牧民忠告 / 御下
皂卒徒隸,非公故勿與語,非公遣勿使與民相往來。若輩小人,威以蒞之,猶恐為患,一或解嚴,必百無忌憚矣。
新字:皂卒徒隸,非公故勿与語,非公遣勿使与民相往来。若輩小人,威以蒞之,猶恐為患,一或解厳,必百無忌憚矣。
書き下し
皂卒(そうそつ)徒隸(とれい)は、公故(こうこ)に非(あら)ざれば与(とも)に語る勿(な)かれ、公遣(こうけん)に非ざれば民と相往来せしむる勿かれ。若輩(じゃくはい)の小人は、威を以て之に蒞(のぞ)むすら猶(な)お患(うれ)いを為すことを恐る、一(ひと)たび或いは厳を解けば、必ず百(ひゃく)忌憚(きたん)する無からん。
現代語訳
下働きの雑役夫や召使たちは、公務上の用件でなければ言葉を交わしてはならず、公務上の使いでなければ民と行き来させてはならない。こうした身分の低い者たちは、威厳をもって臨んでもなお問題を起こしはしないかと心配なのに、一たび取り締まりを緩めれば、必ずあらゆる憚(はばか)りのない振る舞いをするようになる。
解説
本条は末端で働く雑役層の統制について、身分の低さゆえに軽視されがちな点にあえて注意を促す。公務外の接触を厳しく制限すべき理由は、権限を持たない者ほど非公式な立場を利用して不正を働きやすいからであり、威厳をもって臨んでさえ油断できないと述べる点に、統治者の慎重さが表れている。現代の組織においても、末端の業務委託先や補助的な立場のスタッフの管理を軽視すると、情報漏洩や不適切な対外接触のリスクが生じやすい。管理職は役職の上下にかかわらず、公務と私的な接触の境界を明確にし、一貫した規律を組織全体に及ぼす必要があるという教訓を含む。
この章句が説くこと
待徒隸末端管理公私の別規律
関連する章句
-
『韓非子』難三第三十八桓公能く管仲の功を用いて、鉤を射るの怨みを忘る。文公能く寺人の言を聴きて、祛を斬るの罪を棄つ。... 是れ臣讎するに、而も明燭すこと能わず、多く之に資を假すに、自ら以て賢と為して戒めず。
-
『韓非子』飭令第五十三刑を行いて、其の輕き者を重くすれば、輕き者至らず、重き者來たらず。此を刑を以て刑を去ると謂う。
-
『韓非子』十過第十小忠を行うは、則ち大忠の賊なり。
-
『韓非子』飾邪第十九昔者、舜、吏をして鴻水を決せしめしに、令に先だちて功有りて、舜之を殺す。禹、諸侯の君を會稽の上に朝し、防風の君後れて至りて、禹之を斬る。
-
『韓非子』六反第四十六故に法の道為る、前に苦しみて長く利あり。仁の道為る、偷楽しみて後窮す。聖人は其の輕重を權りて、す出づ。故に法の相忍ぶを用いて、仁人の相憐むを棄つるなり。
-
『韓非子』心度第五十四聖人の民を治むるは、本に度り、其の欲を從(ほしいまま)にせしめず、民を利するを期するのみ。故に其の之に刑を與うるは、民を悪む所以に非ず、愛の本なり。