幽夢影 / 巻上・不幸と謂ふべく缺陷と謂ふべからず
昭君以和親而顯,劉蕡以下第而傳,可謂之不幸,不可謂之缺陷。
新字:昭君以和親而顕,劉蕡以下第而伝,可謂之不幸,不可謂之欠陥。
書き下し
昭君は和親を以て顯れ、劉蕡は下第を以て傳はる。之を不幸と謂ふべく、之を缺陷と謂ふべからず。
現代語訳
王昭君は和親(異民族への嫁入り)によって名を知られ、劉蕡(唐の人)は科挙に落第したことで名を伝えました。これは不幸と言うことはできても、欠陥と言うことはできません。
解説
不運がかえって名を残すきっかけになった二人を挙げた一則です。王昭君は漢の元帝の後宮にいた女性で、匈奴との和親のために嫁がされましたが、そのことによって詩や物語に詠まれ続けました。劉蕡は唐の文宗のとき、試験の答案で宦官の専横を激しく論じたため落第させられ、かえってその答案と気骨が後世に伝わりました。張潮は、これを身の不幸とは言えても、人生の欠けとは言えないと見ています。友人の尤悔庵は、そうでなければ一人の老いた宮女と、並の進士で終わっていただろうと言っています。思いどおりにならなかった経験が、後に自分の持ち味になることは少なくありません。
この章句が説くこと
処世忍逆境名声故事
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