養生訓 / 巻第六・慎病
一冬至には一陽初めて生ず。陽氣の微少なるを靜養すべし、勞動すべからず。此日、公事にあらずんば、外に出づべからず。冬至の前五日後十日、房事を忌む。又灸すべからず。續漢書に曰、夏至水を改め、冬至に火を改むるは、瘟疫を去るなり。
新字:一冬至には一陽初めて生ず。陽気の微少なるを静養すべし、労動すべからず。此日、公事にあらずんば、外に出づべからず。冬至の前五日後十日、房事を忌む。又灸すべからず。続漢書に曰、夏至水を改め、冬至に火を改むるは、瘟疫を去るなり。
書き下し
一冬至には一陽初めて生ず。陽気の微少なるを静養すべし、労動すべからず。此日、公事にあらずんば、外に出づべからず。冬至の前五日後十日、房事を忌む。又灸すべからず。続漢書に曰、夏至水を改め、冬至に火を改むるは、瘟疫を去るなり。
現代語訳
冬至には一つの陽気がはじめて生じます。その陽気のわずかなのを静かに養うべきで、体を疲れさせてはいけません。この日は、公の用事でなければ外に出てはいけません。冬至の前五日と後十日は、房事を忌みます。また灸をしてはいけません。『続漢書』に、「夏至に水を改め、冬至に火を改めるのは、流行病を去るためである」とあります。
解説
冬至の過ごし方を述べた条です。冬至は陰が極まって陽がはじめて生じる「一陽来復」の日であり、その芽生えたばかりの陽気を大切に養うため、外出や房事、灸を控えて静養せよと説いています。『続漢書』にある、夏至に水を改め冬至に火を改めるという古い習わしも添えています。季節の節目に生活を改め、心身を休めるという考え方は、年末年始や季節の行事を暮らしの区切りとして大切にする今の私たちの感覚にも通じるものです。
この章句が説くこと
冬至陽気季節静養節目
関連する章句
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『養生訓』巻第六・慎病一冬は天地の陽気とぢかくれ、人の血気をさまる時なり。心気を閑にしをさめて保つべし。あたため過して、陽気を発し泄すべからず、上気せしむべからず。衣服をあぶるに、少しあたためてよし。熱きを忌む。衣を多くかさね、又は火気を以て、身をあたため過すべからず。熱湯に浴すべからず。労力して汗を発し、陽を泄すべからず。
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『養生訓』巻第六・慎病一冬月は、急病にあらずんば針灸すべからず。尤十二月を忌む。又冬月按摩をいむ。自身しづかに導引するは害なし。あらくすべからず。一除日には、父祖の神前を掃除し、家内殊に臥室のちりをはらひ、夕は灯をともして明朝にいたり、家内光明ならしめ、香を所々にたき、かまどにて爆竹し、火を焚きて陽気を助くべし。家族も炉をかこみ、和気津々として人とあらそはず、家人をいかり罵るべからず。父母尊長を拝祝し、家内大小上下椒酒を飲んで、歓び楽み、終夜寝ねずして旧き歳をおくり、新しき年をむかへて朝にいたる。是を守歳と云ふ。
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『養生訓』巻第六・慎病一千金方に曰く、冬温なる事を極めず、夏涼しき事をきはめず。凡一時快き事は、必ず後の災となる。一病生じては、心のうれひ、身の苦甚し。其上、医をまねき、薬を飲み、炙をし、針をさし、酒をたち、食をへらし、さまざまに心をなやまし、身をせめて、病を治せんとせんよりは、初に内欲をこらへ、外邪をふせげば、病おこらず、薬を服せず、針灸せずして、身のなやみ心の苦なし。初しばしの間つつしみ忍ぶは、少しの心づかひなれど、後の患なきは、大なるしるしなり。後に薬と針灸を用ひ、酒食をこらへつつしむは、其苦甚しけれど益すくなし。古語に、終をつつしむ事は、始に於てせよといへり。万の事、始によくつつしめば、後に悔なし。養生の道、ことさらかくのごとし。一飲食色慾の内欲をほしいままにせずして、かたく慎み、風寒暑湿の外邪をおそれ防がば、病なくして、薬を用ひずとも患なかるべし。もし慾をほしいままにして慎まず、只脾腎を補ふ薬治と食治とを頼まば、必ずしるしなかるべし。
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『養生訓』巻第六・慎病一春は陽気発生し、冬の閉蔵にかはり、人の肌膚和して、表気やうやく開く。然るに余寒猶烈しくして、風寒に感じやすし。つつしみて風寒にあたるべからず。感冒咳嗽の患なからしむべし。草木の発生するも、余寒にいたみやすし。是を以て、人も余寒をおそるべし。時にしたがひ身を運動し、陽気を助けめぐらして発生せしむべし。
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『養生訓』巻第六・慎病一秋は夏の間肌開け、七八月は残暑も猶烈しければ、腠理いまだとぢず。表気いまだ堅からざるに、秋風すでにいたりぬれば、感じてやぶれやすし、慎んで風涼にあたり過すべからず。病ある人は、八月残暑退きて後、所々に灸して、風邪をふせぎ、陽を助けて、痰咳のうれひをまぬかるべし。
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『養生訓』巻第六・慎病一夏は発生の気いよいよさかんにして、汗もれ、人の肌膚大に開く故、外邪入りやすし。涼風に久しくあたるべからず、沐浴の後風に当るべからず。且夏は伏陰とて陰気かくれて腹中にある故、食物の消化する事おそし。多く飲食すべからず。温なる物を食ひて、脾胃をあたたむべし。冷水を飲むべからず。すべて生、冷の物を忌む。冷麺多く食ふべからず。虚人は尤泄瀉のうれひおそるべし。冷水に浴すべからず。暑甚しき時も、冷水を以て面目を洗へば眼を損ず、冷水にて手足洗ふべからず、睡中に扇にて人にあふがしむべからず、風にあたり臥すべからず、夜外に臥すべからず、夜外に久しく坐して、露気にあたるべからず、極暑の時も極めて涼しくすべからず、日に久しく曝せる熱物の上に坐すべからず。
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