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幽夢影 / 巻下・忘れ難き者は名心一段

萬事可忘,難忘者名心一段;千般易淡,未淡者美酒三杯。

新字:万事可忘,難忘者名心一段;千般易淡,未淡者美酒三杯。

書き下し

萬事忘るべきも、忘れ難き者は名心一段。千般淡くし易きも、未だ淡からざる者は美酒三杯。

現代語訳

何事も忘れることができますが、忘れがたいのは名を求める心だけです。いろいろなことはたやすく淡白になれますが、まだ淡白になれないのは美酒の三杯です。

解説

欲を捨てたつもりでも捨てきれないものを、正直に告白した対句です。名心は名声を求める心で、世俗の欲は大方忘れられても、名を残したいという思いだけはどうしても消えないと言います。淡は執着が薄れて淡白になることで、多くの楽しみには淡白になれても、うまい酒の三杯だけはまだ手放せないと笑います。聖人君子を気取らない、人間くさい本音が魅力の一則です。友人の張竹坡は、夜明けの鶏の声で起きて剣を舞った晋の祖逖のような、酒のあと耳が熱くなる気概だと評しています。王丹麓は、自分は酒に弱いから美酒にはすぐ淡白になるが、最も忘れがたいのは名だと、さらに正直に打ち明けています。

この章句が説くこと

修身名声執着本音

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