幽夢影 / 巻下・文人は好んで富人を鄙薄す
文人每好鄙薄富人,然於詩文之佳者,又往往以金玉珠璣錦繡譽之,則又何也?
新字:文人毎好鄙薄富人,然於詩文之佳者,又往往以金玉珠璣錦繍誉之,則又何也?
書き下し
文人は每に好んで富人を鄙薄す、然れども詩文の佳なる者に於ては、又往往にして金玉珠璣錦繡を以て之を譽む、則ち又何ぞや。
現代語訳
文人はいつも好んで金持ちを見下します。ところが、すぐれた詩文については、しばしば金や玉、真珠や錦の織物にたとえてほめたたえます。これはまたどういうわけでしょうか。
解説
文人の言葉に潜む矛盾を、張潮自身が文人でありながら突いてみせた一則です。文人は清貧を誇り、財産を持つ者を俗物として軽んじがちでした。ところが、よい文章をほめるときには、珠玉の名文、錦繡の文章というように、富の象徴である宝物を持ち出します。口では富を軽蔑しながら、心の底では富の価値を認めているのではないかというわけです。友人の江含徴は「金持ちが嫌われるのはけちで俗だからで、宝そのものが嫌われるのではない」と答え、張竹坡は「文がなければ貧しくても卑しく、文があれば富んでいても敬うべきだ」と言っています。自分の言葉づかいに、隠れた本音が出ていないか見直したくなる一則です。
この章句が説くこと
清貧富文人矛盾見方
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『武士道』第七章 至誠信實・富の道は名誉の道に非ず然るに聞く、米国の如き実業国に於てすら、実業家中、十の八は破産せざるなしと。されば士族の商業の能く成功したるもの、百人にして一人を算ふるも、亦た敢て驚くに足らず。要するに武士道の道義を商業に施さんと欲して、為に蕩尽したる財産の数量は、殆ど計るべからざるものあらん。識見ある士人の、直ちに富の道は名誉の道に非ざるを認めたるも、亦た宜なりと謂ふべし。この二者の道の由つて岐るる処は、果していづれにありや。レッキーがかつて誠実の誘因として挙げたる実業、政治、哲学の三者中、其一は武士道全く之を欠き、其二は封建制度の政治社会に在りて、殆ど此れが発達を見ること能はざりき。而して誠実信義の徳の、士林の道徳範囲に於て其重きをなすに至りたる所以は、其哲学的誘因に由れるものにして、即ちレッキーの所謂、至高の形態に於て発達したるものなり。
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論語・季氏篇斉の景公、馬千駟有り。死するの日、民徳として称する無し。伯夷・叔斉、首陽の下に餓う。民今に到るまで之を称す。其れ斯を之謂うか。
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論語・述而篇子曰く、富にして求む可くんば、執鞭の士と雖も、吾も亦た之を為さん。如し求む可からずんば、吾が好む所に従わん。
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論語・学而篇子貢曰く、「貧しくして諂うこと無く、富みて驕ること無きは如何。」子曰く、「可なり。未だ貧しくして道を楽しみ、富みて礼を好む者には若かざるなり。」子貢曰く、「詩に云う、『切するが如く、磋するが如く、琢するが如く、磨するが如し』と。其れ斯を之謂うか。」子曰く、「賜や、始めて与に詩を言う可きのみ。諸に往を告げて来を知る者なり。」
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徒然草・第217段ある大福長者の曰く、「人は万をさしおきて、一向に徳をつくべきなり。貧しくては生けるかひなし。富めるのみを人とす。徳をつかむとおもはば、すべからくまづその心づかひを修行すべし。その心といふは他の事にあらず。人間常住の思ひに住して、仮にも無常を観ずる事なかれ。これ第一の用心なり。次に万事の用をかなふべからず。人の世にある、自他につけて所願無量なり。欲に従ひて志を遂げむと思はば、百万の銭ありといふとも、しばらくも住すべからず。所願は止むときなし。財は尽くる期あり。かぎりある財をもちてかぎりなき願ひに従ふこと、得べからず。所願心に兆すことあらば、われを亡すべき悪念きたれりと、かたく慎みおそれて、小用をもなすべからず。次に、銭を奴の如くしてつかひ用ゐるものと知らば、長く貧苦を免るべからず。君の如く神のごとくおそれ尊みて、従へ用ゐることなかれ。次に恥にのぞむといふとも、怒り怨むる事なかれ。次に正直にして、約をかたくすべし。この義を守りて利をもとめむ人は、富の来ること、火の乾けるに就き、水の下れるに従ふが如くなるべし。銭つもりて尽きざるときは、宴飮声色を事とせず、居所をかざらず、所願を成ぜざれども、心とこしなへに安く楽し。」と申しき。そもそも人は所願を成ぜむがために財をもとむ。銭を財とする事は、願ひをかなふるが故なり。所願あれどもかなへず、銭あれども用ゐざらむは、全く貧者とおなじ。何をか楽しびとせむ。このおきてはたゞ人間の望みを絶ちて、貧を憂ふべからずと聞えたり。欲をなして楽しびとせむよりは、しかじ財なからむには。癰疽を病む者、水に洗ひて楽しびとせむよりは、病まざらむには如かじ。こゝに至りては、貧富分くところなし。究竟は理即にひとし。大欲は無欲に似たり。
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