遠し。況んや民の師帥(しすい)と為りて、専ら利を務むれば、其の怨みを聚(あつ)め侮りを納るること、市井の小人を視るにも若(し)かず。故に君子の政に従うや、寧(むし)ろ公にして貧しく、私にして富まず。寧ろ譲りて己を損すとも、競いて人を損せず。
現代語訳
かつて世の中で交代する者を見ると、多くは争いが起きているが、その原因はほとんど前任者の度量の狭さにある。ある者は住居を明け渡さず、ある者は田畑を独占して分けず、ある者は公有の物を隠して余さず引き渡さず、新任者に不満を抱かせ訴える術もなくさせる。これは士君子の後始末の道として甚だしく誤っている。そもそも利益と道義は、勢いとして両立しがたく、道義に親しめば利益は疎遠になり、利益に近づけば道義は遠ざかる。まして民の師表たる者が専ら利益を追い求めれば、恨みと侮りを招くこと、市井の小人にすら及ばない。だから君子が政治に携わるときは、むしろ公平で貧しくあっても、私利を図って富もうとはしない。むしろ譲って自分が損をしても、争って人に損をさせることはしない。
解説
この章句が説くこと
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