修証義 / 第四章 発願利生
同事といふは不違なり。自にも不違なり。佗にも不違なり。譬へば人間の如來は、人間に同ぜるが如し。佗をして自に同ぜしめて後に。自をして佗に同ぜしむる道理あるべし。自佗は時に隨ふて無窮なり。海の水を辭せざるは同事なり。是故に能く水聚りて海となるなり。
新字:同事といふは不違なり。自にも不違なり。佗にも不違なり。譬へば人間の如来は、人間に同ぜるが如し。佗をして自に同ぜしめて後に。自をして佗に同ぜしむる道理あるべし。自佗は時に随ふて無窮なり。海の水を辞せざるは同事なり。是故に能く水聚りて海となるなり。
書き下し
同事といふは不違なり。自にも不違なり。佗にも不違なり。譬へば人間の如来は、人間に同ぜるが如し。佗をして自に同ぜしめて後に。自をして佗に同ぜしむる道理あるべし。自佗は時に随ふて無窮なり。海の水を辞せざるは同事なり。是故に能く水聚りて海となるなり。
現代語訳
同事とは、違わないことである。自分にも違わず、他者にも違わない。たとえば、人間の世界に現れた如来が、人間と同じ姿になったようなものである。他者を自分に同じくさせた後に、自分を他者に同じくさせる道理がある。自分と他者との関わりは、時に応じて限りがない。海が水を拒まないのは同事である。だからこそ、水が集まって海となるのである。
解説
四摂法の四つ目、同事は、相手と同じ立場に立つことである。仏が人を導くために人の姿で現れたように、相手の側に身を置く。結びの比喩が見事だ。海はどんな川の水も拒まない。だから大きな海になる。選り好みせずに受け入れる器の大きさが、人を集め、大きな力をつくる。現場に降りて同じ目線で働く上司、異なる考えを排除せず取り込む組織。そうした姿が、この短い比喩に凝縮されている。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
同事四摂法共感受容器組織
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『晏子春秋』諫上・景公衣狐白裘不知天寒晏子諫景公の時、雨雪三日にして霽れず。公、狐白の裘を被て、堂の側の陛に坐す。晏子入り見え、立つこと間有り。公曰く、「怪しきかな。雨雪三日にして天寒からず」と。晏子対えて曰く、「天、寒からざるか」と。公笑う。晏子曰く、「嬰聞く、古の賢君は、飽きて人の飢えを知り、温かにして人の寒きを知り、逸にして人の労を知る、と。今、君は知らざるなり」と。公曰く、「善し。寡人、命を聞けり」と。乃ち裘を出し粟を発し、飢寒に与えしむ。塗に睹る所の者は其の郷を問う無く、裡に睹る所の者は其の家を問う無く、国を循りて数を計り、其の名を言う無からしむ。士の既に事える者には兼月、疾む者には兼歳。孔子之を聞きて曰く、「晏子は能く其の欲する所を明らかにし、景公は能く其の善しとする所を行う」と。
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