幽夢影 / 巻上・天下唯だ鬼のみ最も富む
天下唯鬼最富,生前囊無一文,死後每饒楮鏹;天下唯鬼最尊,生前或受欺淩,死後必多跪拜。
新字:天下唯鬼最富,生前嚢無一文,死後毎饒楮鏹;天下唯鬼最尊,生前或受欺淩,死後必多跪拝。
書き下し
天下唯だ鬼のみ最も富む、生前は囊に一文無きも、死後は每に楮鏹に饒かなり。天下唯だ鬼のみ最も尊し、生前は或いは欺淩を受くるも、死後は必ず跪拜多し。
現代語訳
世の中で死者ほど金持ちなものはありません。生きているときは財布に一文もなくても、死んだ後はいつも紙銭をたっぷり供えられます。世の中で死者ほど尊ばれるものはありません。生きているときはあなどられ、いじめられていても、死んだ後は必ず多くの人にひざまずいて拝まれます。
解説
死者への供養の習わしを通して、生きている人への冷たさを皮肉った一則です。鬼は中国語では死者の霊のことです。楮鏹は、死者があの世で使うために焼いて供える紙の銭です。生前は貧しく、軽んじられていた人も、死ねば紙銭を山ほど供えられ、皆に拝まれるという逆転を、最も富み最も尊いと言い立てています。友人の呉野人は、世間は貧乏な学者を窮鬼と呼ぶがそれはどうしたことかと切り返しています。死んでから敬うより、生きているうちに人を大切にすべきだという教えが、笑いの奥に込められています。身近な人への感謝は、今のうちに伝えたいものです。
この章句が説くこと
処世風刺供養生死敬意
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説苑・雜言仲尼曰く、「史に君子の道三つ有り。仕えずして上を敬い、祀らずして鬼を敬い、直にして能く人に曲がる」と。
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孟子・公孫丑章句下ち不敬是より大なるは莫し。我は堯舜の道に非ざれば、敢て以て王の前に陳ぜず。故に齊の人は我の王を敬するに如くもの莫きなり。」景子曰く、「否。此の謂に非ざるなり。禮に曰く、『父召せば、諾する無し。君命じて召せば、駕するを俟たず。』固より將に朝せんとするなり。王命を聞きて遂に果さず。宜しく夫の禮と相似ざるが如く然るべし。」曰く、「豈に是を謂わんや。曾子曰く、『晉楚の富は、及ぶ可からざるなり。彼は其の富を以てし、我は吾が仁を以てす。彼は其の爵を以てし、我は吾が義を以てす。吾何ぞ慊せんや。』夫れ豈に不義にして曾子之を言わんや。是れ或は一道なり。天下に達尊三有り。爵一、齒一、德一。朝廷は爵に如くは莫く、ᰰ黨は齒に如くは莫く、世を輔け民に長たるは徳に如くは莫し。惡くんぞ其の一を有して、以て其の二を慢るを得んや。故に將に大いに為す有らんとするの君は、必ず召さざる所の臣有り。謀ること有らんと欲すれば、則ち之に就く。其の徳を尊び道を樂しむこと、是くの如くならざれば、與に為す有るに足らざるなり。故に湯の伊尹に於ける、學びて而る後に之を臣とす。故に勞せずして王たり。桓公の管仲に於ける、學びて而る後に之を臣とす。故に勞せずして霸たり。今、天下、地醜(たぐい)し德齊しく、能く相尚(すぎる)ぐるもの無きは、他無し。其の教うる所を臣とするを好みて、其の教えを受くる所を臣とするを好まず。湯の伊尹に於ける、桓公の管仲に於けるは、則ち敢て召さず。管仲すら且つ猶ほ召す可からず。而るを況んや管仲を為さざる者をや。」
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