酔古堂剣掃 / 集醒・切に再び一滴を加ふるを忌む
居盈滿者,如水之將溢未溢,切忌再加一滴;處危急者,如木之將折未折,切忌再加一搦。
新字:居盈満者,如水之将溢未溢,切忌再加一滴;処危急者,如木之将折未折,切忌再加一搦。
書き下し
盈滿に居る者は、水の將に溢れんとして未だ溢れざるが如し、切に再び一滴を加ふるを忌む。危急に處る者は、木の將に折れんとして未だ折れざるが如し、切に再び一搦を加ふるを忌む。
現代語訳
満ち足りた境遇にいる人は、水が今にもあふれそうでまだあふれていない状態のようなものです。決してもう一滴を加えてはいけません。危急の境遇にいる人は、木が今にも折れそうでまだ折れていない状態のようなものです。決してもう一押しの力を加えてはいけません。
解説
満ち足りた状態と危うい状態、どちらも限界の一歩手前にあることを、水と木のたとえで示した対句です。菜根譚にもほぼ同じ句があります。盈満は満ちあふれることで、富や地位が頂点にあることを指します。そこにさらに欲を加えれば、一滴で水があふれるように崩れてしまいます。危急の人は、折れかけた木のようなもので、わずかな圧力でも決定的な打撃になります。自分が盈満にあるときは、もう少しと欲張らないこと、人が危急にあるときは、追い打ちをかけないことが大切です。業績が好調なときの拡大しすぎや、弱っている同僚への厳しすぎる言葉に、思い当たる節はないでしょうか。
この章句が説くこと
中庸節度謙虚処世盛衰
関連する章句
-
『酔古堂剣掃』集醒・儉も過ぐれば慳吝と為る儉は美德なり、過ぐれば則ち慳吝と為り、鄙嗇と為り、反つて雅道を傷る。讓は懿行なり、過ぐれば則ち足恭と為り、曲謹と為り、多く機心より出づ。
-
『酔古堂剣掃』集法・能事は盡く畢ふるに宜しからず爵位は太だ盛んなるに宜しからず、太だ盛んなれば則ち危ふし。能事は盡く畢ふるに宜しからず、盡く畢ふれば則ち衰ふ。
-
『酔古堂剣掃』集峭・縟なれば則ち太だ過ぐ奇曲雅樂は、淫を禁ずる所以なり、錦繡黼黻は、暴を禦ぐ所以なり。縟なれば則ち太だ過ぐ、是を以て檀卿は鄭聲を刺り、周人は北里を傷む。
-
『酔古堂剣掃』集法・不盡の意を留む凡そ事は不盡の意を留むれば則ち機圓かに、凡そ物は不盡の意を留むれば則ち用裕かに、凡そ情は不盡の意を留むれば則ち味深く、凡そ言は不盡の意を留むれば則ち致遠く、凡そ興は不盡の意を留むれば則ち趣多く、凡そ才は不盡の意を留むれば則ち神滿つ。
-
『酔古堂剣掃』集法・福は享け盡くすべからず勢ひは倚り盡くすべからず、言は道ひ盡くすべからず、福は享け盡くすべからず、事は處し盡くすべからず、意味偏へに長し。
-
『酔古堂剣掃』集韻・濃ならず淡ならず松聲竹韻、濃ならず淡ならず。