幽夢影 / 巻下・君子・小人相攻むるの大勢
黑與白交,黑能污白,白不能掩黑;香與臭混,臭能勝香,香不能敵臭。此君子、小人相攻之大勢也。
新字:黒与白交,黒能汚白,白不能掩黒;香与臭混,臭能勝香,香不能敵臭。此君子、小人相攻之大勢也。
書き下し
黑と白と交はれば、黑は能く白を污すも、白は黑を掩ふ能はず。香と臭と混ずれば、臭は能く香に勝つも、香は臭に敵する能はず。此れ君子・小人相攻むるの大勢なり。
現代語訳
黒と白が交われば、黒は白を汚すことができますが、白は黒を覆い隠すことができません。よい香りと悪臭が混じれば、悪臭はよい香りに勝つことができますが、よい香りは悪臭にかないません。これが、君子と小人が攻め合うときの大きな形勢です。
解説
善と悪がぶつかると、なぜ悪のほうが有利になりやすいのかを、色と匂いで説いた一則です。白い布に黒い墨が一滴落ちれば汚れは目立ちますが、黒い布に白を塗っても覆いきれません。わずかな悪臭は、よい香りをたちまち打ち消してしまいます。君子と小人の争いも同じで、小人は少しの中傷で君子の名を汚せますが、君子は小人の悪を簡単には消せません。友人の石天外は、黒の中の白も白の中の黒も目立つとして、「君子は短所を見られやすく、小人は長所を見られやすい」と嘆いています。弟の張木山は、人は白と香を好むので最後は君子が勝つと励ましています。正しいことをする側こそ、慎重に身を守る必要があると教えてくれます。
この章句が説くこと
君子小人善悪処世慎重
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