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正法眼蔵随聞記 / 巻六

昔し一人の僧あり、死して冥途に行く、閻王の云く、此の人は命分いまだつきずかへすべしと、冥官云く、命分つきずといへども、食分すでに盡く、王の云く、荷葉を食せしむべしと、しかりしよりその僧よみかへりて後ち、人中の食物食することをえず、只荷葉のみを食して、殘命を保てり、しかあれば出家は學佛のちからによりて食分も盡くべからず、

新字:昔し一人の僧あり、死して冥途に行く、閻王の云く、此の人は命分いまだつきずかへすべしと、冥官云く、命分つきずといへども、食分すでに尽く、王の云く、荷葉を食せしむべしと、しかりしよりその僧よみかへりて後ち、人中の食物食することをえず、只荷葉のみを食して、残命を保てり、しかあれば出家は学仏のちからによりて食分も尽くべからず、

書き下し

昔し一人の僧あり、死して冥途に行く、閻王の云く、此の人は命分いまだつきずかへすべしと、冥官云く、命分つきずといへども、食分すでに尽く、王の云く、荷葉を食せしむべしと、しかりしよりその僧よみかへりて後ち、人中の食物食することをえず、只荷葉のみを食して、残命を保てり、しかあれば出家は学仏のちからによりて食分も尽くべからず、

現代語訳

昔、一人の僧がいた。死んで冥途に行った。閻魔王が言うには、この人は命の分がまだ尽きていない、返すべきである、と。冥途の役人が言うには、命の分は尽きていないけれども、食の分はすでに尽きています、と。王が言うには、蓮の葉を食べさせよ、と。それより後、その僧は蘇って、人の世の食物を食べることができず、ただ蓮の葉だけを食べて残りの命を保った。であるから、出家は仏を学ぶ力によって食の分も尽きることがないのである。

解説

命の分と食の分が別々に勘定されているところが面白い説話で、寿命が残っていても食べる分を使い切ってしまうことがあると言う。前段の分の話を具体で示したうえで、学仏の力によって出家の食の分は尽きないと結び、貪らずともよい理由にしている。

この章句が説くこと

食分命分出家説話閻魔

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