師導古典を学びたいすべての人に

正法眼蔵随聞記 / 巻二

故僧正の云く、衆僧各所用の衣糧等の事、子があたふると思ふなかれ、皆な是れ諸天の供する所ろなり、吾れは取り次ぎ人にあたりたるばかりなり、亦各一期の命分具足す、奔走すること莫れ、吾が恩と思ふこと莫れと、常にすゝめられける、是れ第一の美言とおぼゆるなり、

書き下し

故僧正の云く、衆僧各所用の衣糧等の事、子があたふると思ふなかれ、皆な是れ諸天の供する所ろなり、吾れは取り次ぎ人にあたりたるばかりなり、亦各一期の命分具足す、奔走すること莫れ、吾が恩と思ふこと莫れと、常にすゝめられける、是れ第一の美言とおぼゆるなり、

現代語訳

故僧正が言われた。僧たちがそれぞれ用いる衣や食などの事は、わたしが与えると思ってはならない。みなこれは諸天が供するところである。わたしは取り次ぎの人に当たっているだけである。また各自に一生の命の分が具わっている。奔走してはならない。わたしの恩と思ってはならない、と、常に勧められた。これが第一の美しい言葉と思われるのである。

解説

与える側が、自分は取り次ぎにすぎないと言い切る。恩を着せないというだけでなく、受ける側が誰かの機嫌をうかがう必要をなくしている点で、集団の空気そのものを軽くする言葉である。各自に命の分が具わっているという見方が、次の条の宏智の答えにそのまま重なり、二つの逸話が同じ主題で並べられている。

この章句が説くこと

布施取り次ぎ諸天衣食

関連する章句

この一句を、あなたの毎日に。

古典の教えを、今の状況に当てはめて考えてみる——師導があなたの学びと選択を支えます。

師導で古典を学ぶ
いま登録すると、7日間すべての機能を無料でお試しいただけます。 無料ではじめる