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酔古堂剣掃 / 集情・蜀紙麝煤筆の媚を添ふ

蜀紙麝煤添筆媚,越甌犀液發茶香,風飄亂㸃更籌轉,拍送繁絃曲破長。

新字:蜀紙麝煤添筆媚,越甌犀液発茶香,風飄乱点更籌転,拍送繁絃曲破長。

書き下し

蜀紙麝煤は筆の媚を添へ、越甌犀液は茶の香を發す、風は亂㸃を飄して更籌轉じ、拍は繁絃を送りて曲破長し。

現代語訳

蜀の紙と麝香入りの墨は筆の運びに艶を添え、越の青磁の茶碗と澄んだ湯は茶の香りを引き立てます。風が乱れ散る雨粒を吹き飛ばすうちに時を告げる籌が移り、拍子がにぎやかな弦の音を送り出して、曲の終わりの急調子が長く続きます。

解説

文人の夜の楽しみを、道具と音で描いた一則です。蜀紙は四川の上質な紙、麝煤は麝香を混ぜた香りのよい墨、越甌は越州で焼かれた青磁の茶碗です。犀液は澄んだ茶の湯の美称ととりました。更籌は夜の時刻を計る札で、それが移るとは夜が更けていくことです。曲破は唐の大曲の終盤の、テンポが速くなる部分をいいます。よい紙と墨で書き、よい器で茶を味わい、音楽に耳を傾けるうちに夜が更けていく。道具を選ぶ楽しみが、そのまま時間の豊かさになっています。自分の気に入った道具を手元に置くことは、日々の仕事を楽しくする小さな工夫でもあります。

この章句が説くこと

風雅文房音楽閑適

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