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玉勝間 / 二の巻 ふみ読む事のたとへ

須賀ノ直見が云ひしは、廣く大きなる書を讀むは、長き旅路を行くが如し。おもしろからぬ所もおほかるを經行ては、又面白く目さむるここちする浦山にもいたるなり。又足つよき人は、早く、よわきは行く事おそきも、よく似たりとぞ云ひける。おかしき譬へなりかし。

新字:須賀ノ直見が云ひしは、広く大きなる書を読むは、長き旅路を行くが如し。おもしろからぬ所もおほかるを経行ては、又面白く目さむるここちする浦山にもいたるなり。又足つよき人は、早く、よわきは行く事おそきも、よく似たりとぞ云ひける。おかしき譬へなりかし。

書き下し

須賀の直見が云いしは、広く大きなる書を読むは、長き旅路を行くが如し。おもしろからぬ所もおおかるを経行きては、また面白く目さむるここちする浦山にもいたるなり。また足つよき人は、早く、よわきは行く事おそきも、よく似たりとぞ云いける。おかしき譬えなりかし。

現代語訳

須賀直見が言ったことには、広く大きな書物を読むのは、長い旅路を行くようなものだ。面白くない所も多いのを通り過ぎていくと、また面白く目の覚めるような浦や山にも行き着くのである。また足の強い人は早く、弱い人は行くのが遅いのも、よく似ている、と言った。面白い譬えである。

解説

大部の書物を読むことを長旅にたとえた、友人須賀直見の言葉を書き留めた短い一段である。須賀直見は松坂での宣長の学友であった。譬えの要点は、面白くない区間があることを前提にしているところにある。旅で退屈な道が続くのは当たり前で、そこを通り過ぎるからこそ目の覚めるような景色に出る。大きな書物も同じで、つまらない箇所を投げ出していては、その先の見どころに着かない。そして速さの違いにも触れる。足の強い人は早く、弱い人は遅い。だが遅くても着く。玉勝間には、低いところを固めてから高きに登れという師賀茂真淵の戒めを記した段もあり、宣長の学びは一貫して、飛ばさないこと・急がないことに置かれている。

この章句が説くこと

書を読むは長き旅路読書学問面白からぬ所を経行く足つよき人旅路

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