酔古堂剣掃 / 集醒・世を欺くの豪傑と為る無かれ
才人經世,能人取世,曉人逢世,名人垂世,高人出世,達人玩世。寧為隨世之庸愚,無為欺世之豪傑。
新字:才人経世,能人取世,暁人逢世,名人垂世,高人出世,達人玩世。寧為随世之庸愚,無為欺世之豪傑。
書き下し
才人は世を經め、能人は世を取り、曉人は世に逢ひ、名人は世に垂れ、高人は世を出で、達人は世を玩ぶ。寧ろ世に隨ふの庸愚と為るも、世を欺くの豪傑と為る無かれ。
現代語訳
才ある人は世を治め、能力のある人は世を手に入れ、物事に通じた人は世にうまく合わせ、名のある人は世に名を残し、高潔な人は世を離れ、達観した人は世をもてあそびます。いっそ世の流れに従う平凡な愚か者になるほうがよく、世を欺く豪傑になってはいけません。
解説
世との関わり方で人を六種類に分け、最後に何よりも避けるべき生き方を示した一則です。経世、取世、逢世、垂世、出世、玩世と、世という字を軸に六つの動詞を並べた構成が見事です。どの生き方にもそれぞれの価値がありますが、結論はそのいずれでもなく、世を欺く豪傑になるなということです。才能や力があっても、人を欺いてのし上がるなら、平凡な人として世に従うほうがずっとましだというのです。ここでいう庸愚は、へりくだった言い方で、誠実な凡人を指していると読めます。大きな成功を求めるあまり、嘘やごまかしに手を染めてしまう危うさは、いつの時代にもあります。誠実であることの重みを改めて感じさせる言葉です。
この章句が説くこと
誠実処世人物欺瞞立志
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