帝範 / 審官第四
今人智有短長,能有巨細。或藴百而尚少,或綂一而為多。有輕才者,不可委以重任;有小力者,不可賴以成職。委任責成,不勞而化,此設官之當也。斯二者,治亂之源。
新字:今人智有短長,能有巨細。或藴百而尚少,或統一而為多。有軽才者,不可委以重任;有小力者,不可頼以成職。委任責成,不労而化,此設官之当也。斯二者,治乱之源。
書き下し
今(いま)人(ひと)の智(ち)に短長(たんちょう)有(あ)り、能(のう)に巨細(きょさい)有(あ)り。或(あるひ)は百(ひゃく)を藴(つつ)みて尚(な)ほ少(すく)なく、或(あるひ)は一(いつ)を綂(す)べて多(おほ)しと為(な)す。輕才(けいさい)有(あ)る者(もの)は、以(も)って重任(じゅうにん)を委(ゆだ)ぬ可(べ)からず、小力(しょうりき)有(あ)る者(もの)は、以(も)って職(しょく)を成(な)すを賴(たの)む可(べ)からず。任(にん)を委(ゆだ)ね成(せい)を責(せ)め、勞(ろう)せずして化(か)す。此(こ)れ官(かん)を設(まう)くるの當(あた)れるなり。斯(こ)の二者(にしゃ)は、治亂(ちらん)の源(みなもと)なり。
現代語訳
いまの人には智に長短があり、才能に大小がある。ある者は百を懐に包んでいてもなお足りないと言い、ある者は一つを統べただけで多いとする。軽い才しかない者に重い任務を委ねてはならず、小さな力しかない者に職務の完遂を頼ってはならない。任務を委ね、成果を求め、自分は苦労せずに事が成る。これが官職を設けることの正しいあり方である。この二つ、すなわち材に応じることと量に応じることが、治乱の源である。
解説
「任を委ね成を責め、勞せずして化す」——委任と責任を一組にした、簡潔な原則である。委ねるだけでも、細かく口を出すだけでもない。任せたうえで成果を問う。そして上が苦労しないことが正しさの証拠になっている。上が忙しいなら、委ね方か人選のどちらかが間違っているという診断でもある。前半の観察も鋭い。「或は百を藴みて尚ほ少なく、或は一を綂べて多しと為す」——百の力があってもまだ足りないと感じる人と、一つ任されただけで手一杯だと感じる人がいる。人の容量は、外から見た能力ではなく、本人の感じ方に現れるという指摘である。そのうえで「輕才有る者は、以って重任を委ぬ可からず」と結ばれる。前章が短所を活かせと説いたのに続けて、活かせない場面もあると釘を刺す。両方そろって初めて、審官篇は使える教えになる。
この章句が説くこと
委任責成労せずして化す軽才重任器量公正人選
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