養生訓 / 巻第二・総論下
一千金方曰、養生の道、久行、久坐、久臥、久視ることなかれ。一酒食の氣いまだ消化せざる内に、臥して睡れば、必ず酒食とゞこほり、氣ふさがりて病となる。いましむべし。晝は必ず臥すべからず。大に元氣を損ふ。もし大につかれたらば、うしろに恁りかゝりてねぶるべし。もし臥さば、かたはらに人をおきて少しねぶるべし。久しくねぶらば、人に呼びさまさしむべし。
新字:一千金方曰、養生の道、久行、久坐、久臥、久視ることなかれ。一酒食の気いまだ消化せざる内に、臥して睡れば、必ず酒食とゞこほり、気ふさがりて病となる。いましむべし。昼は必ず臥すべからず。大に元気を損ふ。もし大につかれたらば、うしろに恁りかゝりてねぶるべし。もし臥さば、かたはらに人をおきて少しねぶるべし。久しくねぶらば、人に呼びさまさしむべし。
書き下し
一千金方に曰く、養生の道、久しく行き、久しく坐し、久しく臥し、久しく視ることなかれ。一酒食の気いまだ消化せざる内に、臥して睡れば、必ず酒食とどこほり、気ふさがりて病となる。いましむべし。昼は必ず臥すべからず。大に元気を損ふ。もし大につかれたらば、うしろに恁りかかりてねぶるべし。もし臥さば、かたはらに人をおきて少しねぶるべし。久しくねぶらば、人に呼びさまさしむべし。
現代語訳
『千金方』に、養生の道として、長く歩き続けること、長く座ること、長く横になること、長く見つめることをしてはならない、とあります。酒食の気がまだ消化しないうちに横になって眠ると、必ず酒食が滞り、気がふさがって病気になります。戒めなさい。昼は決して横になってはいけません。大いに元気を損ないます。もしひどく疲れたら、後ろに寄りかかって眠りなさい。もし横になるなら、そばに人を置いて少しだけ眠りなさい。長く眠っていたら、人に呼び起こしてもらいなさい。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第二・総論下一日長き時も昼臥すべからず。日永き故、夜に入りて、人により、もし体力疲れて、早くねぶることをうれへば、晩食の後、身を労動し歩行し、日入の時より臥して体気をやすめてよし。臥しても、必ず睡るべからず、ねぶれば甚害あり。久しく臥すべからず、秉燭の比おきて坐すべし。かくのごとくすれば、夜間体に力ありて、ねぶり早く生ぜず。もし日入の時より臥さざるは尤よし。
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『養生訓』巻第二・総論下およそ人の身、慾をすくなくし、時々身をうごかし、手足をはたらかし歩行して、久しく一所に安坐せざれば、血気めぐりて滞らず。養生の要務なり。日々かくのごとくすべし。呂氏春秋に曰く、流水は腐らず、戸枢は螻まず、動けばなり、形気も亦然り。いふ意は、流水は腐らず、たまり水はくさる。から戸のぢくの下のくるるは虫くはず。此二のものは、つねに動く故わざはひなし。人の身も亦かくの如し。一所に久しく安坐してうごかざれば、飲食とどこほり、血気めぐらずして病を生ず。食後に臥すと、昼臥すと、尤禁ずべし。夜も飲食の消化せざる内に早く臥せば、気をふさぎ病を生ず。是養生の道において尤いむべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一凡養生の道は、内慾をこらふるを以て本とす。本をつとむれば、元気つよくして外邪おかさず。内慾を慎まずして、元気よわければ、外邪にやぶられ易くして、大病となりて命をたもたず。内慾をこらふるに、其の大なる条目は、飲食をよきほどにして過さず、脾胃をやぶり病を発する物をくらはず。色慾をつつしみて精気を惜み、時ならずして臥さず。久しく睡る事をいましめ、久しく安坐せず。時々身をうごかして、気をめぐらすべし。殊に食後には、必ず数百歩歩行すべし。若久しく安坐し、又食後に穏坐し、ひる寝ね、食気いまだ消化せざるに早く臥しねぶれば、滞りて病を生じ、久しきをつめば、元気発生せずしてよわくなる。常に元気をへらす事を惜みて、言語をすくなくし、七情をよきほどにし、七情の内にて、取わき、いかり、かなしみ、うれひ、思ひをすくなくすべし。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、つとむべき事をよくつとめて、身をうごかし、気をめぐらすをよしとす。つとむべき事をつとめずして、臥す事を好み、身をやすめおこたりて動かさざるは、甚養生に害あり。久しく安坐し、身を動さざれば、元気めぐらず、食気とどこほりて病おこる。殊に臥す事を好み、ねぶり多きを忌む。食後には必ず数百歩歩行して、気をめぐらし、食を消すべし。ねぶり臥すべからず。父母につかへて力をつくし、君につかへてまめやかにつとめ、朝は早くおき、夕はおそく寝ね、四民ともに我が家事をよくつとめておこたらず。士となれる人は、いとけなき時より、書をよみ、手を習ひ、礼楽をまなび、弓を射、馬にのり、武芸をならひて、身をうごかすべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一飲食は身を養ひ、ねぶり臥すは気を養ふ。しかれども、飲食節に過ぐれば脾胃をそこなふ。ねぶり臥す事時ならざれば元気をそこなふ。此二は、身を養はんとして、かへつて身をそこなふ。よく生を養ふ人は、つとに起きよはに寝ねて、昼いねず、常にわざをつとめて怠らず、ねぶり臥す事をすくなくして神気をいさぎよくし、飲食をすくなくして腹中を清虚にす。かくのごとくなれば、元気よくめぐり、ふさがらずして病生ぜず。発生の気其養を得て、血気おのづからさかんにして病なし。是寝食の二の節に当れるは、また養生の要なり。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、先心気を養ふべし。心を和かにし、気を平かにし、いかりと慾とをおさへ、うれひ思ひをすくなくし、心をくるしめず、気をそこなはず、是心気を養ふ要道なり。又臥す事を好むべからず。久しく睡り臥せば気滞りてめぐらず。飲食いまだ消化せざるに早く臥し睡れば、食気ふさがりて甚元気をそこなふ。いましむべし。酒は微酔に飲み、半酣をかぎりとすべし。食は半飽に食ひて、十分に満つべからず。酒食ともに限を定めて、節にこゆべからず。又わかき時より、色慾をつつしみ、精気を惜むべし。精気を多くつひやせば、下部の気よわくなり、元気の根本たえて、必ず命短し。もし飲食色慾の慎なくば、日々補薬を服し、朝夕食補をなすとも、益なかるべし。
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