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幽夢影 / 巻上・天下唯だ鬼のみ最も富む

天下唯鬼最富,生前囊無一文,死後每饒楮鏹;天下唯鬼最尊,生前或受欺淩,死後必多跪拜。

新字:天下唯鬼最富,生前嚢無一文,死後毎饒楮鏹;天下唯鬼最尊,生前或受欺淩,死後必多跪拝。

書き下し

天下唯だ鬼のみ最も富む、生前は囊に一文無きも、死後は每に楮鏹に饒かなり。天下唯だ鬼のみ最も尊し、生前は或いは欺淩を受くるも、死後は必ず跪拜多し。

現代語訳

世の中で死者ほど金持ちなものはありません。生きているときは財布に一文もなくても、死んだ後はいつも紙銭をたっぷり供えられます。世の中で死者ほど尊ばれるものはありません。生きているときはあなどられ、いじめられていても、死んだ後は必ず多くの人にひざまずいて拝まれます。

解説

死者への供養の習わしを通して、生きている人への冷たさを皮肉った一則です。鬼は中国語では死者の霊のことです。楮鏹は、死者があの世で使うために焼いて供える紙の銭です。生前は貧しく、軽んじられていた人も、死ねば紙銭を山ほど供えられ、皆に拝まれるという逆転を、最も富み最も尊いと言い立てています。友人の呉野人は、世間は貧乏な学者を窮鬼と呼ぶがそれはどうしたことかと切り返しています。死んでから敬うより、生きているうちに人を大切にすべきだという教えが、笑いの奥に込められています。身近な人への感謝は、今のうちに伝えたいものです。

この章句が説くこと

処世風刺供養生死敬意

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