牧民忠告 / 聽訟
民有妖言惑眾者,則當假以別罪而罪之。如有妄書,取而火之,則厥跡滅矣。勿使蔓為大獄,延禍無辜。
新字:民有妖言惑眾者,則当仮以別罪而罪之。如有妄書,取而火之,則厥跡滅矣。勿使蔓為大獄,延禍無辜。
書き下し
民に妖言(ようげん)もて衆(しゅう)を惑わす者有らば、則ち当に別罪(べつざい)を仮りて之を罪すべし。如(も)し妄書(もうしょ)有らば、取りて之を火(や)けば、則ち厥(そ)の跡滅す。蔓(はびこ)らせて大獄(たいごく)と為し、禍(わざわい)を無辜(むこ)に延(の)ばさしむる勿(な)かれ。
現代語訳
民の中に怪しげな言説で人々を惑わす者がいれば、別の罪名を借りてこれを罰するのがよい。もし怪しい文書があれば、それを取り上げて焼き捨てれば、その痕跡は消える。事件を大きく広げて大がかりな裁判とし、罪のない者にまで災いを及ぼすようなことをしてはならない。
解説
本条は、社会不安を煽る流言・怪文書への対処法を説く。ここで注目すべきは、事件を必要以上に大きくしない知恵である。正面から「妖言」として立件すれば噂が拡散し混乱を招くため、別の名目で穏便に処分し、証拠物は速やかに処分して火種を絶ち、無関係な者を巻き込む大規模な摘発は避けるべきだとする。現代の組織における不祥事対応にも通じる視点であり、問題を過度に大事にして関係のない多くの人を巻き込むと、かえって混乱と不信を拡大させることがある。管理職には、問題の芽を的確に摘みつつも、影響範囲を見極めて騒ぎを不必要に拡大させない冷静な判断力が求められる。
この章句が説くこと
妖言流言事態収拾連座回避
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