酔古堂剣掃 / 集醒・一棺身を戢むれば萬事都て已む
一杯酒留萬世名,不如生前一杯酒,身行樂耳,遑恤其他?百年人做千年調,至今誰是百年人?一棺戢身,萬事都已。
新字:一杯酒留万世名,不如生前一杯酒,身行楽耳,遑恤其他?百年人做千年調,至今誰是百年人?一棺戢身,万事都已。
書き下し
一杯の酒、萬世の名を留むるは、生前一杯の酒に如かず、身は樂を行ふのみ、遑に其の他を恤へんや。 百年の人千年の調を做す、今に至るまで誰か是れ百年の人ぞ。 一棺身を戢むれば、萬事都て已む。
現代語訳
万世に名を留めることなど、生きているうちの一杯の酒には及びません。わが身は楽しむばかりのこと、ほかのことを気にかける暇などありましょうか。百年も生きられない人間が千年先の算段をしますが、今までに百年生きた人など誰がいるでしょうか。一つの棺に身を収めてしまえば、あらゆることはすべて終わりです。
解説
死後の名声より今の一杯を、という人生観を述べた一則です。晋の張翰が、死後の名声など今すぐの一杯の酒に及ばないと言った話が『世説新語』に見え、この句はそれを踏まえています。遑恤其他は、ほかのことを気にかける暇などないという意味です。百年の人が千年の調べを作るとは、短い命しかないのに遠い先のことにあくせくすることを皮肉った言い回しです。戢は収めることで、一棺戢身は死んで棺に納まることを言います。享楽のすすめと読むと軽く見えますが、先の心配や名声のために今を犠牲にしすぎる生き方への警告でもあります。将来への備えは大切ですが、今日という日を味わうことも忘れないようにしたいものです。
この章句が説くこと
生死名声今達観享楽
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