酔古堂剣掃 / 集醒・虛舟を以て震撼す
風波肆險,以虛舟震撼,浪靜風恬;矛盾相殘,以柔指解分,兵銷戈倒。
新字:風波肆険,以虚舟震撼,浪静風恬;矛盾相残,以柔指解分,兵銷戈倒。
書き下し
風波險を肆にするも、虛舟を以て震撼すれば、浪靜かに風恬かなり。 矛盾相殘ふも、柔指を以て解分すれば、兵銷え戈倒る。
現代語訳
風や波が荒れ狂っても、空っぽの舟で揺られていれば、やがて波は静まり風も穏やかになります。矛と盾が互いに傷つけ合っていても、柔らかな指先でほぐし分ければ、武器は消え、戈(ほこ)は倒れます。
解説
争いの中で柔らかくあることの力を説いた一則です。虚舟は『荘子』山木篇の話によるもので、人の乗っていない舟がぶつかってきても、どれほど短気な人も腹を立てないと言います。自分を空にして我を張らなければ、荒れた場にいても相手の怒りを招きません。後半の矛盾は、ぶつかり合う双方の主張や力のたとえです。柔指はしなやかな指先で、力ずくではなく丁寧に解きほぐす手つきを表します。対立の場で正面から押し返せば争いは大きくなるばかりですが、私心を捨てて柔らかく間に入れば、思いのほか早く収まることがあります。
この章句が説くこと
処世柔無心和解争い
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